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プロローグ2-1(ムサシ、月歌へ)-サイレント・ネオ-boy meets girl-

企画/ムサシ×ボイスアクター/プロローグ2に登場した、ムサシの3つのセリフ(黒文字)を実際に声に出してもらっています!

ニューデリーは初夏となり、暑い日差しがじりじりと肌を差す。
日に焼けた半そで姿の人々の往来が目立ち、夏の到来を告げていた。
ネオ東京に居を構えているムサシだが、旧インド地区にやってきていた。
すでに、地球(テラ)では国という単位は喪失し、世界政府がすべてを決める時代に移り変わっている。

ムサシがニューデリーに来たのは他でもない、彼が属する革新派”エレファンツ”の総裁ムウ・メウに直接会って伝えたいことがあったからである。
ニューデリー空港に到着したムサシはどこにもよらずに、まっすぐエレファンツの本拠地をたずねていた。
実に一年ぶりである。
ムサシはすぐにムウ・メウのいる執務室に通された。

ムウ・メイは女性ながらやり手と言われ、革新派を率いている32才の若き党首である。
淡い紫色の髪と目をしているため、一度会えば忘れない容姿をしていた。
冷静沈着、頭脳明晰と評価もうなぎのぼりの軍人政治家である。

ムウ・メイは机に置かれた山積みの書類に目を通し、いちいちサインをしていた。
しかし、ムサシが到着すると手を留めて、笑顔で迎え入れる。
ムサシは一時的に公に姿を見せず、人前から姿を消していたため、一年ぶりの再会である。
不在の理由は表向きは戦争による負傷の治療のためとされていた。

「ムサシ、よく来てくれた…どうだ調子は…元気そうだな」
そういわれたムサシだったが仏頂面を崩さない。
しかし、ムウ・メウは一目見て、精悍さが増していると感じていた。
「私も君に会いたい用があったから丁度いい…さあ、早く座ってゆっくり話そう」
座るようにうながされるムサシだったが、しかめっ面を崩さず、あいさつもせずに机をはさんでムウ・メウの前に立っていた。
「ずいぶん前だが連邦宇宙評議委員会が、君をスーパーエースに認定したのは知っているだろう。認定証も届いているぞ。君に早く渡したかったんだ!」
ホルダーに入った認定書を手渡されたムサシは、片手で無造作に受け取った。そして、それを一瞥すると、すぐに机に放り投げた。
「どうした、ムサシ、地球の現役パイロットでは3人目の快挙だぞ、それなのに、うれしくなさそうだな…
我が党からスーパーエースが誕生したと、この本部ではお祭り騒ぎだったんだぞ」
「そうかい…」
ムサシはやっと口を開いた。それも一言だけ…。
「理由はわかっていると思うが第5次地球・コロニー戦争において、著しい活躍があったのを認められたそうだ」

ムウ・メウが言うように、ムサシは一年前に終止符がうたれた戦争に参加していた。
CAリーグで飛ぶ鳥を落とす勢いのムサシだったが、実戦においてもその実力を証明してみせたのだ。
ムサシはこの戦争において実に100機以上を墜としたとされ、「一騎当千」「天下無双」とまで言われるパイロットとしてもてはやされた。
環境も経済も激変し、ゲストハウスの大部屋暮らしからも卒業したムサシだったが、世間の喧騒ぶりにはすっかり嫌気がさしていた。
まるで芸能人のように有名になり、新聞や雑誌の記者に追い掛け回されることもしばしばだった。
加えて、ムサシは自分が何のために戦ったのか、問いかけるたびに気持ちがざわめくのを抑えることができなかったのだ。
敗戦したコロニー連合側は、巨大コロニーである第4コロニーが地球に併合され、植民地化されていた。

「この勝利は地球にとってもあまりに大きかった。第4コロニーは今では地球にとって、大事な宇宙における拠点となっている。
君はその勝利の立役者だ。コロニー連合の兵士は、君とサイレント・ネオのことを白い死神と呼ぶようになったそうだ」
「そうか…」
ムサシは素っ気ない態度を貫いている。
一年ぶりに会ったというのに、党首であるムウ・メウに愛想の一つも言わないのだ。
ムサシの真意をはかりかねているムウ・メウだが、
「もっと喜びたまえ。軍の上層部も君の活躍を認め、兵長から少尉に5階級特進が決まって、勲章もすでに私が受け取っている」
ムウ・メウはそういって、金色や鋼色、銅色に輝く5つの勲章を机の引き出しから取り出した。
ムサシはやはりそれを無造作に受け取ると、しげしげと眺めた。
それから、小銭でももてあそぶように片手で上に放り投げたり、とったりを繰り返した。
「なあ、ムウ・メウさんよ、この勲章やその紙っきれの代わりにいったい、どれくらいの人間が死んだんだろうな…!?」
つづく…

企画/ムサシ×ボイスアクター/プロローグ2に登場した、ムサシの3つのセリフ(黒文字)を実際に声に出してもらっています!

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