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終わりはその夜、切なく響く。【#YOASOBI初ライブ】


哀しいことばを、明るく歌う人だなと思った。


地獄のような就活が終わり、ベッドの上で朝方までだらだらと過ごしては解放感に浸っていた。そんなときに偶然Instagramで『夜に駆ける』を聴いたのが、YOASOBIとの出会いだった。

当時のストーリーズ。7月だったらしい。

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MV、THE HOME TAKE、カバーなど様々な動画を見て、『夜に駆ける』の虜になっていった。曲をすべてダウンロードすると、当時の最新曲だった『たぶん』が、『夜に駆ける』を超えるくらいのお気に入りになった。


しかし、熱狂的なファンというわけではなかった。公式SNSは見ておらず、『夜に駆ける』の原作小説『タナトスの誘惑』以外は小説も読んでいなかった。観ていないMVもある気がする。1st EP『THE BOOK』は発売後に知り、正直、サブスクですべて聴ける上でわざわざ初回盤を買うほどではないかなと思った。(見てみれば迷う間も無く売り切れていたのだが。)私にとってのYOASOBIは、それぐらいの距離感で楽しむアーティストだったのだ。


距離感がすこし変わったきっかけが、『アンコール』だ。

明日世界は終わるんだって
君にはもう会えないんだって
またいつかって手を振ったって
叶わないんだよ 仕方ないね

「世界は終わる」「もう会えない」「叶わない」と哀しい情景を連想させる歌詞に反して、ikuraさんの声で奏でられる「仕方ないね」ということばには、穏やかさが感じられた。

未来を諦めて失望しているのではない。あたたかな眼差しで現実を受け入れ、それならば、と、ほほえみ合いながら好きな音を鳴らす。そんなふたりが見えた。その不思議な世界観に、ぐっと惹きこまれる。

もしも世界が終わらなくって
明日がやってきたなら
ねえ、その時は二人一緒に
なんて

それでも、やっぱり。
明日はこないと知りながら、心のどこかで「君」との明日を思い描く。必死に懇願するのではなく、えへへ、と照れ笑いでもしていそうな軽やかさで音が終わった瞬間、胸が締めつけられるような切なさを感じた。曲調にも歌声にも、流れてくるピアノの旋律にも明るさがあることによって、最後のことばがより一層、儚い本心を思わせて苦しくなった。



この曲をきっかけにYOASOBIをもっと知りたくなった。Twitterをフォローするとまるで待ち受けていたかのように飛び込んできたのが、YOASOBIの1st LIVE “KEEP OUT THEATER”開催のお知らせだった。こういうときオタク気質の人間の行動力は頼もしい。気づけば受信ボックスに「ご購入ありがとうございました」の文字。一度きりの初ライブを目の前にしてチケットを買わない理由なんて、一体どこにあるのか。ちゃっかりファンクラブにも入った。


長くなってしまったけれど私はこうして、2021年2月14日を迎えたのである。

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YOASOBIにはクールな印象を抱いていた。しかし雑誌の記事や音楽番組でのトークで、想像以上に“柔らかい”人たちなのだと知った。文章や話し方からは人間味や内に秘める熱さが伝わってきて、いい意味で同世代としての親しみやすさがある。とはいえ、もちろん、すごい人たちなのだけれど。

緊張した面持ちでステージへと登っていくAyaseさんとikuraさんの様子や、バンドメンバーと弾けるように笑いながら円陣を組む雰囲気からも、その“柔らかさ”はうかがえた。トップアーティストの舞台裏を見せていただいている…!というより、仲間の初舞台を見守っているような感覚だった。


音源と違うタイミングの息継ぎ。

遠くから電車の音が聞こえる臨場感。

視聴者のコメントと共に進むMC。

一瞬で物語の主人公になるikuraさんの瞳。

Ayaseさんやバンドメンバーが紡ぐ『群青』のコーラス。


ああ、ライブだ。


伝わってくる緊張感や息づかい、全員の生き生きとした表情が、数百キロ離れた場所から「今を共有している」と感じさせてくれた。


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私がもっとも心を動かされたのは、ライブ全体の世界観だ。

新宿のミラノ座跡地。実際の建設現場をそのままライブ会場にしたという。夜の工事現場に侵入して自分たちの音楽を響かせる、ユニット名「YOASOBI(夜遊び)」が忠実に表現されたコンセプトに鳥肌がたった。“KEEP OUT THEATER”ってそういうことか…! ひとりで声に出して震えた。感動した。

ときどき入る外からのアングルがとてもいい。リアルタイムで走っている電車の奥に、異質な明るさを放つ空間が見える。


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もしかしたら私は、YOASOBIが描く“終わり”に惹かれているのかもしれない。

『夜に駆ける』でYOASOBIを知って、『たぶん』がお気に入りになり、『アンコール』を聴いて興味が一歩前に出た。個人的に思い入れの深いこの3曲は、“終わり”を描いている点で共通すると感じる。

それは KEEP OUT THEATER の世界観も同じだった。

跡地、つまり、“終わった”場所。そして一度限りのライブ会場も、いずれは劇場となり、姿を消す。スタッフさんのお名前を壁や階段などに残す演出は、イタズラな落書きを想起させる「夜遊び」と、数年後にはその文字も含めすべてがなくなってしまう儚さや“終わり”を両方表しているように思えて、心を大きく揺さぶった。

いつか消えてしまう場所に大事な初ライブのサインを残す二人。刹那的な輝きがなんて似合う人たちなのだろう。その背中を見ながら、切なさで泣きそうになった。


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“終わり”は哀しい。

しかしYOASOBIはそれを、真正面から表現しない。哀しく暗い“終わり”は彼らによって、夢のような、忘れられない瞬間に昇華される。そうすることで“終わり”を目の前にした今の煌めきが、何倍にも重みと儚さを増すと知りながら。

それは大好きな『アンコール』と通じる、私にとって最大の魅力だった。

彼らが創り、歩き、そして終わらせていく世界の最初の瞬間を見届けることができて、心から嬉しく思う。


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言いたいことの半分も表せていないようで悔しい!

乾杯の前に飲み物口に含んじゃうikuraちゃん天然すぎない?とか、ベースのやまもとひかるさんの美しさに惚れたとか、ざくろさんが『群青』で飛び跳ねながらコーラスしている姿に泣きそうになったとか、見るたびAyaseさんのお人柄のかっこよさを痛感するのちょっとしんどい困るとか、全体としてYOASOBIメンバーの雰囲気があたたかくて素敵なチームだなって感じたとか、もうほんとに、あのときライブの開催を知れたことを幸せに思います。即買いした私、グッジョブ。

これから各曲の読んでいなかった原作小説読む。まだ購入可能だったら『THE BOOK』も買いたいな。本当に、貴重で幸せな体験でした。

ありがとうございました!

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