少ない暮らしに憧れて
「ミニマリスト」という言葉を初めて聞いたのは、10年ほど前のことだった。当時、シンプルな生活や少ないものに囲まれた暮らしに強く憧れた。余計なものを手放し、本当に大切なものだけを残す――そんな生き方に心を惹かれた。しかし、何かと理由をつけて実践に踏み切ることはできなかった。物を捨てようと決意しても、その意志は長続きせず、結局は元通りの状態に戻ってしまう。リバウンドの繰り返しだ。マキシマリストほどの多さではないにしても、我が家には決して少ないとは言えない量のものが溢れている。
ミニマリストという言葉に初めて出会ったとき、私はまだ学生で実家暮らしをしていた。実家だから出来ないと理由をつけつつも、その気になればできるだろうと簡単なことのように思っていた。しかし、社会人となり、自立して家庭を持つようになると、物を減らすハードルが一層高く感じられるようになった。家族の所有物や生活必需品が増える中で、自分の理想とするシンプルな暮らしは、ますます遠のいていくように思えた。
しかし、最近になって、ようやく気づいたことがある。自分のものを減らすこと自体は、実はそこまでハードルが高いことではない。これは単なる意思の問題だということに。何が本当に必要なのか、何を大切にしたいのかをしっかり見極め、行動に移すことができれば、少ないものでも十分に豊かな暮らしができるのではないかと。
私は今、30手前。これから家族が増える予定もある。これまでの消費生活に少し疲れてきたし、周りの目や無数の情報に惑わされることにも疲れている。だからこそ、ここで改めて少ない暮らし、こだわらない暮らしを目指してみようと思う。ものの量を減らすことだけでなく、生き方そのものをシンプルにする。持ち物を減らすことで心のスペースが広がり、本当に大切なことに集中できるようになるだろう。少ない暮らしがもたらす豊かさを、今度こそ手に入れたい。
この新たな挑戦が、自分にとってどれほどの変化をもたらすのかはわからないけど、一歩踏み出してみたいと思う。たくさんのものに囲まれた生活から、少ないものでも充実した暮らしへ。少ない暮らしへの憧れを、今度こそ現実にしていくつもりだ。