『カジノ・ロワイヤル 』千秋楽のライブビューイング感想
真風涼帆はトップになって伸びた偉大な男役だった
本日は宝塚宙組トップスター・真風涼帆さん(ゆりかさん)の卒業を見届けるべく、映画館で『カジノ・ロワイヤル 〜わが名はボンド 』を映画館の一番前の席で見て参りました。首が痛くなるかと思いましたが、5時間の長丁場だったので、足が前に伸ばせてよかった! 生の舞台は5月中旬に見ていましたが、新たな発見もあったので、ここで短めに感想を書いておきたいと思います。
まず、最初に言っておきたいのは、ゆりかさんはトップになって技術的にも飛躍的に伸び、男役としての完成度を高めた稀有な男役だということです。あくまで私見ですが、そのような男役は、近年では、大空祐飛さん、壮一帆さん、柚希礼音さん、朝夏まなとさんくらいではないでしょうか。宝塚は「いよいよこれからトップだぞ」とファンが期待する2番手くらいが一番輝いていることが多い気がします。その点、ゆりかさんは、昔は歌もセリフもくぐもったところがあったのに、トップになって癖がなくなり、声量も豊か何なって、男役としての完成度を1作ごとに高め、大トップの道を登りつめた気がします。これは24時間、宝塚のことを考えているという、努力とストイックな生き方の賜物でしょう。
『カジノ・ロワイヤル』は小池先生の愛が詰まった作品
『カジノ・ロワイヤル 〜わが名はボンド 』は真風と縁の深かった小池 修一郎先生の脚本・演出で、その後のサヨナラショーもそうでした。私は上田久美子先生が朝夏まなとのサヨナラで書いた『神々の土地』や同じく珠城りょうの『桜嵐記』のようなサヨナラ仕様でないものが好みなので、生の舞台を見た時は退団者への花向けに満ちた、祝祭のような作品だと思いました。ですが、映画館で再見すると印象が変わり、大感動してしまいました。
スッシーさんへの万雷の拍手がすごかった
『カジノ・ロワイヤル 』ではゆりかさんだけでなく、相手役の潤花ちゃん、組長の寿つかさ(スッシー)さん、星組時代から一緒だった紫藤りゅうさん、同じく96期の秋音光さんなど7名もの生徒さんたちが退団されました。各々に映画にはないキャラクターに合った役が与えられていて、小池先生の愛がたっぷり詰まった作品です。特にスッシーさんの退場場面で、瑠風輝さん演じるフランス情報局『セデス』の諜報部員ルネ・マティスが「お疲れ様でしたぁ〜」と叫ぶシーンは胸が熱くなりました。
全編を通して言えることですが、スッシーさんへの拍手が大きかったこと!! 割れんばかりというか、滝のようなというか、長く宝塚を見ていますが、あれほど大きな拍手がトップ以外に送られるのを聞いたことはありません。私もスッシーさんのダンスやユーモア、演技、全てが好きでした。本当にご苦労さまでした。余談ですが、6月11日はお誕生日だそうです。最高の誕生日になりましたね。
相性の大切さ教えてくれた「まのかの」
ボンドと潤花ちゃん演じるロマノフ家の末裔デルフィーヌがパラシュートでル・シッフルの根城から脱出し、下界を見ながら「過ごした時間は短くても、君と過ごした日々は決して忘れない」(確か)と互いの思いを歌うと場面は当て書きならではの、トップんコンビの絆の強さを印象付けた名シーンだと思いました。純白の衣装のデュエットダンスも純花ちゃんがダンスの人だけに素敵でしたし、その後、ゆりかさんは1人舞台に残って踊る最後のダンスはファンに対する返礼のように見えました。
サヨナラショーが終わり、最後の挨拶も終わって、幕前でトップコンビだけが語る場面があったのですが、そこでゆりかさんが「想像を超えた行動をする人」と潤花ちゃんを評していて、優しさ、愛をたくさんもらったと、尊敬の念を込めて語っていたのが印象的でした。「漫才コンビみたい」とも言ってましたね(笑)。
この2人を見ていると、トップコンビの相性がいかに大事かわかります。宝塚はトップ同士の恋愛が作品の主軸になっているので、いくらプロ意識が高くても、互いに人間として好きで、信頼できるという気持ちがないと、それが観客に伝わってしまうんですよね。10期も上の真風に「学ぶことが多い」と言わせる潤花ちゃんの陽のパワーと人間力は素晴らしいですね。彼女の演技はハートから言葉が出ていて、心を打つものがありました。
お花渡しで96期のあーちゃん、花乃ちゃんが登場
大階段を降りた後の退団ブーケ渡しで目を引いたのは、96期のトップ娘役2人が登場したこと。紫藤りゅうくんには星組で一緒だった綺咲愛里ちゃん。秋音光くんには宙から花へ組み替えした花乃まりあちゃん。2人とも目を引く美しさでした。スッシーさんへの花束贈呈は元花組組長で専科の高翔みず希さん。長年、同期として励ましあってきたお二人なので、高翔さんにとってスッシーさん退団は寂しいでしょうね。
潤花ちゃんは102期なので宙組に同期がたくさん残っていて、次のトップ娘役となる春乃さくらちゃんも同期です。なので、お花渡しは花宮沙羅さん(不確かですみません)だったかもですが、春乃さんはじめ、同期全員が出てきてました。まだ研7ですよね。惜しいきもしますが、芸能界で女優になるなら若い方が有利です。華やかな美人なので、卒業後は映像の世界でも活躍して欲しいです。
芹香斗亜はの号泣は戦友ならでは
最後に、印象的だったこと。それはゆりかさんに舞台上に呼ばれた2番手・芹香斗亜さん(キキちゃん)のボロ泣き、号泣です。このお二人、星組時代からの長いお付き合い、「戦友」でした。キキちゃんもファンも組み替えした花組でトップになると思っていましたが、『ポーの一族』に出ることはなく、またまた宙へ組み替え。で、ゆりかさんのプレトップお披露目『WEST SIDE STORY』から2番手として、6年近くもゆりかさんを支えてきたんですよね。ゆりかさんの「芹香へバトンを渡せることが嬉しい」というのは本心だと思います。
次期歌ウマトップコンビの活躍も楽しみ
文春には色々書かれていましたが、ゆりかさんはトップオブザトップというべき大トップだったので、その背中が消えるというのは、どんなに2番手を長くやっても、キキちゃんが言っていたように不安でしょう。とはいえ、満を持してのトップ就任ですし、正統派の歌えるスターで、演じる役の振り幅も大きい。さくらちゃんは大人っぽい美人で歌ウマさんなので、「まかかの」とは違った魅力を見せてくれることでしょう。