三十四丁目の奇蹟
鑑賞時の感想ツイートはこちら。
1947年のアメリカ映画。クリスマスの季節を迎えるニューヨークで、自らをサンタクロースの別名「クリス・クリングル」と名乗るサンタそっくりな老人。彼の姿を通して、“信じること” の素晴らしさを描いた心温まる作品です。
彼の行動は、デパートのクリスマス商戦や、サンタの存在を信じない現実主義の母娘にも変化をもたらします。果ては市民や裁判所まで巻き込んで「サンタはいるのか?」という論争に――。原題 "Miracle on 34th Street"。
監督・脚本は、ジョージ・シートン。本作でアカデミー脚色賞を受賞しています。
主な登場人物
主な登場人物
〇 クリス・クリングル(エドマンド・グウェン)
白い髭をたくわえたサンタクロースそっくりな風貌の老人。自らを「本物のサンタ」と言ってはばからず、ニューヨークのデパート「メイシーズ」でクリスマス商戦のサンタ役を見事にこなして子どもたちの人気者に。
〇 スーザン(ナタリー・ウッド)
母親のドリスと二人暮らし。母の教育方針により「サンタはいない」と教えられており、サンタの存在を信じていない冷めた少女。クリスとの出会いにより、半信半疑ながら「本物のサンタなのかも……」と思い始める。
〇 ドリス(モーリン・オハラ)
デパート「メイシーズ」の人事担当。バツイチのシングルマザー。「子どもにウソを教えるのは良くない」との考えから、娘のスーザンにはおとぎ話もサンタも信じないように教えている。デパートの名物である感謝祭パレードを準備中にサンタ役が泥酔してしまい、急遽クリスを代役として起用する。
〇 フレッド(ジョン・ペイン)
ドリス&スーザン母娘の隣人で、弁護士。ドリスとはお互いに好意を寄せ合っているものの、交際までには至らない。スーザンのお守り役を快く引き受けるなど、親切な紳士。サンタはウソだと教えられているスーザンを不憫に思い、「メイシーズ」のサンタ(クリス)に会いに連れて行く。裁判では、クリスの弁護を買って出る。
クリスマス映画の定番
本作は、アメリカで『素晴らしき哉、人生!』(1946年)と並ぶ、クリスマス映画の定番中の定番。後に、テレビや映画でリメイクが何回も作られています。
劇場映画としてのリメイク作品は『34丁目の奇跡』(1994年)。
オリジナル版とリメイク版では、タイトルの表記が微妙に違うことにご注意。
〇 三十四丁目の奇蹟(1947年/オリジナル)
〇 34丁目の奇跡(1994年/リメイク)
数字の表記(“三十四”/“34”)と、「キセキ」の「セキ」の字(“蹟”/“跡”)が違います。
ちなみに「奇蹟」と「奇跡」。異なる意味で使われるようです。
〇「奇蹟」
キリスト教などで言われる、神の力によって行われること。
(例:イエスが水を葡萄酒に変える奇蹟)
〇「奇跡」
通常は起こり得ないような不思議な出来事。
(例:奇跡的に助かった)
知らなかったなぁ。面白いですね~!
オリジナル版とリメイク版の違い
ここで、オリジナル版(1947年)とリメイク版(1994年)の違いを。
〇 モノクロ/カラー
[オリジナル版]
元々はモノクロ作品。2006年にカラーライズされた「カラー版」もある。
[リメイク版]
カラー作品。
〇 クリス・クリングル
サンタを名乗る老人、クリス・クリングル役が――
[オリジナル版]
エドマンド・グウェン。本作の演技で、アカデミー賞とゴールデングローブ賞において助演男優賞を受賞しています。眼鏡なし。
[リメイク版]
リチャード・アッテンボロー。眼鏡あり。
眼鏡のある/なしで見分けてください。笑
どちらも素敵なサンタさんを演じています♩ その優しげな雰囲気は、大人のわたしでも甘えたくなっちゃう!♡
こちらは、リメイク版の予告編。
リチャード・アッテンボローのクリングル氏も良いですね。
街角で「サンタさんだ!」という男の子に(クリングル氏は背広姿)、内緒のささやき声で「そうだよ」と。夢があるわぁ~♩
〇 スーザン
クリス・クリングル氏と心温まるやりとりをする女の子、スーザン。本作の重要な役どころです。(オリジナル版とリメイク版の違いは、髪の色と長さで見分けてください。笑)
オリジナル版のスーザンは、なんと子ども時代のナタリー・ウッドが演じているんです!
可愛い♡
ナタリー・ウッドのスーザンは、時代もあってか、より “おしゃま” な感じ。
ナタリー・ウッドといえば、『理由なき反抗』の「ジュディ」や『ウエスト・サイド物語』の「マリア」!
面影あるかも。
・・・
リメイク版のスーザン(マーラ・ウィルソン)は、冷めているクールな感じが現代的。
「親の教えどおり、サンタなんて信じていないけど……」
「でも、本当だったらいいのにな……」
という “諦め”、“戸惑い” 、“淡い期待” などの入り混じった複雑な感情を巧みに演じています。お見事!
〇 裁判のオチ
まるで本物のサンタのように振る舞う「自称」クリス・クリングル氏。デパート「メイシーズ」のサンタ役を引き受けたことから人気者になり、スーザンのような子どもたちに大きく影響を与えますが、同様にデパート業界をはじめとする周囲の大人たちにも影響が波及してゆきます。
クリングル氏は、ただの妄想癖のある精神病患者なのか?
ひいては裁判にまで発展し、法廷で「サンタは存在するのか?」「サンタの存在を信じるのか?」という論争にまで及びます。
ニューヨークの街では、あちこちに「サンタを信じます」というメッセージボードが掲げられ、市民も裁判の行方を見守りますが――。
この裁判のオチが、オリジナル版とリメイク版では異なります。
判決は同じなのですが、クリスマス・イヴの終審日、弁護士によって “どうやってそこへ持って行くか” の論法が全く違っているのです。
オリジナル版も、リメイク版も、「なるほど、そうきましたか!」と膝を打つ鮮やかな脚色ぶりですが、ここは好みが分かれるところかもしれません。
個人的には、リメイク版の方が、より “アメリカ人が好みそうな感じ” に仕上がっている気がするので、わたしはオリジナル版の方が素朴で好きかなぁ。
メイシーズのパレード
最後に違いをもうひとつ。オリジナル版とリメイク版では、作中に登場するデパートの名前がなぜか変えられています。
[オリジナル版]
(1)クリングル氏がいるデパートの名前:「メイシーズ」(Macy's)
(2)ライバル百貨店の名前:「ギンベル」(Gimbels)
[リメイク版]
(1)「コールズ」(Cole's)
(2)「ショッパーズ」(Shopper's Express)
オリジナル版に出てくる「メイシーズ」も「ギンベル」も、当時、ニューヨークにあった実在の百貨店。
リメイク版で名前が変えられているのは、なぜ?
もしかして、「大人の事情」?
と思って調べてみると――
やはり、そうでした。笑
リメイク版の方の 英語版 Wikipedia に、こんな記述が。
The New York City based Macy's department store declined any involvement with this remake, so the fictitious "Cole's" became its replacement.
Gimbels had gone out of business in 1987; hence it was replaced by the fictional "Shopper's Express".
ニューヨーク市に本拠を置くメイシーズ百貨店は、このリメイク作品への関与を辞退したため、代わりに架空の「コールズ」になりました。
ギンベル百貨店は 1987年に廃業したため、架空の「ショッパーズエクスプレス」に置き換えられました。
なるほどね!
調べてみるものですね。面白いなぁ。
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こちらが、ニューヨークのマンハッタン34丁目(34th St.)ヘラルド・スクエアにある「メイシーズ」。
おお~、老舗百貨店っていう感じ♩
日本で言うと、日本橋の三越や高島屋みたいな感じでしょうか。デパートに行くと綺麗なモノや素敵なモノがたくさん並んでいて、見ているだけでワクワクしますよね~! わたし、デパート大好きです♡
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こちらは、メイシーズの感謝祭パレード。2019年の様子。
サンタさん、いますね~♩
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そして、映画の中でクリス・クリングル氏がやっていた、メイシーズの「サンタランド」。
サンタさんのお膝に乗せてもらって、直接お話したり、写真を撮ってもらったりできるんですよ♩
なんて夢のある空間なのでしょう! 案内係のお兄さんやお姉さんも、ディズニーのキャストさん並のフレンドリーさ!
いいなぁ~。子どもの時に行ったら、きっと一生の想い出になりますよね♡
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サンタさんのお膝で―― というと、つい大好きなドラマ『glee/グリー』のこのシーンを思い出してしまう……。笑
『glee/グリー』シーズン2
EP10 「A Very Glee Christmas/メリー・グリー・クリスマス」より。
ブリタニーは天然不思議ちゃんキャラなので、高校生になってもサンタさんを信じているんですよね。
・・・
さて、お話を本作『三十四丁目の奇蹟』に戻して――。
目に見えないものを “信じる” こと。
それがどんなに豊かで、どんなに素敵なことかを教えてくれる、優しい気持ちになれる映画です。
今年も早いもので、もう10月。
もう少しして「クリスマス映画が観たいなぁ」という季節になったら、ぜひ♩
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