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すゞめ

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大正は四十七年で終わり、昭咊《しょうわ》になって随分経った頃。コギノ エダさんと私、オオタ メルはお友達でした。 大戦がなかった架空の日本のある港町で、夢を描いた少女の物語。 小…
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#散文

すゞめ-5

 その日のエダさんを見て以来、わたくしは何度か、水を張ったばかりの水田で、自分の姿を映して見たことがあります。勉強を頑張り、エダさんに憧れ、都会に憧れ始めていたわたくしは、自分の背にも、エダさんのような翼がないかと思ったのです。  中学のスカートの裾を持って、水田に背中を映してみるのです。  しかし、わたくしの背には、エダさんのような翼はありませんでした。わたくしの中にある憧れの力は、せいぜい雀程度の翼にしかなりませんでした。  失望して見つめた水田に映った少女の姿は、