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リトル・ダンサー
鑑賞時の感想ツイートはこちら。
『リトル・ダンサー』(Billy Elliot)を観た。ずっと気になっていた映画。もう、ビリー少年が可愛い可愛い! そう、大好きなものって、自然に好きになってるし、それをしているときはすべてを忘れる、夢中になる。後半は涙、涙…。パパがね、良いんですよ、ううう。ほんと、いい作品。 pic.twitter.com/2rUWB4A7rP
— もりはるひ (@haruhi_mori) February 12, 2017
2000年のイギリス映画。1984年のイギリスの炭鉱町を舞台に、当時は女性のものと思われていたバレエに魅了された少年が、プロのバレエ・ダンサーを目指す姿を描いたヒューマン・ドラマ作品です。原題 "Billy Elliot"。
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出演は、主人公ビリー・エリオット役に2000人の中から選ばれ、映画デビュー作でありながら高い評価を得たジェイミー・ベル。ビリーの父・ジャッキー役にゲイリー・ルイス、ビリーの兄・トニー役にジェイミー・ドラヴェン、バレエの先生・ウィルキンソン役にジュリー・ウォルターズ、ほか。
監督は、演出家として100本以上の舞台作品を手掛け(ローレンス・オリヴィエ賞、トニー賞などを受賞)、本作が映画初監督作品となったスティーヴン・ダルドリー。そのほかの代表作に『めぐりあう時間たち』、『愛を読むひと』、『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』など。
ひたむきなビリー少年が可愛い!
イギリス Lover(♡)のわたしとしては、ずっと気になっていた本作。ちらほらと聞こえてくる評判も、すこぶる良くて―― ようやく観られた時はワクワクしました♩
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何より、主人公の11歳の男の子、ビリー(ジェイミー・ベル)がすっごく可愛い!
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なんというか、あの年頃の男の子の、不器用さ、素朴さ、シャイでぶっきらぼうな感じ―― わたし自身が男の子を育ててきた母でもあるので、観ていてすごく “少年らしい” なぁ、と。
「今日、学校どうだった?」
「べつに。フツー」
みたいな。笑
(世の男子のお母さま方、おわかりいただけますよね?)
あの時代、イギリスの炭鉱町の閉塞感
本作の舞台は、1984年のイギリス。それまで主要な産業として国有化されていた炭鉱は、当時「鉄の女」(Iron Lady)と呼ばれたサッチャー政権により、民営化や閉鎖の方向へ大きく転換を図ろうとしていました。
炭鉱に経済を頼っていた地域では失業者が相次ぎ、1984~1985年には「英国炭鉱労働者ストライキ」(UK miners' strike)というイギリス史上に残る社会運動が起きたのですよね。
・・・
この頃の炭鉱町を舞台にした映画も、たくさん作られています。
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○ ブラス!(1996年)
○ フル・モンティ(1997年)*
○ リトル・ダンサー(2000年)
○ パレードへようこそ(2014年)
*『フル・モンティ』は、炭鉱ではなく鉄鋼の町が舞台
これらのうち、わたしは『ブラス!』、『フル・モンティ』、『リトル・ダンサー』の3作品を観ました。(『パレードへようこそ』も気になっています)
この時代のイギリスを描いた作品は、先の見えない空気が漂う世相の中、人々の普遍的な力強さを描いた良作が多く、元気が出るのでどれもおすすめです!
・・・
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本作『リトル・ダンサー』でも、そんな時代背景がよく描かれています。
主人公ビリーの家庭は4人暮らし。パパとお兄ちゃんは炭鉱夫で、不況の真っ只中、連日ストライキに参加するくらいしかすることがありません。ママはビリーが幼い頃に他界。おばあちゃんは家にいて、少し認知症が始まっています。家計は苦しく、なんとも重苦しい “しんどさ” に、それぞれがあえいでいるようなエリオット家。
この閉塞感が丁寧に描かれているからこそ、父と兄の葛藤、“好きなもの” に惹かれて仕方ないビリーの魂が解放される歓び、バレエのウィルキンソン先生との交流、家族の絆―― などが、後半、感動的に活きてくるのです。
大好きなものって、自然に好きになってるし、それをしているときはすべてを忘れる。
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炭鉱夫だけあって「男はタフであるべし」といった昔ながらの考えを持っている父・ジャッキー(ゲイリー・ルイス)は、次男のビリーを町内のボクシング教室に通わせています。でも、ビリー本人は “殴り合い” のボクシングをどうしても好きになれませんでした。
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そんなある日、ボクシング教室が開かれているホールの一角を、会場の都合でバレエ教室が使用することに。元々音楽が大好きなビリー少年は、たちまちバレエに魅了されてしまいます。
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父には内緒で、女の子たちに交じってバレエ教室に通い始めるビリー。(月謝はボクシング教室のために父が渡してくれるお金を流用。笑)バレエ講師のウィルキンソン先生(ジュリー・ウォルターズ)もビリーにバレエの才能を見出し、家庭の事情は察しつつも熱心に指導してくれます。
ところが、あることから内緒のバレエ教室通いが父にバレてしまい――。
ここから先は、ぜひ本編で観ていただきたいなぁ♩
・・・
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作中、街角で、練習場所のホールで、ビリーが魂の赴くままにダンスを踊るシーンが何度も出てきます。本当に「踊らずにはいられない」といったビリーの情熱が痛いほど伝わってくる、素晴らしいシーンです。
「男はタフであれ」という父の期待、プロのバレエ・ダンサーになるための教育費用を自分の家では捻出できないこと―― 子どものビリーにも重々わかっているのです。でも、止められない。それがどうしてなのか、たぶん本人にも理由はわからない。
ただ、ただ、「踊っていたい」。
ビリーの踊りは、バレエの型とはかけ離れていて、一見ハチャメチャなダンスなのですが、魂の内側からほとばしるようなエネルギーに満ちています。見ているだけでそのエネルギーが伝わってきて、グッときてしまうダンスです。
2000人の中から選ばれた、ジェイミー・ベルに拍手! 素晴らしい躍動感!
・・・
感想ツイートにも書きましたが、
大好きなものって、自然に好きになってるし、それをしているときはすべてを忘れる、夢中になる。
そういうものなんですよね。理由なんて、ない。
わたしにとっては、お散歩や映画など、こちらの記事に書いたものたちがそうなのかなぁ――なんて気がしています。
“魂の歓び” としか言いようのない「好きなもの」を自分も持っているからこそ、ビリーに深く共感してしまうのかもしれません。
パパの好演が感動に深みを与える
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一方で、もうひとつわたしが感情移入してしまったのが、ゲイリー・ルイス演じるビリーのパパ。
一家の大黒柱として炭鉱で働いてきた誇り。妻を亡くした悲しさ。ひとり親の家庭で子どもたちを育てる心もとなさ。不況のあおりで、労働組合の仲間たちと酒をあおり、ストライキに怒りや苛立ちをぶつけるしかない不甲斐なさ―― 大人の男として、親として、様々な感情を表情に滲ませる姿。
わたしも子を持つ親なので、ひとつひとつのシーンに心を揺さぶられました。良いんですよー、このパパが!
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ジュリー・ウォルターズ演じるバレエ教室のウィルキンソン先生も、気だるそうな空気を醸しつつ芯はしっかりしていて、良い味を出しています。
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『ハリー・ポッター』シリーズでは、ロンのママとして大活躍でしたね♩
映像の色合いにも、ご注目
ちなみに、初回から3年後に再鑑賞したときのツイートはこちら。
『リトル・ダンサー』(Billy Elliot)を観た。再鑑賞。
— もりはるひ (@haruhi_mori) August 6, 2020
終始、くすんだインディゴブルーの色調が美しい。イエローとの対比も。
停滞した日常を描くシーンにこのブルーが多く使われ、強い変化や希望を表すシーンにはグリーンと赤の配色が。#映画好きと繋がりたい #映画好きな人と繋がりたい pic.twitter.com/hwul1Gl7V1
シーンごとの色の使い方については、あくまでもわたしの個人的な印象ですが、どのシーンも抑えた色調が綺麗です。良かったら注目してみてくださいね♩
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