旅の話②:廃ホテルのモモ
2年前に九州をブラブラしている時に、つぶれたホテルの建物に住み着いて犬と暮らしているおばちゃんがいるという話を聞いた。
長崎県の小浜温泉や雲仙を移動していた時、ヒッチハイクで乗せてもらったおっちゃんから聞いた話だ。
その日は、長崎の諫早市から島原の方にヒッチハイクで移動した。そのおっちゃんには諫早で乗せてもらい小浜温泉を経由して雲仙の地獄まで連れて行ってもらった。途中、小浜の食堂に寄りちゃんぽんを食わせてもらった。
車に乗せてもらい雲仙のじゃがいも畑や、島原半島の海を見ながら移動した。景色は圧巻だ。わたしが野宿で旅をしていると言ったからか、この辺りのつぶれた旅館かホテルに住みついているおばちゃんがいるという話を聞くことになった。
廃業した旅館かホテルの建物に住みついて、さらに犬を数匹飼っているという。地域の人たちから食料をもらうこともあるという。水はどこかの民家の水道を使わせてもらっているとか。仕事はしているのか、現金収入はあるのか不明だが、食い物と住むところはちゃんと確保できているそうだ。地域の人とうまく関係をもち適度な支援を受けつつ暮らしが成り立っているようである。
この話を聞いて、これはまるでミヒャエル・エンデの小説のモモだと思った。その小説はモモという少女が街に突然現れて、古びた闘技場に住みついて物語が始まる。モモはただ居るだけなのに街の人たちの心を潤す存在になっているという話。しかし、この話は小説ではなく現実だ。こんなことがあるのだと驚いてしまった。
小浜温泉にはこれまで2回立ち寄ったことがあるが、いつも通り過ぎるだけで終わっている。今度は滞在してこのおばちゃんについて地域で話を聞きながら探っていけないものかなとぼんやり思っている。単純に会ってみて話してみたいし、あわよくば自分も泊めてもらえないかなと。会わない方がいいのかもしれないが、それはまたその時に判断すればいい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?