シャローンの初陣7-サイレント ネオ-ムーン ソング
ミトの護衛隊10機は本隊と別れて、森林から西門に向う。護衛隊の先導はデニ・オム率いる斥候隊が担った。
一方、シャローンが乗る黄金のエクスぺリオンが率いる10機程度のCAは後詰となった。それに先立ち、シャルル率いるコンクスト党が先鋒として進軍していく。
それから10キロ進んだところで、アガシ率いる西門軍と出遭い、ついに戦が始まった。
見渡す限り平地である。
隠れるところなく、両陣営、盾を持った重装守備型のシェルが前面に押し出される。
そのシェルに隠れて、CAたちが射撃で相手を攻撃し合う射撃戦となった。
倍以上の火力を受けるコンクエスト党はすぐに劣勢に陥ってしまう。
アガシは高笑いしながら、
「何が鳳凰の雛よ! 小手先で森にも兵士を出陣させ、我が軍の動揺を誘ったつもりであろうが…
このアガシには通用せんわ! それにしても、何だこのでたらめな戦術は…鳳凰の雛は、鳳凰のヒヨコにすぎんわ!」
アガシが叫ぶと、西門軍の兵士が声を挙げて笑う。
余裕がある西門軍に比べ、最前線のコンクエスト党は防戦一方である。
率いるシャルルがいくら指揮がうまいといっても、この地形と多勢に無勢ではなす術がない。
シャルルにとってはとんだ初陣であった。
「みんな、がんばれ! 引いてはコンクエスト党の名折れだ。がんばるんだ!」
シャルルはそういって兵を励ますが、敵の銃弾は2倍以上である。
その圧力におされ、じりじりと下がっていく。
『まずい、このままでは潰走するのももうすぐだ…』
シャルルが困っていると、後詰にいた10機の機体が黄金のエクスぺリオンに率いられて現れた。
そして、無防備にも敵陣に突入していく。
「シャローン様、いったい何を考えているんです! 無謀です!」
シャルルが止めるのも聞こえていないのか、シャローンの乗る黄金の機体からは返事がない。
ただ、ただ相手に突進していってしまった。
これには敵であるアガシも驚き呆れた。
「シュミット殿はまるで戦神かのごどくシャローンを恐れていたが…ただ、命知らずの小娘でないか!?」
功名心にかられたアガシは射撃をやめさせ、格闘戦で自らシャローンを討ち取ろうと突撃してきた。
それから、アガシの乗るパンツァー・指揮官型とシャローンのエクスぺリオンが数回剣をまじえた。
すると、エクスぺリオンらは踵を返し、早々に逃げていくではないか…
アガシは侮蔑の笑い声をあげると、
「みなのもの、あれが鳳凰の雛の正体よ! 戦に出ては最後に現れ、剣を交えれば真っ先に逃げ出す。これで我が軍の勝利は間違いなし、キングダムの先も見えたわ!」
と言って、全軍に追撃を命じる。
逃げるエクスぺリオンを姿に、何とか持ちこたえていたコンクエスト党にも動揺が走り潰走を始めた。
「引くな、戦え、戦え!」
シャルルの声もむなしく、キングダム勢は間もなく総崩れとなった。
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