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我が国は動物愛護後進国なのか
我が国では、平成24 年、「動物の愛護及び管理に関する法律」(昭和48 年律第105 号)が一部改正され、都道府県知事等は、犬猫の殺処分がなくなることを目指して、引き取った犬猫の飼い主斡旋等に努めるとする規定(第35 条第4 項)が盛り込まれました。
先日、「日本に生まれなければよかった。無責任が生んだ1年間の殺処分の数。日本82,902頭、ドイツ0頭。」というポスターがSNS上で話題となっていました。そこで、我が国における動物保護施設での引き取り数と殺処分数の推移についてみてみたいと思います。
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環境省自然環境局 総務課 動物愛護管理室の犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況1)を基に、引き取り数と殺処分数の推移および引き取り数の内殺処分に至ってしまった犬の割合(殺処分率)を求めてみました。このグラフから分かることは、①動物保護施設へ持ち込まれる犬の数、②殺処分される犬の数、③動物保護施設へ持ち込まれて殺処分される犬の割合です。なお、動物保護施設に持ち込まれたが殺処分されなかった犬については、返還・譲渡となっております。
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図2をみると、動物保護施設に持ち込まれた犬の数は2004年に18.1万頭でしたが、2022年には2.2万頭に減少しています。同様に動物保護施設に持ち込まれた犬の殺処分数は2004年に15.6万頭でしたが、2022年には0.2万頭に減少しています。このように、動物保護施設に持ち込まれる犬の数および犬の殺処分数の絶対数は年々減少していることが分かります。
図3をみると、動物保護施設に持ち込まれた犬の殺処分率は2004年は86.0%でしたが、2022年は10.9%に減少しています。このことから、以前は、動物保護施設に持ち込まれた犬=殺処分でしたが、近年では約9割が返還・譲渡されています。
ドイツでは、各地の動物保護協会(民間団体)が運営する全国500 か所以上の動物保護施設「ティアハイム」(Tierheim)が、飼い主斡旋等を行っています。施設の犬猫を引き取って飼い主となるには飼育環境等の審査があり、安易な譲渡を防ぐ仕組みがあります。そして、ドイツ動物保護連盟は、「ティアハイム」の運営指針において、基本的に殺処分してはならないと定めています。例外的に、治る見込みのない病気やけがで苦しむ動物については、動物福祉の観点からむしろ殺処分が必須であるとしており、こうした犬猫に対する殺処分は行われているようです2)。
ここまで聞くと、例外的な殺処分を除いて殺処分0頭なのかと思うかもしれませんが、ドイツ連邦狩猟法では、狩猟動物を保護する目的で野良犬・猫の駆除を認めており、狩猟者は、合法的に野良犬・猫を殺すことができます。そしてその数は、推定年間猫40 万頭、犬6 万5 千頭に達するとされています3)。
前述のポスターが指摘するほど、日本は動物愛護の後進国ではなく、またドイツは殺処分の無い素晴らしい国ではないということがお分かりいただけたかと思います。ただ、ドイツのティアハイムの施設の犬猫を引き取って飼い主となるための飼育環境等の審査や基本的に殺処分してはならないといった見習うべき部分はあるかと思います。
そしてポスターの最後の「一つの命、あなたの責任で。動物愛護先進国に生まれ変わろう。」といった言葉はまさにその通りで、現状多くの行政や関係者の努力により殺処分数および殺処分率は減少しているものの依然殺処分が行われているのも事実であり、これを0にするという目標を達成するために各々ができることを考えることは重要だと思われます。
1)動物愛護管理室の犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況, 2024.1. https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html
2) 諸外国における犬猫殺処分をめぐる状況, 2024.1. https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8748098_po_0830.pdf?contentNo=1
3) PETA Deutschland, “Haustier-Abschuss durch Jäger,” 2012.3. http://www.peta.de/haustierabschuss
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