パフューム ある人殺しの物語
鑑賞時の感想ツイートはこちら。
2006年のドイツ映画。生まれつき超人的な嗅覚を持ち孤児として育った青年が、ある “香り” を追い求めるあまり恐るべき凶行へと駆り立てられていく姿を描いたサスペンス・ドラマ作品です。原題 "Perfume: The Story of a Murderer"。
主演は、『007』シリーズ、『パディントン』のベン・ウィショー。共演に、ダスティン・ホフマン、アラン・リックマン、 レイチェル・ハード=ウッド、ほか。監督は『ラン・ローラ・ラン』のトム・ティクヴァ。
○ あらすじ(ネタバレなし)
18世紀のパリ。悪臭立ちこめる魚市場で一人の赤ん坊が産み落とされる。危うく捨てられかけた赤ん坊は、間一髪で拾われ、グルヌイユと名付けられて孤児院に引き取られる。グルヌイユは友だちもいない孤独な子どもだったが、何キロも先の匂いを嗅ぎ分ける超人的な嗅覚の持ち主だった。
やがて青年となったグルヌイユは、ある時運命の香りと出会った。それは赤毛の少女の体から匂い立っていた。しかし彼は、怯えて悲鳴を上げようとした少女の口をふさぎ、誤って殺してしまう。以来、彼は少女の香りを再現することに執着し、香水調合師バルディーニに弟子入りするのだが――
(出典:allcinema より)
匂いフェチには、とても気になる作品
のっけから妙な告白をいたしますが、わたくし、れっきとした “匂いフェチ” です。
アロマオイル歴は、かれこれ15年以上。わたしにとっては生活の一部です。たたんだティッシュにアロマオイルを落として部屋に香らせたり、お出かけの時にハンカチに数滴落としてバッグにしのばせたりして、日常的に楽しんでいます♩
こうして画面に向かって note を書いている、まさに「今」この瞬間も、目の前にアロマがあります。今日は、ペパーミント、ローズマリー、マジョラムのブレンド。くんくん……いい香り~♡
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暑さが本格化してきた今のような季節は、こんな使い方もおすすめ。
アロマオイルの専門店にも、足繁く通っていました。
こちらの店舗(カリス成城)は、デパートの閉店に伴って数年前になくなってしまい、残念(涙)。最近はもっぱら、インターネットで精油(アロマオイル)を入手しています。
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アロマに関するわたしの過去ツイートも、検索してみたら沢山ありました。このツイートをした時は、結構マニアックなことをしています。笑
ちなみに、アットアロマさんは、パレスホテルのオリジナルエッセンシャルオイル等を開発されているアロマ屋さん。
▼ @aroma アットアロマ株式会社 導入事例一覧
以前パレスホテルに泊まった時、館内にとても素敵な香りが漂っていて、思わずスタッフの方にたずねてみたら「当ホテルのオリジナルアロマです」と教えていただいて。
スターアニス……なのかな? オリエンタルなスパイス系の香りが入っていて、とっても落ち着く香りなのです。好き♡(ホテルのフロントか、こちらのオンラインショップで購入できます)
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アロマのほかに香水も大好きで、たくさんお話ししたいことがあるのですが、既に映画の話からだいぶ脱線しているので(笑)、香水についてはこちらの記事に譲ります。
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さて、そんな「アロマ好き」で「香水好き」、ドラッグストアへ行けば洗濯洗剤だろうがトイレの芳香剤だろうが片っ端から「香り見本」をくんくん嗅ぎまくる「匂いフェチ」のわたくし、もりはるひです。笑
本作『パフューム ある人殺しの物語』の噂も、耳に入ってこないはずがありません。タイトルからして、その名も「パフューム」! 香りがテーマの作品と聞いて、ずっと気になっていたのでした――。
原作はドイツ人作家による小説
本作の原作は、46カ国語に翻訳され世界中で1500万部を売り上げているパトリック・ジュースキントの1985年の小説『香水 ある人殺しの物語』。
わたしは原作は未読ですが、映画のあらすじは、ほぼ原作に沿って作られているようです。
著者のジュースキントは当初、この作品は「スタンリー・キューブリックとミロス・フォアマンのみが正しく映像化できる」と考えており、ほかの者による製作を拒否していたそう。
うわ~、それも観てみたかったなぁ! キューブリック版とフォアマン版!
感想ツイートにも書いたように、“香り” という心惹かれるテーマではあるものの、いざ鑑賞するとなると二の足を踏んでいた理由は「もしかして、怖い描写が出てくるのでは?」と不安だったから。
だって、ねぇ? ――「ある人殺しの物語」というサブタイトル。「香水」というモチーフ―― 否が応にも連想してしまうじゃないですか! ホラーとか、残酷な描写とか、わたし、そういうのが大の苦手なのです。うう……涙
――でも、鑑賞前のそんな不安は全くの杞憂でした!
怖いのが苦手なみなさま、安心してください。本作は、ダークなファンタジーです。
音と映像で「匂い」を表現しようとする意欲作
映画の冒頭、主人公 ジャン=バティスト・グルヌイユ(ベン・ウィショー)が罪人として囚われているところから物語は始まります。首や手足を鎖で繋がれ、乱暴に引っ立てられて公開処刑の場へ連れ出されるグルヌイユ。
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上記の導入部から、彼の出生時まで時は遡り、ここからが本編。パリの魚市場のシーンへ。このシーンが凄かった!
18世紀のパリといえば、ヴェルサイユ宮殿に集う貴族でさえ、穴の開いた箱型の椅子や庭の片隅で用を足していた時代。当時は水洗トイレや入浴の習慣など、衛生的な環境もまだ普及しておらず(国王ですら一生に3回しか入浴しなかったのだとか!驚)、多くの人で賑わう市街地などでは相当な悪臭が漂っていたのではないでしょうか。
そもそもヨーロッパ(特にフランス)での香水文化は、こういった背景から “体臭をごまかす” 用途もあって発展を遂げていった歴史があります。
貧しい層の人々がひしめき合う市場、(冷蔵庫もない時代)今にも臭ってきそうな生の魚、売り物の肉、水たまりの泥水―― 観ているだけで生理的に嫌悪感を催しそうな、生々しい映像が続きます。
これ、たぶん “あえて” グロテスクに感じるように撮られているのですよね。
序盤からやや衝撃を受ける描写なので「ええ~!……この先、大丈夫なのかな?」と不安になりますが、不快なモノが映るのはこの市場のシークエンスだけなので、どうかご辛抱を。
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映画という形態では伝えるのが難しい「匂い」というものを、聴覚(音)と視覚(映像)で観客に感じてもらおうとしているんですよね。わたしはこのシーンを観て、とても意欲的な作品だと感じました。
五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)のうち「嗅覚」だけが唯一、本能や情動にかかわる「大脳辺縁系」に “直接” 働きかける感覚なのだとか。
この女性は、グルヌイユの母親。市場の屋台の物陰で、文字通り、グルヌイユを「産み落とし」ます。(しかも、それが初産ではない、という……)
ベン・ウィショーの演技が良い!
主人公 グルヌイユ(grenouille:フランス語で蛙(食用)の意)を演じるのは、ベン・ウィショー! 英国男子好きにはたまらない、人気の俳優さんですよね。わたしも好きです♡
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ベン・ウィショーといえば、クレイグ・ボンドになってからの新『007』シリーズでは、新たな「Q」としてキャスティングされ、話題になりました。
う~ん♩ やはり良い!♡笑
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母親に生み捨てられ、特異な才能を持っていたがゆえに周囲からも気味悪がられ、愛を知らずに育った青年、グルヌイユ。彼は生まれつき、超人的に鋭い嗅覚の持ち主でした。
彼の嗅覚がどれくらい凄いのかは、作品を観てのお楽しみ。警察犬よりも凄いです!
友もなく、愛してくれる人もなく、過酷な人生を歩んできたグルヌイユでしたが、皮なめし職人の親方に随伴してパリの街へ行った際、ある “香り” との運命的な出会いを経験します。
それは、果物売りの娘から発せられる、うっとり陶酔するような、えもいわれぬ香りでした――。
このシーンが、なんとも印象的で!
瑞々しい果実と、赤毛の娘、若々しく柔らかそうな肌―― 舐めるようなカメラワークです。
ただ、それを嗅ぎたい一心のグルヌイユ。
そこに、若い青年が女性に対して抱くようなエロチックな感情はなく、鋭敏な嗅覚を持つ彼だけが感知できる「陶酔的な香り」に無我夢中になっている感じ――。
主人公に邪悪さを感じさせないのが上手い。
と感想ツイートにも書きましたが、この時のベン・ウィショーの無垢な演技と、絵画的な美しい映像が相まって、すごく印象に残っています。
豪華な共演者たち
この日を境に、グルヌイユはその “香り” が忘れられず、なんとか再現しようと模索と追求の人生を送ることに――。
落ち目になりかかっている、かつての売れっ子イタリア人調香師「バルディーニ」役にダスティン・ホフマン。
グルヌイユは、バルディーニに願い出て弟子入りします。
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さらなる調香技術を求めて、パリから香水の町グラージュへ。
ここで習得した「冷浸法」(アンフルラージュ/enfleurage)は、油脂に花弁などの香りを吸着させ、芳香成分を抽出する高度な手法。
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そんな中、グルヌイユはグラージュの町で、再びあの “香り” に出会ってしまいます。
裕福な商人の娘、「ローラ」。彼女もまた、赤毛の若い娘でした。
ローラの父「リシ」を演じるのは、わたしの大好きなアラン・リックマン♩
▼ アラン・リックマン出演作の過去記事は、こちら
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ダスティン・ホフマンとアラン・リックマンが出演、という要素だけでも、観る価値が十分にあるのではないかしら。
衝撃の群衆シーン!
本作といえば必ず話題に挙がるのが、グルヌイユの公開処刑場に集まった群衆の、あのシーン!
あ、怖がりのみなさん、大丈夫です。怖いことは起こりません!(ただし、別の意味で衝撃的なことが起こるシーンです。笑)
このシーンについては、観た人それぞれに様々な感想があるようですが、わたしの場合は、
うわぁ…… これ、本当に撮ったんだ……
という、ちょっと引いた目線での想いが浮かびました。笑
Wikipedia によると、
映画のクライマックスのシーンでは750名のエキストラが必要とされた。ダンス劇団ラ・フラ・デルス・バウス(La Fura dels Baus/スペインの演劇集団)の50名とベテランのタレント100名が群衆の中核を成し、残り600人のエキストラがその周りに配置された。
とのこと。
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ラストシーンも含め、究極の「愛」を呼び覚まされた状態の人間というのは、ああいう行為に至るのでしょうか? 人間の「本能」と切っても切れない “香り” や “嗅覚” を描いた作品だけあって、「究極の愛とはなんぞや?」といった観点での考察をあれこれしてみるのも面白い作品です。
おまけ♩
最後に、おまけの情報を2つ。
主人公グルヌイユと関わった人物たちの末路が、本当にダーク・ファンタジーで面白いです。笑
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音楽も何気に豪華です。
サイモン・ラトル&ベルリン・フィルによる演奏とのこと。よかったら、そちらにも注目してみてください♩
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