対話と協働が当たり前の学級コミュニティってどう作るの?
5年前、横浜で初任者として教職についたときに書いた僕の自由研究のテーマ。5年たった今は、研究主任としてクラスだけでなくて、学校全体でこの課題に取り組んでいる。クラスや職員室がよりよいコミュニティになるように進んでいきたい。以下は5年前の自由研究を少し手直ししたもの。
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1/そもそもコミュニティって何だろう?
原義は、ラテン語のコミュニース。コム(一緒に)+ミュニース(任務)
原義から考えると、一緒に任務にあたる集まり。今の組織に似てると感じる。G・ヒラリーの調査によると1955年段階でコミュニティの定義は94通りあったが、その定義に共通するのは「人々」と「場所」ということだけだったという。
現在も、地縁型、テーマ型、共益型、社縁型など様々あるけれど、コミュニティを原義から捉えて、よりよい風に解釈すると「高い熱量を持った人同士の化学反応を加速させていく触媒」と捉えることもできる。
2/学級をコミュニティと捉えたら・・・
社会と学校はよく対比されるので、ここでも対比してみようと思う。社会を広く見渡すとプロジェクトでの働き方が増えてきているので、社会のコミュニティの一例をテーマ型のコミュニティと設定する。
学級コミュニティの特徴としては、教育システムの中で同年代の子ども達が集まり、一定期間、安全を担保された閉鎖的なコミュニティで学ぶことが挙げられる。
↑5年前の定義になるので、もう少し心理的安全やエンゲージを生み出す同期なども比較すると面白いと思う。
3/学級の中で対話が生まれる条件
当時、5年生を担任していて子どもたち同士の喧嘩の仲裁をしたことがある。そのときに意識したのが写真のリフレクションモデルに基づく質問を用いることだ。
この順序を経ることで、子どもたち同士の対話が深まったように感じた。実際に、当事者の子どもたちの口からは「中立の立場で大人が、場にいてくれて安心した。」「順番に話したことで、落ち着いて話せた。」などを最後には伝えてくれた。その当時の状況を振り返ると以下の条件が対話を産んだのではないかと考えられる。
・場(円座)を設定したこと
・教師が傾聴を意識したことで、場に安心が生まれたこと
・質問をリフレクションのモデルに沿って質問をした→特に、質問の順序が機能した
・閉鎖的なコミュニティだからこそ、解決志向が働いた(解決しないと当事者たちにとっては常に居心地の悪い場になる)
ここでは、閉鎖的だからこそ働いた条件があるので、閉鎖的であるという点を強みに捉えられないかを考えたい。
4/閉鎖的なコミュニティを強みと捉えることはできないのか?
① 信頼性の構築
長期的に関わるということは、関係性を築くきっかけ(量・機会)は多くある。それらを活かしてお互いへの信頼を作り出すことができれば、関係性の深いコミュニティになる可能性がある。
また、閉鎖的ということは外部との交流から生まれるコミュニケーション上の疲れは軽減されそのことによって安心感を生むことができる。
では、信頼はどうやったら生まれるのか?
1つは、慣れ親しみ
生まれ育った場所や一緒に過ごした場所など同じ生活をすること。これは、特定の個人(◯◯さん)への信頼を生む。これを特定化信頼という。
2つめは、ネットワーク
学級活動を経ることで見せる、クラスのメンバーの別の顔をクローズアップする。そうすることで、異質な他者が学級の中に現れる。それらをこれまでの学級活動の中で培ってきた関係性を踏まえて新たに受け入れることができれば、信頼を生む。これを一般的信頼、ネットワーク的信頼と呼ぶ。
2つのことから考えると、閉鎖的コミュニティでは内部での交流機会とその質を増やし高めていくことでお互いの信頼性を高めて、強みにすることができる。
5/コミュニティづくりの原則
『コミュニティ オブ プラクティス』(2002)ウェンガーらの研究から抜粋すると・・・
・進化を前提とした設計を行う
教師主導の構成的なコミュニティづくりを徐々に子どもたち主体の非構成なコミュニティづくりへ移行させることを想定してプロセスを設計する →一人ひとりの成長を視野に入れて学級の仕組みづくりをする
・内部と外部の視点を取り入れる
他の教師や保護者の目線から今のクラスへのフィードバックをもらう
・様々なレベルへの参加を奨励する
その子どもの今の状態や気持ち、あり方を大切にしながらの参加を奨励する
・公と私それぞれのコミュニティ空間を作る
授業(公)と休み時間・放課後(私)のどちらでも子どもたちが交流できるようにしかけを作る
※公共性
活動の方向性や内容が一部の人によって決められ、行動を強いられるようになるとそのコミュニティの威力は衰退する。例.)「◯◯するな」「ルールに従え」
自由で闊達な公共性を保証することは集団の存続に関わる大きな課題これを失ってしまえば集団への参加が個人の自由な判断ではなく、集団からの強制になってしまう
・価値に焦点を当てる
このコミュニティへ参加することの価値を子どもたちが実感できるようにする
・親近感と刺激とを組み合わせる
安心する学級であると同時に、普段は見せない教師の一面や他の児童の一面を取り上げる
・コミュニティのリズムを生み出す
定期的な活動に加えて、時にはゆったりできる活動や集中できる活動を組み合わせる
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上記が自由研究であるが、今読み返しても、自分のクラス作りで大切にしていることとつながる。あの当時、少しだけど自分なりに調べて、知識を構成したことが今の自分のクラスづくりの知恵やtipsになっている。
これから、もっともっともっと探究していきたい。
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