第十章:小人村は大騒ぎ!?9 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)
長老の一言で歓迎会は終わりました。マボはほっと溜息をつきましたが、まだ続きがありました。長老を始め、小人たち300人がマボの前に座ったかと思うと、みんながみんな平伏したではありませんか。まだ平伏の意味を知らない赤ちゃん小人たちだけが、不思議そうにきゃっきゃっと笑いながら、周りを見ています。もうこうなると、マボはお地蔵さまのように固まるよりほかありません。
「マボ様、実を申し上げれば…」
長老はやっと本題を話し始めました。長老によると話はこうでした。
樫の木庵のマボ(第1巻 全話完結)|遥ナル (note.com)
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数年前から小人の村に目をつける邪悪な存在がありました。それはトロルという凶暴で知られている巨人だったのです。そのトロルの兄弟がこの村をどうにかして知り、毎月、満月の日に子どもを1人、連れてくるよう命令したのでした。この命令をやぶったら、村をめちゃくちゃに壊すと脅すことも忘れませんでした。小人戦士14人のうち半分の7人がトロル兄弟に挑みましたが、誰一人、帰ってくることはなかったのです。
小人の村では泣く泣く、毎月1人の子供をトロルに捧げるほかなくなりました。
そして、今月、トロルの待つ森の住処につれていかれるのは、ミィに決まったのでした。
その満月の夜が明日に迫っていたのです。しかし、何とかミィを救おうとチャッピたちが立ち上がり、マボを見つけてきたというわけです。
「マボ様、こういった次第でございます。どうか、どうか、わが村とかわいいミィを救うため、是非ともお力をお貸しください!」
長老は平伏したまま言いました。
「僕からもお願いします、ミィちゃんを助けてください」
「お願いします!」
「お願いします!」
とチャッピ、デカ、チビも言いました。ミィを見ると、目には涙がたまっています。
樫の木庵のマボ(第1巻 全話完結)|遥ナル (note.com)
マボ:5歳の男の子。臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。
ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。
キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。