幻の休日-カフタス銀の夜事件2-ジャック・ソック覚書-サイレント ネオ-異聞-
これは北閥の拠点、ノーザンライトシティの南東にあるカフタスと呼ばれる小型都市で行われた重要な会議で起きた事件だった。
カフタスは小型都市で中立をうたう弱小都市でもある。
弱小都市と呼ばれるゆえんは、平地に囲まれ四方から敵に攻められるため、守備が難しい点にあった。
北閥のいきがかかった都市とも呼ばれ、エビル閣下がその地に赴くのを軍師であるカペッロマンJrを始め、何人もの重臣が反対していたという。
そのため、キングダムを支える優秀な家臣たち10数名がエビル様の護衛として、共におもむくことになったのだ。
しかし、まさかこのようなことが起きて、それが仇となるとは!?
何でも被害はムーンキングダム側にとどまらず、会議に出席していた北閥の外務大臣であるルガ・フィヨルドも爆発により死亡したという。
この人物はフィヨルドⅢ世の実の兄に当たる。
つまり、双方の重要人物に被害が出たのである。
私は茫然自失となり、ソファーにぐったりと腰かけた。
その間もニュースは続き、死亡した人物の名前が読み上げられた。
エビル・メルセデウス17世(大都督)
エドガー・メルセデウス(将軍)
カーン・ギンナー(CA隊長)
フォン・マリア(将軍)
オミ・フォングベルグ(親衛隊長)
ハム・エルダーマン(将軍)
…これらの人物はムーンキングダムの中枢いた重要人物たちである。
エドガー将軍は次の提督になることが決まっていたエビル提督の養子だった。
その他、メルセデウス家3友と言われるギンナー家、マリア家の当主も暗殺された。
ムーンキングダムは一夜にして主力の多くを、さらには大都督を失ってしまったのである。
私はとど子が入れてくれるでがらしのお茶を飲みながら、全く冷静になれなかった。
「えらいことが起きたわねえ! あんたの給料は大丈夫でしょうね!?」
とど子は物事の大きさを全く理解していなかった。
私は思わず、
「私の給料のことなんてどうでもいい、これはキングダム存亡の危機だ!」
と声を荒げて、テーブルを拳ではたいた。
とど子は「ふん」と鼻をならしながら、「私はあんたの給料の方がよっぽど大事よ。今月の家賃だって私が大家さんに頼んで、1週間も待ってもらったの知ってるでしょ。だいたい、あんたの給料では、夢のマイホームなんて夢のまた夢ね…」
などと、とど子のお小言が始まる始末。
私は慌てて退散し、家の外に夜風に当たりに出た。