テディ・Dと親友フローニ12-サイレント・ネオ外伝-
「そうね…私たちはきっと研究所を出て、自由な小鳥のようになれるわよね。
私はさえずり歌うわ、きっと、きっと。朝も昼も夜も自由にね…そういう日がいつかきっと来るって、子供の時から思ってたの。でも、父親はお酒ばかり飲んで、何が気に入らないのか、ささいなことで私に暴力をふるったわ。私はいつも家から出て自由に歌いたいって思ってたの…でも、家からやっと抜け出せたと思ったら、今度はこんなところ…」
フローニは悲しそうに天井を見つめた。
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「フローニ、大丈夫よ、ここから抜け出せたら、今度こそきっと、きっと…あなたは自由になれるわ。そして、ずっと好きな歌を歌っていられるはずよ」
テディ・Dはもうずいぶん涙を流したことはなかったから、泣き方さえ忘れていた。しかし、今は違う。自然に熱いものが目から流れ落ち、頬につたっていた。
「ありがとう、テディ・D…きっと私は抜け出して見せるわ。私はフローニ・アルテミウスだもの…」
フローニは今出せるすべての力を籠めて、テディ・Dの手を握り返した。それはとても弱々しかったが、確かにフローニの心がこもっていた。
テディ・Dはそして気付いた。なぜ、フローニが”フローニ・アルテミウス”という名前にこれほどこだわるかを。父親におびえながら、時に卑屈になり暮らさざるを得なかったフローニ。フローニは将来の素敵な自分、歌姫”フローニ・アルテミウス”をいつも思い描き、夢を抱いていたのだ!
彼女は暗い家でまるでかごに閉じ込められた小鳥のような時でさえも、”フローニ・アルテミウス”が歌っている姿を想像していた。彼女はそんな将来の自分のことを思い、誇りを抱いたのである。
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