『山粧う』〜春馬さんの笑顔薬
私にとっていささかショッキングなあのニュースのすぐ後、前から予定していた山歩きをしてきた。
紅葉狩りも今年はもう最後だということで10数年ぶりに行った山は、過去の記憶など全くない程新鮮だった。
かなり小さくなっていた心の奥底のモヤモヤは一週間前よりは確実に大きかったから、純粋に自然に触れて気持ちを切り替えたかった。
狭い山道は車酔いしやすい為、夫に替わり私が運転した。隣に乗ってガイドをしてくれるのは有難いけれど、カーブミラーを見て対向車が来ていると「あッ!」とか「来てるぞッ!」とか不用意に小さく叫ぶため、その声にびっくりする。「ちゃんと見てるから言わなくてもいい」と言い、お陰様で運転に集中できた。
自宅から目的地である池への登り口まで、車で2時間、上に行くにつれ色づいている山の木々は葉を落とし始めていた。
しまった!遅かったかしら…
登り口から池まで約1時間。
林道コースを往路に選んだが、日頃の運動不足には堪えるなあ。15分もすると息が上がり、話するのも辛く無言になる。足もとの木の根や岩に気を取られ、2回も木の枝に頭をぶつけた。帽子を目深に被り下ばっかり見ていたから…だいぶ痛かったけど、なんでもないふりして、また歩く。
沢の音は心地よく、カウベルの音が響く。すれ違う人との挨拶も山ならでは。
笑顔で挨拶を交わしながら、ふと春馬さんを想った。「こんにちわ」という春馬さんの笑顔を想像し、それを考えてる私は笑顔になる。やっぱり笑顔はみんなを元気にする誰にでもできる一番手っ取り早い方法なんだ。
池に到着して、澄んだ空気を思い切り吸い込む。
雑踏の聴こえない森の中。池の水は空よりも青。
まるで藤城清治さんの影絵のよう。
散り始めてはいたものの、美しい景色は心をうるおしてくれた。
歩いて1時間で、得られる贅沢な場所。
私に必要だった時間なんだろうな。
年配の方々は、辺りのベンチで休憩兼昼食のついでに一盃やっておられた!
う、羨ましい〜。
復路は、階段ルートを使いまた約1時間。ほぼほぼ一段一段が高い急階段を、一歩いっぽ確実に降りていく。そうしなければ、漫画にあるような高速回転で脚だけ空回りして転げ落ちそうな感じなのだ。
半ばを過ぎたら、膝から下に異変が…
あれ?脚が笑っている?
地面に脚をつくと、ブルブル震える。
この間何かで涸沢カールのテントの映像をみて、また行きたいなあ。なんて思ったけど、とても今の状態では厳しそうだ。
運動しないとね…
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
翌日から2、3日下半身が強度の筋肉痛でロボットみたいなあるき方しかできなかった。
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そして今、あのショッキングなニュースにもこの時の記憶薬が効いてきていると思う。
山歩きの記憶薬というよりも『春馬さんの笑顔薬』
なのかも。
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