野良猫という生き方
(インタビューを受ける女の子)
ええと・・・、6、70人・・・くらいでしょうか。大体付き合って1ヶ月たたないくらいで別れてしまうことが多いので、あまりきちんと数えたことが無いのですが・・・。
一番好きだった人・・・難しい質問するんですね。うーん、みんなのこと、ちゃんと好きだったんですけど、一番って言われると光くんかな。ひーくんって呼んでいました。かっこいいとかワイルドとかよりは可愛いイメージの男の子で、高校の時の1つ上の先輩でした。男の子にしては少し長めのさらさらヘアで、目がくりんと大きくて、背もそんなに高くなくて、すごく可愛いのに、勉強教えてくれる時はいっつもブラックコーヒー飲んでたし、一緒に帰る時は絶対車道側を歩いてくれて、隣に居るのがとても楽しかったなって今でも時々思い出しますね。
ひーくんとは付き合うまでが長かったんですよね。出会ってすぐに告白したのに、返事をずっと引き延ばされたまま、付き合ってるみたいな距離感でした。でも1年くらいしてやっと返事をくれた後、なんかもういいかなって急に興味がなくなっちゃって、バスケ部だったクラスメイトに想いを寄せるようになりました。次の人は反動なのか、ひーくんと間逆の体育会系なタイプでしたね。懐かしいな。
いえ、確かに片想いしている間は楽しいけれど、相手に好かれたいとか、大事にされたいみたいな気持ちはちゃんとあるんですよ。でも、自分が誰かのものになっちゃたみたいな感覚が苦手で。自由でいたいんでしょうね、私。
それじゃあ寂しいじゃないですか。誰も構ってくれなくなったら、私、多分死んじゃいます。たまにね、野良猫みたいに生きていたいなって思うんです。特定の誰かの飼い猫じゃないけど、毎日どこかで誰かが私にちょっと餌をくれたり、ちょっと遊んでくれたりする。特定の名前は無いけれど、みんな好き勝手に違う名前で私の事を呼んで、その時だけ無責任に私を独り占めした気になるんです。
ええ。たとえ恋人や奥さんが居ても、今だけ私と居たいって思ってくれるなら、私はあまり気にしませんよ。私がその人の恋人になりたいわけじゃないので。でもきっと、相手もたまにはパートナーから離れて自由に恋人感を楽しみたいって思ってるんじゃないですかね?
あぁ、周りの方からもよく言われますが、多分大丈夫だと思っています。私、長いことこういう生き方をしてきて、まだ一度も刺されたことがないので。それに・・・、正直刺されたら刺されたでしょうがないかなとも思ってるんですよ。実際そういうことをしながら生きているわけですし。
・・・私のせいで旦那さんと離婚まで・・・?なるほど・・・そうでしたか。私のこと、刺し殺したいって話ですか?
そうですか。・・・でもまぁ、それだけ私を求めてくれたっていうのはちょっと嬉しいかもしれないです。本当にいいんですか?刺さなくて。こんな女ですよ?
嘘ですよ。・・・ただ、野良猫って苦しい生き方ですよね。