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【あつ森】World's End Happy Birthday【原作版 第4章 ワールズエンド】

あつ森ファンタジームービー『春はどこへ行った?』の続編『World's End Happy Birthday〜君に贈る物語〜』の原作版です。

魔力を得た僕たちは、
蘇った王の亡霊と戦う。
たとえぼろぼろになっても、
前世の因縁を断ち切って、
君といる世界を守るんだ!

※動画版とは一部展開、時系列が異なります。


第4章 ワールズエンド


「力を貸すって…どうやって?
そもそもどうして、雪は魔法が使えるの?」

いくら前世が魔術師だったからとはいえ、遥か昔に魔法が消えた世界で魔法が使えるのは疑問だった。

「2人とも、手を出して。」

雪は僕たちの手に、そっと綺麗な石を載せてきた。中でちらちらと光が蠢いているみたいで不思議だ。

光の石はぱあっと、
僕のはふんわりと光った。

「魔石だ。」

「は!?魔石!?これ、本物!?」
光の声が裏返っている。

「世界から魔法は失われてしまったが、
凄まじい技術力でこの中に封じられている。
古の工房で作られた特別なものだ。」

雪が手に持つ魔石も輝きを放っている。


「光、持ってるだろ、魔法の杖。」

「えっ…そんなことまで!?今日保存用のケース買いに来たから、2本持ってるけど…。」

「こうなるのも、夢で見たから。
素質がある者なら、魔法の杖を媒介に、魔石から魔力を引き出せる。

2人に魔石が反応した。限定的だけど、魔法が使えるはずだ。」

「えーーっ!?マジで魔法使えるの!?
やりたい!!」

光がめちゃめちゃ喜んでる。 

僕も覚悟を決めた。雪がここまで頑張ってくれたんだから。

「…やるしかないね。」


「ありがとう。」

雪は微笑むと、氷の杖を頭の上に翳して唱えた。
「ローブよ、2人を呪いから護れ!」


「わっ!?」

杖から溢れるあたたかな光が僕たちを包んだ。
光に目が眩んで、僕は思わず目を閉じていた。

もう一度目を開けると、

光は紫色の生地に金色の刺繍のローブ、

僕は茶色の生地に真紅の刺繍のローブに身を包んでいた。

「やっったあ!!超カッコいい!!」


憧れの魔術師姿になれたのが嬉しすぎるのか、光はくるりとローブを翻した。

僕は前世であまり魔法を使わなかったから、この姿、ちょっと照れちゃうな…。

雪の作戦はこうだった。



「5回だ。杖で封印の楔(くさび)を5回打ち込めば封印できる。

僕が奴を引きつけながら楔を打ち込むから、その隙に後ろからも打ち込んでくれ。

魔石はいくつかあるけれど、魔力を使い切ると壊れてしまうから気をつけて。」

誰にも見つからず、周囲に被害が及ばないよう、雪が結界を張った。

日が落ちて、辺りはどんどん暗くなっていく。

楔の打ち方も教えてもらったし、少しだけ練習できたけど、どうか上手くいきますように…。

僕たちは位置について、その時を待った。

空から煌めく星が降り始めた。

黒い鳥籠が歪み、弾けた。

中から禍々しい黒い影がどろどろと湧き上がってくる…。


この世のものとは思えない、おどろおどろしい声が聞こえた。

「ユルサ…ナイ…スノウ…コワス…。」

杖を構え、相対する雪の表情は、激怒していた。

白色の髪が星を散りばめたように煌めき、
アイスグリーンの瞳が怒りに燃え上がっている。


「シリウスの氷よ!亡霊を穿て!!」

凍えた風が渦巻き、亡霊からの一撃も許さないうちに、雪は大きな輝く楔を打ち込んだ。

亡霊の姿がゆらめき、もがいている。

「今だ!!楔を放て!」
雪が僕たちに向かって叫ぶ。


「レグルスの雷よ!亡霊を貫け!!」

隣で光が亡霊の左側を目がけて、閃光とともに勢いよく楔を放った。輝く楔が、絶妙なコントロールで命中する。


「アークトゥルスの火よ!亡霊を祓え!!」

続けて僕も杖を思いきり振り翳すと、杖から紅い火が燃え上がり、光る楔を創り上げた。

狙いを定めて亡霊に向かって放つ!!

僕の楔は亡霊の右側にぐさりと突き刺さった。

なんだか少し小さかった気がするけど…ちゃんと当たってよかった…。

やった!あっという間に3回だ!!


「ガアァアァア……!」

氷と雷と火の魔法に、亡霊はもがき苦しんでいたが、みるみるうちに闇のような体から、大きな鋭い爪を持った腕が現れた。

次の瞬間、空を切り裂く斬撃が僕たちに襲いかかってきた。

なんとか避けながら楔を打ち込もうとするけれど、バランスを崩してうまく当たらない…。

呪いの力が強まっている…。

1番辛そうなのは正面の雪だった。
全方位の斬撃を魔法で相殺しつつ、楔を放っていた。

残り2回…。
魔石が割れ、残りが少なくなっていく。

その時、全方位に向かっていた斬撃が、全て雪の方に向かって行くのが見えた。
雪が危ない…!!

「させるか!!いっけえ!!」
向こうで光が、足下の斬撃をひらりとかわして、思いきり杖を振りかぶってジャンプするのが見えた。

稲妻のような閃光が走る…けれど、雷撃は亡霊の頭上をかすめて突き抜けていった。

その途端、亡霊の闇のような体の中から、2体の銀色の甲冑が現れた。

あれって…!スノウの記憶で見た、かつて玉座を守っていた兵士!?

「アルジヲ…マモル…」
光に向かって突進していく。

「光!!危ない!!」

バーン!という破裂音とともに、光の身体が宙を舞い、光の杖と持っていた魔石が砕け散るのが見えた。

「光!」

「うう…。」

光はかなり遠くまで吹き飛ばされていた。
植え込みがクッションになって、なんとか無事みたいだ。

僕が雪を守らなきゃ!!

「雪!!」

僕は走って雪の正面にダイブすると、必死に杖を振り、頭に浮かんだ呪文を唱えた。

「アンタレスの炎よ!闇を焼き尽くせ!!」


杖の先から朱い炎がごおっと吹き出し、全ての斬撃を瞬く間に薙ぎ払った。

その瞬間、僕の杖も魔石も砕け散った。

「痛った………」

僕は反動で地面に思い切り叩きつけられた。

感じたことのない鈍い痛みで、一瞬視界が真っ白になった…。

ローブを着ていなかったらまずかったかも…。

亡霊は眩い炎に怯んでいるようだ。


「灯火!!」

雪が助け起こしてくれた。

傷だらけで、今にも泣きそうな顔をしている。

雪のそんな顔、小さい頃にしか見たことないよ…。


「灯火、前世で君が闇の中から僕を救ってくれたから、僕は今ここに居られるんだ…。

今度は絶対、僕が君を助ける…!!」

澄んだ声が震えていた。

雪の握る氷の杖が青白い輝きを増す。
雪の眼光が、研ぎ澄まされた刃のように鋭くなった。


「目覚めよ!氷の杖!!!
4本目の楔、必ず仕留める!!」

雪の周りの地面から、冷気とともに鋭い氷の棘が空に伸びていく。幾重にも重なって透き通って、氷の華が咲いているみたいだ…。

「シリウスの氷の刃よ!!呪いを打ち砕け!!!」

轟音とともに氷の華が亡霊の周りで咲き誇り、花弁が鋭い氷の刃となって亡霊を切り裂いた。

同時に雪が4本目の楔を打ち込んでいた。


「ガアアアアアア…!」

雪が持つ最後の魔石にひびが入っている。雪の魔力も限界が近い…。

杖を持ったままなんとか立っているけれど、とても苦しそうだ。

「雪!!灯火!!俺は失敗しちゃったけど…!最後は額を狙え!!!」

遠くで必死に光が叫ぶのが聞こえた。

もしかして…王の亡霊を封印した、前世のギルベルトの記憶…?

僕はふらふらと立ち上がると、雪が握りしめる杖に手を添えた。

「灯火…?」

元々は同じひとりの魔術師だった、僕の魂のかたわれ。

前世の僕を生み出してくれたのは、
トーカという名前をつけてくれたのは君だった。

僕の方こそ君に感謝しているんだから。


「僕たちならできるよ!!」

あたたかな光が雪の杖に灯った。

僕たちはお互いの目を見て頷くと、王の亡霊の額に狙いを定めた。


「封印の楔よ!星のように燃え上がれ!!!」

2人で叫ぶと、杖から吹き出した大きな楔が王の亡霊の額を貫き、燃え上がった。

星の炎が宝石のように煌めいて、結界の中を鮮やかに燃やし尽くしていく…まるで世界の終わりみたいだ。

その瞬間、最後の魔石がぱあんと割れた。

すると、五つの楔が光の線で繋がり、星の形になった。

「ガアァアァア……!!!」
亡霊が断末魔の叫び声をあげて小さくなっていく。

やった…終わった…。


力を使い果たした僕たちは、ばったりと地面に崩れ落ちた。

その時だった。

「灯火!!」

どうして…董子の声が?

第4章 ワールズエンド おわり
最終章 きみが好き へつづく。


第4章 雪の前世の回想シーンのおはなしはこちらです✨


🌟読んでいただきありがとうございます🥰
灯火たちの魔法は、一等星の名前から名付けました✨
灯火は2種類使っていますが、それぞれに星に因んだ違う意味があります🔥✨

次回いよいよ最終章です!灯火は自分の想いを董子に伝えられるのでしょうか?お楽しみに🌸

🌟ワドハピYouTube版はこちらです✨

🌟制作パートナー ゆりーなちゃん

🌟撮影&島提供協力 fumikaちゃん ちゅーぺっ島

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