東京一極集中とローカル「らしさ」
今月は、ローカル発ビジネスについて考えてきました。
最終回は、東京一極集中とビジネスの関係について考えます。
私は、初めてこのグラフを見た時、「東京一極集中や、東京への転入率が高すぎる」って、実はそんなことないんじゃない?と思っていました。
高度経済成長期などに比べれば、地方の転出率、都市圏の転入率は少ないと思ったからです。
さらに、こちらのグラフ。
転入人口の推移と、経済成長率の推移は類似しています。「ほら、やっぱり都会に出てバリバリ働いた方が日本のためになるじゃん!」と思いました。
これまで、ローカル発ビジネスを考えるにあたり、地域から若者が転出してしまい、少子高齢化・人口減少がローカルが抱える大きな課題であることが分かりました。一方、第一回・第二回でも記述している通り、いくら地方で暮らしたくても、働く場所がなければ転出せざるを得ません。東京には仕事が多いというのが事実です。
そこで、今回は、下記の2つについて考えてみたいと思います。
①働く場所がある東京に転入し、仕事をして、経済を回す。東京一極集中の何が問題なのか?
②ローカルが東京と差別化を図る「地域らしさ」とビジネス
東京一極集中問題は何が問題なのか?
東京一極集中って問題だと思う?と聞かれれば、「問題だと思う」と答えていました。しかし、本当のところ何が問題なのかを考えたことがありませんでした。以下は、17~19歳の800人に対して行われた意識調査の結果です。
日本財団「18歳意識調査」結果 第10回 テーマ [地方創生]
ここで挙げられている問題に対して、一つ一つ考えてみたいと思います。
①ヒト、モノ、カネ、情報が量的に過集中し、国内不均衡(地方衰退)が拡大している問題。
私も三重県に住んでいたときに土地による不均衡を感じていました。ちょっと出かけたらすぐ買えるのと、ネットで買って数日待つのとは大きな違いがあります。買えるところがあれば、お金も集まり、ヒトも集まり、そうすると情報も集まる。しかし私たちの周りには、それ以外にも多くの不均衡があります。家庭・教育・仕事・収入・家…。それらは「東京と地方」だけではなく、東京の中、地方の中にも存在しています。なので、一概に東京一極集中が招いた不均衡であるとは言い難いのではないかと思います。
②首相官邸、各省庁、国会、裁判所などこの国の3権力が集まり、首都直下地震が起こると、日本全体が麻痺する問題。
これに関しては、私一人がどうにかできる問題ではないのですが…もし仮に、他の地域に移すことができれば、その地域の活性化にもなります、日本全体が麻痺することを回避できる以外にも様々な課題が解決できそうですね。
③地価の高騰、人口過密、これに伴う長時間通勤やラッシュによる住環境の悪化
個人的には、「東京に住む!」と決めたときからこれは覚悟していましたが…30分に1本しかこないローカル線で通学していたときと、満員電車で通勤している今のどちらが辛いか?と聞かれると、答えるのは難しいですね。
と、東京一極集中の問題を調べてきましたが、正直なところ私自身が問題だと感じる問題はありませんでした。きっとこれが問題なんですね。どうしても自分視点で考えてしまうのと、慣れというか、マヒというか…問題だと思えない。東京に住んでいる一人ひとりが、「東京一極集中問題」について考え、問題だという意識を持たない限り解決されないでしょう。
さて、どうしたら問題だという意識を持つことができるのか…。
よければどなたか、ディスカッション相手になってください。(笑)
ローカルが東京と差別化を図る「地域らしさ」とビジネス
ここでは、ローカルが東京に勝ために重要である「地域らしさ」の出し方について考えます。
①行政が主体となって、地域をブランディング「写真の町北海道東川町」
インスタ映え、などという言葉が誕生する、はるか昔の1985年に、東川町では「写真の町」宣言を行い、高校写真部を対象にした「写真甲子園」の開催や、世界から誘客する「東川町国際写真フェスティバル」のような、写真にまつわるイベントを開催しています。また、イベントだけではなく、写真の町という名前にふさわしいように、景観の保全にも力をいれています。東川町では、写真や木工作品の町というブランディングを長期間かけて行い、豊かな自然資源と組み合わせて、「大雪山の麓にある自然景観豊かで、文化が香る町です。」と町のライフスタイルに昇華しています。このように観光だけではなく、ライフスタイルの提案まで昇華した、町のコンセプト作りが、20年で人口14%増した背景にあります。(公務員総研より)
すばらしいこちらの事例のように、特に、地域全体のブランディングを行う場合、行政の力が重要です。それは、民間企業だけでは「XX(商品)のまち」という文脈でのブランディングしか難しいと思うからです。
リモートワークやフリーランスが増え、場所に囚われずに働く人が増えました。仕事があるまちよりも、そのまちでどんな生活ができるか?を重要視する人もいます。そういった人たちに対して、利便性や観光地がなくてもアプローチするためには、そのまち「らしさ」を起点とした地域全体のブランディングが重要であり、その要は行政であると言えるかと思います。
②民間企業の商品が、まちのイメージに「富士宮やきそば」
B級グルメのブームの王者として君臨している、富士宮やきそば。たかが焼きそば。その「やきそばでまちおこし」を標榜に取り組み、これまでに500億円以上の経済効果を地元富士宮にもたらしている。発端は、好み焼き屋など焼きそばを提供する店が多いことに気がついた20人ほどのメンバーが「やきそばG麺」と名乗って調査を開始し「富士宮やきそばマップ」を作成したことから始まる。そして、やきそばG麺は、「ミッション麺ポシブル」を使命に、やきそばを焼くのに東奔西走した。また、焼くだけでなく、「一緒に焼きそばを盛り上げよう」という趣旨の協定書に調印し、巨大な鉄板で焼き比べをすることにした。これを「三者麺談」と命名したところ、テレビをはじめ多くのマスコミに取り上げられ、富士宮焼きそばの知名度は一気に全国区となった。(地域ブランドNEWSより)
今や「富士宮といえば焼きそば」ですが、焼きそばは、静岡だけでなく全国の家庭で親しまれている料理です。焼きそばのプロも、焼きそばが大好きな人もたくさんいるでしょう。しかし、その人たちを「やきそば同好会」ではなく「やきそばG麺」と言い、「ミッション麺ポッシブル」といって焼きそばを焼きに全国を走り周ったり、みんなで焼きそばを焼くことを「三者麺談」という人はいませんでした。このようなユニークさもふくめて富士宮らしさなのだと思います。
当たり前だと思っていることの中から、「らしさ」を見つけ出すこと。「らしさ」を大切に「らしく」伝えつづけること。これが、唯一無二になるために必要なことだと思いました。
まとめ
今回は、東京一極集中の問題と、地方が東京に勝つために重要な「地域らしさ」について考えました。
東京一極集中問題は、それが問題であると認識できないことに問題があると分かりました。この問題を認識するための方法は、私自身の宿題にしたいと思います。
そして、ローカルが東京と差別化を図る「地域らしさ」には、決して特別な何かが必要なのではなく、地域の人が、地域に興味を持ち、とことん考えて見つかる「らしさ」を、そのまま「らしく」伝えることが大切だと分かりました。