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プロローグ3-13(ソック、置き去りにされる!)-サイレント・ネオ-boy meets girl-

コクボはごじんまりとしたところで、街の中心に宿や雑貨屋、個人経営の飲食店がぽつぽつあるだけでさびれていた。
近年は各地で戦争も増え、月歌中央からララに観光する人もめっきり減ったせいであろう。

ナウマンはわざと中心から少し離れた宿の横に車を止めて、お金を渡してソックに買い物に行かせた。
ずいぶん口をきいてくれていないリサと話し合うためである。

「ナウマンくん、私はもう我慢できません! 帰るわ!」

リサは開口一番こう言った。その口調は完全に本気である。

「リサ、ちょっと落ち着いてよ、せっかくの旅行の機会なんだから…」
「そうよ、私だってずっと、ずっと前から楽しみにしていたのよ。
それなのに、なんであのわけもわからない変なおじさんがついてくるわけ!?」
「変なおじさんじゃなくて、僕の上司だよ…」
「上司だか何か知らないけれど、急に現れて車に乗って…すぐ帰ると思ったら、ララまでついてくるそうよ! 下手したら宿までついてくるわよ!」
「そ、そんなことないと思うよ…もうすぐ、帰ってくれるって、ね、だから、リサ、少しはソックさんとも会話しておくれよ」
「会話も何も…何で私たちにつきまとうわけ、ナウマンくん、弱みでも握られてるの!?」
「それはないよ…家が近いからお世話になってるのは確かだけど…僕だって理由がよくわかならいんだ。
さっきから、クーラーの効いた車で飲むコーヒーは最高、しか言ってないんだもん…」
「本当にそうよね。涼しい所でコーヒーを飲みたいなら、家で飲めばいいだけの話じゃない!
それに、あのおじさん、私の足をやらしい目で見てくるのよ…やっぱり、私はもう我慢できないわ。帰ります!」

とせっかくプロポーズまでしようとしていたナウマンだったが、別れることにさえなりかねない事態に陥っていた。
斥候隊随一のパイロットと言われるナウマンは、軟弱なように見えて、こうと決めると決断は早い。
ソックとリサ、どちらかを選ぶとしたら、答えは決まっていたのである。

「リ、リサ、わかったよ。こうなったら仕方ない。
ソック副隊長には申し訳ないけど、ここに置いていくしかないな…」

ナウマンは決断すると顔を見合わせてうなずき、リサと共にそそくさと車に乗り込んだ。
さらに、エンジンをかけ、2人だけで街を出発してしまったのである。

つづく…(プロローグ3は次回が最終、ソックの末路は!?)

プロローグ:3-1 3-2 3-3 3-4 3-5 3-6 3-7 
3-8 3-9 3-10 3-11 

3-12 3-14

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遥ナル
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