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樫の木庵のマボ-マボはどこに…!? 5

「でも、オジャム、ドーナッツはたっぷりあるわね。一つぐらい味見しても、大丈夫だと思うわ。それに、せっかくの作りたてなんだから、食べないなんてもったいないわよ!」
「いいえ、お嬢様。これは奥様が決めたことなんですから、どうしたって食べるのは明日です。シュールレ家の者は、つまみ食いなんてはしたないことは、決してしない決まりなんですから」

モモはがっかりして、地面にある石ころを蹴飛ばしました。
ですが、モモはすぐに良いアイデアを思い付いたのです。

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「ねえ、オジャム。実は私ね、昨日の夜に大変なことに気がづいたの」
「どうしましたか、お嬢様!?」
「食事の食べ残しは処分するのが決まりでしょ。でもね、冷蔵庫の奥の奥、
誰も気づかないところに、たっぱに入った食べ残しが隠してあったの」
「お嬢様、冷蔵庫を勝手に開けるなんて、はしたないことですよ!」

オジャムはサッと顔色を変えました。体は横に大きいオジャムですが、気は人一倍小さかったのです。

「わかっているわ、でもね、いったいその中身を誰がどうして、冷蔵庫の中に隠しているのか…私は不思議に思っているのよ」

実はこのタッパはオジャムのもので、みんなの目を盗んでは、こっそりつまみ食いしていたのです。
気の弱いオジャムは、目を泳がせ、顔を青くしています。

「もし、これがシュールレ奥さんに知られてしまったら、大変なことになると思うの。ねえ、そうでしょ、オジャム?」
「そ、そうですね、お嬢様…」

オジャムはうつむいて、しょんぼりしました。

「でもね、私は悪いとは思っていないの。だって、食べ物を捨ててしまう方が、よほどもったいないもの!?ねえ、そうでしょ。奥様が言う事が全部正しいわけではないと思うの。だから、私はこれからも内緒にしておくつもりよ」
「お、お嬢様!?」

オジャムは助かったとばかりに、ほっと白い息を吐きました。それから、「くれぐれも奥様には…」と言ってオジャムは箱の中に手を伸ばすと、白い砂糖がまぶしてあるドーナッツ一つ取り出して、モモに手渡しました。
作り立てなので、ほかほかと湯気を立てています。

「もちろん内緒よ!」

してやったりのモモ。にっこり笑うと口を開けてドーナッツを食べようとしました。すると、その時でした。

つづく…来週末をお楽しみに!

樫の木庵のマボ第一巻(全26話)・最終話を更新中※手書きイラスト付セットも販売しています。

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遥ナル
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