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プロボノでノケモノになった話~②そしてノケモノへ…

大学4年〜社会人3年目ぐらいの頃、プロボノ的な団体に参加していたことがある。その失敗談と、10年以上経った今だからわかる教訓を書いてみようと思う。

前回のあらすじ
知り合いのNさんからプロボノ団体に誘われた。団体は、マラソン大会を開催して得た収益を途上国の子どものために寄付している。私はシゴデキなメンバーや特別感のある活動に魅力を感じ加入することを決めた。


1.スキルの壁

joinしてからしばらくは、メンバーの熱気に触れつつ自分はお客様的な感覚で楽しく過ごせた。

が、大会の準備が本格化すると壁にぶつかった。

できることがない。

ここで改めて、プロボノの定義を振り返ってみよう。

職業上のスキルや経験を生かして取り組む社会貢献活動のこと

たしかにメンバーはそれぞれのスキルを活かし自律的に動いていた。
本職が看護師の人は、体調不良者が出た時の対応マニュアルづくり。イラレを使える人は、マラソンコースのMAPづくり。会社経営者の人は、コネクションを活かして仮設トイレやらテントやらを借りてくる算段をつけていた。

一方、社会人1年目の私に職業上のスキルなど何もない。

スキルがなくても若さがあるじゃん!若者の感覚でブログとか書いてPRしてよ!―とNさんは勧めてくれた。

しかし、私は拒否してしまった。

文章を書くのは好きだし、当時プライベートでブログをやっていて多少固定の読者もいた。それなのに気が進まなかったのはなぜか。


2.興味の壁

正直なところ、プロボノの活動内容に全く興味を持てなかったのだ。

チャリティ?途上国の子ども?
自分が苦しさでいっぱいなのに、どうして見ず知らずの人に手を差し伸べなきゃいけないの。

「自分の苦しさ」とは大学時代からのアイデンティティクライシスで、今思うと笑っちゃうほどどうでもいいけど、当時は真剣に悩んでいた。自分の悩みで精一杯で、より困難な人の存在を想像することすらできなかったのだ。

そして、マラソンにも興味がなかった。
スポーツは好きだけど球技が中心で、苦しいだけの(ように思える)マラソンに魅力を感じなかった。

スキルがない。興味もない。だからやることもない。3ない状態だ。


3.「嫌なのに続ける」矛盾

…という感じで全てに後ろ向きだったのに、私はプロボノに参加し続けた。

なぜって?
「他の人と違う活動をしている私」というステータスがほしかったから。大学の4年間で失ってしまったアイデンティティを取り戻したかったから。
そんな自我への渇望から、なんとかプロボノで輝きたい!という思いだけはあった。

でも、活動自体にヤル気はないので、周りに多種多様な迷惑をかけた。
手伝うと言った大会準備作業をドタキャンしたことは100回ぐらいある。あと、経費の管理(小口現金の出し入れを担当していた)が適当だったり、まちがった資料をホームページに載せてしまったり。

ロクな働きをしていない罪悪感(というか皆から責められるんじゃないかというクソ自己愛)があるので、週1で行う定例ミーティングではめちゃくちゃ及び腰だった。
オドオドしてる人って嫌われるよね。みんな心の中では舌打ちしてただろうけど、優しいのであからさまに排除はせず、腫れ物を触るように接してきた。それがわかるので余計につらい。

ちなみに、私と同時期に加入した20代の女性はすんなり活動に馴染み、斬新なアイディアを出したりして戦力になっていた。
そのことも私の気持ちを重くした。

居づらさに耐えかね、飲みの席で酔いにまかせて涙を流したこともあった。
「皆が活躍しているのに自分は何をすればいいのかわからない」「わからないのに誰も教えてくれない」等々。
(今思うと「ドタキャン常習犯が何を言う」「わからないなら聞けや」「居づらいなら辞めろや」でしかない。)


4.そしてノケモノへ

そんなことが続き、ついに団体の代表の人に叱られてしまった。
「私達はあなたのお世話をするために活動してるんじゃない」「出来ることがないならせめて明るく前向きでいろ」と。

それを機に、他のメンバーもフォローしてくれることがなくなった。ミーティングに出ても誰にも声をかけられず、仕事も割り振られない。ノケモノ状態になった。

私を団体に引き込んだNさんにもあからさまに避けられるようになった。そりゃ彼にしてみれば、自分が紹介した若手が超絶使えない自過剰女だったら周りに顔向けできず嫌な思いもしてただろう。申し訳ない。
そんなことに思いも及ばない当時の私は、Nさんに泣いて縋って相談に乗ってもらったりもしていた…(恥ずかしすぎて死にたい)

結局ノケモノ状態のまま2,3年ぐらいは籍を置いて(2,3年もいたんかい!というツッコミは置いといて)、本業の仕事が忙しくなったこともあり最終的にはなんとなくフェードアウトした。


5.当時の私に言いたいこと

当時を振り返ると、つべこべ言わずもっと気軽にいろいろやってみればよかったのにと思う。

ブログだって、興味なくても書いてみればよかったじゃん。書いてるうちに面白くなってくることだってあるかもしれないよ。
仕事だって、最初は嫌々やってても慣れると面白味がわかるなんてことがいくらでもあるんだから、プロボノもそうじゃない?

…と、今なら当時の私にそう言うけど、当時の私は就職したばかり。その「仕事だって…」の部分がわからなかったんだよね。わからなくて、逃げ続けてしまった。

未熟な人間が自分探しのためにハイスペ集団に紛れ込み、さんざん足を引っ張った末に自滅したということ。本当に申し訳なかった。参加すべきじゃなかった。


6.しいて収獲を挙げるなら

プロボノ活動にいい思い出はないけど、しいて収獲を挙げるなら、自分の志向を自覚することはできたかなと思う。

仕事しながらプロボノをするのは、かなり大変だった。深夜や休日にミーティングやいろんな作業をしなきゃいけない。その分、成果が出た時の喜びは大きい。
プロボノをやってる人は、その大きな喜びのためなら日々の苦労の積み重ねを厭わない人達だ。

対して私は、そういう苦労をしてまで大きな喜びを得たくない。夜は家で自炊して缶チューハイ片手にのんびりしたいし、休日は彼氏とデートすれば十分幸せなのだった。

プロボノメンバーは憧れの存在だったが、団体を辞めて関係が切れた時はホッとしたのを覚えている。やっぱり合わなかった、タイプが違ったのだろう。

周りに迷惑をかけたのはもちろんだけど、自分にも無駄な苦労をさせたよ。もっと自分の心の声を聞けばよかった。

今、#挑戦してよかった ってお題企画で募集かかってるけど、これは逆に挑戦しなければよかった案件。でも、そこで自分を知れたことだけはよかったかもしれない。

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