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AIによる絵柄の学習はもう始まっている
こんにちは、DL同人作家のハルヒスキーです。
AIによる絵柄の学習を取り上げます。
2022年10月17日のお絵描き配信でのスライドです。
イラストAIの追加学習について
イラストAIには、「追加学習」という概念があります。
イラストAIは膨大な画像データを元に学習を行い、モデルを作り上げるのですが、そのモデルをベースに、さらに画像データで学習を行うことができます。これは、元のモデルを作り上げるのに比べて簡易で、個人でも行うことが可能です。
追加学習の方法には、Textual Inversionや、Dream Boothなどのやり方があります。たとえば、「ねんどろいどハルヒスキー」は、Dream Boothのやり方で作った画像です。SDキャラクターの画像を15枚用意し、二~三時間程度の学習を行いました。
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ポイントは、「誰でも、無料で、簡単に」追加学習ができることです。その画像の権利を持っていない人でも、です。
そんな追加学習ですが、今一番注目されているのが、HyperNetworkという方法です。
技術的なことは自分にはサッパリですので、参考になったnote記事のリンクを貼ります。
※2022/10/19 追記
こちら、記事を書かれたgcem156さんにコメントで補足をいただきました。
gcem156さん、ありがとうございます!
私がhypernetworkを使ったのは絵柄の再現のためであって、キャラクターの学習にはhypernetworkは使っていないですよ。
ちなみにAIが左右区別できない問題は、実は学習データのかさ増しのために左右反転させた画像も学習させているのが原因だったりします。それをやめて追加学習すれば左右の違いも認識してくれます。
一長一短あるはずだと思いますが、Textual InversionやDream Boothよりも、さらに精度が高い出力ができているように感じます。
(ただし、グラボの要求スペックは高い模様)
Automatic1111にNovelAIが使ってたhypernetworkが実装されたみたい。これはDreamboothの結果に匹敵する可能性があり遥かに便利とのこと。これが無料で誰でも出来る。マジやばくね?https://t.co/OwCP4Cw1IY pic.twitter.com/imymTv5c9H
— 🐾熊坂くくる🐾🐻 (@livewkwest) October 14, 2022
追加学習でできるようになりそうなこと
このHyperNetworksの追加学習によって、何が可能になり、何が変わるのでしょうか?
・キャラの再現精度の向上
・キャラそのものの追加学習
・特定の作家の模倣
・「AIぽい絵柄」からの脱却
・「キャラクター」を固定して出力
ざっと思いつく限りでは、これらのことが出来そうです。
従来のデータベースで学習されているキャラクターをより精細に出力したり、新しくキャラを追加したりできます。
例えば、ガンダム水星の魔女のスレッタ・マーキュリー。つい最近アニメ放送が始まったばかりであり、既存のイラストAIの学習データベースにはほぼイラストがないキャラクターです。
アニメのキャプによって、学習を進めている方がいる模様。
スレッタ、特徴的な眉をしていてDreamBoothでスレッタマーキュリーというキャラを教えただけではプロンプトで出すのが難しい(鵺野鳴介のような眉にしてしまう)んだけど、この特徴的な眉に関してはHypernetworkを活用することで『ある程度』対応できるということはわかった#AIイラスト pic.twitter.com/6S146xSq5G
— poc (@2D_3D_PoC) October 16, 2022
そして、気になるところとしては、「作家の模倣」が挙げられます。イラストAIに特定の作家のイラストの追加学習を行うことで、作風を模倣できます。すでに、4chanで沢山の学習が行われ、作家に特化した学習のptが公開されています。
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これにより、今現在私たちが「AIか人間か」を区別するのに用いている「AIっぽい絵柄」というものが、無効になる可能性があります。
そうなれば、手描きのイラストとAI出力のイラストを区別することは、ますます困難になっていくでしょう。
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また、今はAI出力は非常にランダム性が高く、一貫した髪型や衣装のキャラクターを出力することが難しいのですが、それも可能になる可能性があります。
もし、そうなると、「AI漫画」というものの実現可能性が現実味を帯びてきます。
この2022年8月後半から二ヶ月、怒涛のような変化が起きていますが、HyperNetworksによって、イラストAIはさらに次のステージに進む予感があります。
一体、どうなってしまうんでしょうね…(溜息)
今、イラストAIによって、DL同人に起きていること
最後に、DL同人とイラストAIの関係について。
2022年10月12日、DL同人販売プラットフォームのFanzaで、実にその日の新作の約3/5がAI同人になる、という怒涛のAI同人ラッシュがありました。
その多くは、AIで出力した画像を詰め込んだだけのものであり、10~20DL程度にとどまっています。
ですが、10~20DL程度でも、数を作れば利益になる……というような考えで、大量に作品が登録されたのです。AIの持つ大量生産の部分が露骨にプッシュされた形になりました。
粗製乱造ばかりかというとそういうわけでもなく、「AI生成」のタグがついた作品にも、500~700DLされている作品が複数出てきました。
それらは
・セリフをちゃんと入れている
・シチュにこだわっている
・擬音や効果をちゃんと入れている
つまりは、従来のDL同人のフォーマットに則ったものが売れる結果になっています。
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現状では、まだまだ手描きのDL同人の方が圧倒的に強く、AI同人はランキングの下位にあります。
ですが、追加学習などによって、キャラの固定が可能になれば、より一貫性のあるストーリーの制作が可能になるはずです。
「AI漫画」の誕生は近いのかもしれません。もっとも、AI漫画という言葉でイメージするような、ボタンを押せばポンと完成するようなものではなく、作者が大量のAI製イラスト素材をコラージュしていくような形式になると思いますが。
そのような作品が出てきたとき、AI同人と手描き同人の、第二ラウンドのゴングがなることでしょう。
切り抜き動画版はこちら。