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第十一章:マボとトロル兄弟!?2 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

そうこうするうちに、お輿もいよいよトロル兄弟の住処に近づいてきたのでしょう。あんなに楽しそうに話していた小人たちは、すっかり黙り込んでしまいました。

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それからいくばくがたつと、お輿は迷い森をぬけ、赤茶色の地面とごつごつとした灰色ではだかの岩山がつらなる大変開けた場所に出たのでした。見渡す限り草ひとつはえておらず、太古の岩々が塔のように天高くそびえ立っているので、荒野という表現がぴったりの場所でした。風が強く吹いており、空にあるいわし雲がすごいスピードで流されていきます。岩山にもその風が吹き込み、ひゅうひゅうと不気味で嘆きのような音を共鳴させています。青い空には鷹が飛び回り、時折、おそろしい声で鳴きました。すると、お輿がストンと地面に落ちて、動かなくなりました。小人たちはあるものを見て、一目散に逃げ出したのです。

途端にあたりがしんと静まり返り、聞こえるのは泣き声のような風の音だけになりました。しかし、すぐにドスン、ドスンと轟音を響かせ、何者かが近づいてくる足音がしました。足音が鳴るたびに地面がぐらぐらと揺れ、そこかしこにある岩山の石がごろごろ転がり落ちる音がするので、マボの心臓はすっかり高鳴りました。そして、おそるおそるお輿の隙間から外を見たのでした。

樫の木庵のマボ(第1巻 全話完結)|遥ナル (note.com)

マボ:5歳の男の子。臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。

ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。

キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。

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