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テディ・Dと親友フローニ2-サイレント・ネオ外伝-
全編はこちら※一部シリアス、ショッキングな内容も含まれます。
その姿はいつも諦観し、冷めた態度でいるテディ・Dをとは真逆だった。ゴスロリのかっこうをして、何を考えているかわからないテディ・Dを研究所の子供たちは気味悪がり、遠ざけていた。テディ・Dは重い過去を背負っており、心を閉ざす少女であったから、他の子どもたちとの溝は日に日に広がっていた。
孤独に慣れていたテディ・Dは全く意に介さなかったが、しばしば子供たちは彼女のことを陰で悪く言った。時に本人が通るそばで悪口を言うこともあったが、テディ・Dがにらむと、
「まずい、早く逃げなくちゃ、98番にらまれたら、私たちも殺されちゃうわ」
と過去の傷をほりくりかえし、からかうように逃げていくこともあった。すると、テディ・Dは表情にこそ出さないが、頭の中がせわしなくざわめくのだった。
そんなテディ・Dはフローニと会った日のことをはっきりと覚えている。
テディ・Dは2階の手すり越しに、1階に集まっている子供たちの様子を見ていた。研究所の1階は4台ものカメラが監視する厳重なゲートで閉ざされており、大きな一続きの部屋になっていた。研究所は塔のように円錐型をしており、2階から上は吹き抜けになっている。新入りが入ってくると、各階のどこかに個室を持っている子供たちは部屋から飛び出して、その様子を眺めるのが恒例となっていた。
フローニの左腕には123番という数字が刻まれていた。
研究所の職員であるエルザ女史がフローニに「123番、こっちに来るように」とだけ言った。
その言葉はまるで無機質で、ロボットが話したらこんな口ぶりだろうというもので、本当に自分にきてほしいと思っているのだろうか、と疑わせるような話し方だった。
研究所の人間たちはほとんどが、子供を人間とはみなしていない。彼女たちから見ればそれは実験体でしかなく、感情を投入して語りかけるものではなかったのだ。
フローニの目には明らかに反抗の炎がめらめらと燃え上がっていた。エルザはそんなフローニと目を合わせることはせず、手にしている名簿に視線を落とすばかりだ。彼女は教育係の1人で、いわば研究所では世話係のような役割を担当していた。
しかし、エルザのメガネの奥の目は死んだ魚のように眠たげでぼんやりしている。小太りのエルザの寸法には明らかに小さいであろう白衣を着ており、ぱつんぱつんでお腹の前で止められているボタンは今にもはじきとびそうだ。エルザからは教師が子供を熱心に導きたいというような情熱は感じられなかった。まるでその日の仕事をたんたんと終え、給料をもらえさえばすれればいいと言う態度でしなかい。
「123番、こっちに来るように…」
同じようにエルザから無機質な言葉が繰り返される。
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