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限りない愛をキミへ

 まるで少女の頃のような、熱いときめきだった。キミが私を好きになるはずがないことは分かっていたけれど、キミの存在を知ったその時から、キミを好きになるしかなかった。出会う前からキミに恋をしていた。

 初めて手を繋いだ日、キミは覚えているかな?雪は降っていなかったけれど、夜の冬の道はとても寒かった。私は丁度キミに会いに行く途中で、早足で歩いていたら目の前に急にキミの背中が現れたから驚いた。勇気を出して声をかけたら、キミは私を見てにっこり笑ってから、ごく自然に私の手をとった。キミは素手だったのに私は手袋をしていて、せっかく手を繋ぐなら布越しじゃなくて、直接キミの手に触れたかったなと思いながら、キミに引っ張られるように道を歩いた。意識していないように見えるのに、ちゃんと車道側を歩いてくれるところも、酔っ払いのおじさんから庇うように少し手を引いてキミの陰に隠してくれるところも、かっこいいなと思った。

初めてハグした日、キミは覚えているかな?私は照れて真っ赤になって、ほっぺたが熱いのが自分でも分かった。キミは楽しそうに、椅子に座る私を後ろから覆うように抱きしめて、私は嬉しくてたまらなかったけれど、ずっとにやけた顔を手で隠して、平気なふりをしていた。でもきっとキミにはばればれだったと思う。後で友達が送ってくれた写真に写ったキミは、思いの他私に柔らかな視線をくれていた。ずっとキミの腕の中に居たかった。良い匂いのするキミのセーターに包まれているのが好きで、帰ってからも私の服からキミの香りがすると、そのまま保存しておきたくて洗濯するのが惜しくなった。

 初めてキスした日、きっとキミは覚えていないよね?新宿駅前の道で人通りが多かった。キミは突然私の頬を両手で挟み、私の唇に自分の唇を重ねた。温かくて、甘いキスだった。私が驚いて目をぱちくりさせると、キミはいたずらっ子のようにペロッと舌を出して笑った。私のことなんてこれっぽっちも好きじゃないくせに、私をからかって面白がっていた。キミを最低だと思いたかったけれど、私はキミの唇の柔らかさを忘れられなくて、それ以来、キミが欲しくてたまらなくなった。気付いた時には深みにはまって、キミに夢中になっていた。

 キミを特別に思っていた。キミの特別になりたいと思った。好きなんて言葉じゃ物足りないくらいキミが好きだ。好きでも愛しているでもなく、もっと正確にキミへの気持ちを表す言葉があれば良いのにと思った。キミが欲しい。叶うならキミを私のものにしたい。


そのためには周りの人が邪魔だった。キミの周りに他の人たちなんていらない。キミがそんな人たちに愛嬌を振りまくなんて許さない。キミは私だけを見ていたら良い。キミを惑わす他の人たちなんて私が殺してあげる。


 キミの唇を奪う。舌を少し出して絡めるとキミはふふふと笑った。キミは私の隣で、そうやってずっと笑っていれば良いよ。やっと二人だけの世界になったんだから。

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