FaBにおける環境と使用デッキの選択について
先日のNationalsも終わり、少し落ち着いたので何か記事を書いておきたいなと思い、今回は普段よりも真面目な記事です。
当初の予定ではNationalsで使用したZenについて書こうと思ったのですが、Zenの知識は他のプレイヤーの方が詳しそうなのと、Bondsに規制が入って情報の鮮度が落ちてしまったので、今回は大きなテーマについての投稿です。
はじめに
約1年間FaBを競技としてプレイし、自分は周りのプレイヤーと比べて大会で使用するヒーローを決めるタイミングが遅いと感じました。
自分は、大会で使用するデッキ(ヒーロー/レシピ)は本番直前まで悩み、極端な場合は前日に決めることもあります。
周りを見ていると、使用するヒーローは早めに決めて構築やプレイの細部を入念に調整している人が多いと思いました。
使用デッキを決めるのが遅い理由の1つは、使用デッキ選択の理由付けに時間をかけているためです。
どのTCGでも「なぜそのデッキを選んだのか?」「〇〇(使用していないヒーロー)を使わなかったのは何故か?」という質問に答えられない状態で大会に出たくないという思いが強く、使用デッキ選択には必ず理由をつけているつもりです。
※デッキに採用しているカードの採用理由を答えられないのであれば、そのカードは抜くべき。という思いも強いです。
今回は「どういった考えで使用デッキを決めているか」というテーマです。
使用デッキを決めるための要素
大会で勝つために使用すべきデッキは「その大会で勝てるデッキ」です。
勝てるかどうかを決める要素としては大きく分けて下記の2種があると考えています。
①環境の立ち位置
➁デッキ単体の強さ
①環境の立ち位置
どのTCGも環境読みは必要不可欠です。使用者数の少ないデッキを対策しても効果は薄いですし、使用者数の多いデッキに対して強いデッキを持ち込むことで勝ちやすくなります。
今回のNationalsだとZenに強いNuuなどは立ち位置が良かったですね。
EnigmaはZen対策するヒーローには強いですが、あまりにもZenが多すぎたので立ち位置は悪かったです。
FaBはヒーローごとで動きや刺さるカードが大きく異なるので、特に環境読みが重要なゲームだと感じています。
どのデッキが環境に多いかというのは、各国の大会結果を見るのが手っ取り早いです。
国独自のメタも考慮に入れると、メタ読みの正確性も上がると思います。
(Nationalsの日本メタは、Zenが異常に多く、逆にKanoやAzaleaなどが少なく、世界のメタと大きくズレがありました)
特に何も考えずに世界各地の大会で勝っているデッキをそのまま持ち込むといった考えも、結果として正しいデッキ選択になる可能性が高いですが、可能であれば環境を分析して自分の使用ヒーローの選択理由を明確にしたいと考えています。
環境を定義し、適切なヒーローを選択するという流れはこれから環境が変わっても有効です。
まずは環境を定義する要素と、それらの要素に対してどのようなデッキ/ヒーローが向いているのかを簡単に整理していきたいと思います。
MST環境がそれぞれの要素に対してどうだったかという具体例も可能な限り書いていきます。
環境を定義する要素
・テイクのされやすさ
まず1つ目はテイクのされやすさです。(良い言い方が思いつかなかった)
自分はよく、FaiやPrismなどの「相手の攻撃を基本防御せずにライフで受け(フルテイク)手札を全て自分の動きに回す事を主としたデッキ」をフルテイクデッキと呼んでいます。
防御が苦手な反面、強力な動きを相手に押し付けられるのが魅力です。
逆に、「手札を1~2枚防御に回し、残った手札で攻撃するデッキ」(良い言い方が思いつかない、ハーフテイクデッキとでもしておきます)といえば、HVY環境で猛威を奮っていたハチェット型のDorintheaや、Victorなどが該当します。
これらのデッキは手札数枚を防御して残りを攻撃に回すというプランを主としており、フルテイクデッキとは真逆の存在です。
手札を守りに差し出しても、ある程度の打点が担保されているのが魅力です。
環境にフルテイクデッキが多いか、ハーフテイクデッキが多いかを環境を定義する1つの要素としてみています。
フルテイクデッキが多い場合はCommand and Conquerなどのhit時に相手の妨害ができる(相手に防御を強要させる)カードや、クラス単位で言えばHit時効果が多いAssasinやRangerが強力です。
ハーフテイクデッキが多い場合は、Kayoのようなシンプルに打点効率が良いヒーローや、Turtle Burst Viseraiのような攻めと防御のメリハリが効いているようなデッキやKanoのような一気に打点を出すヒーローの立ち位置が良くなります。
MST環境はZenが環境トップで、 他にはAzaleaや攻め重視のKayoなどフルテイクデッキが多い環境だったと思います。
そのため妨害AAの採用率が上がったり、実際にNationalsではNuuとUzuriのAssasin同士の決勝戦となりました。
・ゲームスピードの速さ
次にゲームが終了するまでのターン数、ゲームスピードの速さです。
ゲームスピードが遅い場合は、デッキのカードをある程度の枚数プレイできる保証があるので、再現性が低いデッキでもある程度勝率が出ると考えています。
また、ピッチスタッキングをメインプランの1つとしているデッキ(Kanoなど)もゲームスピードが遅い方が嬉しいです。
逆にゲームスピードが速い場合は再現性の高さがより求められます。
この要素は上記の「テイクのされやすさ」と似ている要素(フルテイクデッキが多いとゲームスピードも速い)でもあります。
MST環境はゲームスピードが速かったので、再現性の高さがより求められていました。その結果、一部ガクっと勝率が落ちるデッキが存在していたのは確かです。
再現性の高さについては「➁デッキ単体の強さ」で解説します。
・Defence Reactionの多さ
Defence Reactionが環境に多いかどうかで、hit時効果が通りやすい/通りにくい、Dominateで打点が通りやすい/通りにくいが変わります。
アタックリアクションでon hitを通していくNuuのようなデッキは、環境に
DRが少ない場合、かなりの追い風です。
DRが無い場合、4点や7点といった、普通のカード(防御値3)で綺麗に守りづらい攻撃が通りやすいのもポイントです。
MST環境は自分の強い動きを押し付けるデッキ(フルテイクデッキ)が強かったため、DRの採用頻度が少なく、hit時効果が強力なAssasinやAzaleaの立ち位置は比較的良かったです。
・Arcane damageが飛んでくる可能性
Arcane damageを飛ばしてくるヒーローが環境に多いかどうかも、環境を定義する要素です。
今クラシック構築でArcane damageを飛ばせるのはWizardのKanoとRunebladeのVynnset/Viseraiの3種のみですが、ロゼッタ発売後はArcane damageを飛ばしてくるヒーローが新規で何体も出てくるので、この要素はより意識する必要がありそうです。
Arcane damageに強いヒーローはAB装備が強力なDashやRubeBladeだったり、デッキに採用している青が多いヒーロー(Zen/Enigma)などです。
逆にWarriorやBrute等は魔法ダメージに弱い印象があります。
MST環境はArcane damageが飛んでくる頻度は低く、特に国内はKanoプレイヤーが少ないこともあり、AB装備を切っているプレイヤーも何人かいました。
ロゼッタ環境が楽しみです。
・Popperの重要性
Phantasm持ちの攻撃をしてくるヒーローがどれだけいるか、即ちPopper(攻撃値6以上のAA)がどれだけ必要かも環境を定義する要素です。
現状クラシック構築で使用できるIllusionistはEnigmaとPrismAoSの2種のみです。
DromaiがLLになる前の環境はPopperの重要度はかなり高かったと思います。
どのヒーローもサイドボーディングでPopperを採用することはできますが、BruteやGuardianのように、メインデッキの段階でPopperを複数採用できるヒーローは、Illusionistが強い環境で輝きます。
特にPrismに対するPopperは攻撃値6だと心もとないので、攻撃値7以上のカードをある程度採用できるのがBrute/Guardianの1つの強みです。
MST環境では、EnigmaはZenに不利、PrismはZenに比較的強いが、母数はそこまで多くなったのでPopperの重要性は比較的低いと感じました。
ですが、Popperの採用率が下がるとIllusionistが強くなり、頭角を現してくるので、Illusionistの動向にはどの環境でも注目したいです。
・参加プレイヤーの実力
大会に参加するプレイヤーの実力も環境を定義づける要素として一応取り上げておきます。
WorldsやNationalsのような強いプレイヤーのみが出れる大会と、RtNやProQuestなどのオープンエントリーの大会ではプレイヤーのレベルが異なります。
後者は前者に比べて相手のミスを利用しやすいデッキ(相手の守り方が難しいAssasinやWarrior、動きが複雑なPrismやKanoなど)の通りが少し良くなります。
ですが、最近は国内のレベルも相当高く、この要素の比重は段々と小さくなっているような気がします。
環境の立ち位置まとめ
ここでは、環境の立ち位置が良いヒーローを見極めるために、環境を定義する要素をいくつか挙げてみました。
今の環境はどういった環境なのかを常に考えておくことで、自ずと使用すべきヒーローが見えてくると考えています。
これらの考え方は別の環境、別のTCGでも活用できると思います。
➁デッキ単体の強さ
ここまでは環境の立ち位置が良いデッキを見極めるために、環境について掘り下げていきました。
しかし、どれだけ環境の立ち位置が良いデッキだとしてもデッキ自体が弱いと、良いデッキ選択だとは言えません。
ここでは環境のことは一旦忘れて、デッキ単体で見たときの強さをについて簡単に説明します。
・ダメージ/表現価値の高さ
FaBは手札のカードを使用して相手のヒーローのライフを削り切って勝つゲームです。
手札1枚あたり平均して4ダメージ与える/防御できるデッキと平均3ダメージのデッキでは前者の方が強力です。
特にCCだと1試合にかかるターンが長いため、この差が段々と大きくなり、ゲームを決定付けます。
どれだけ環境トップに対して強いカードが採用できても、表現価値が低いとライフレースで負けてしまい、結果として敗北に繋がります。
あくまでFaBは相手のヒーローのライフを削るゲームだということを忘れてはいけません。
・再現性の高さ
強いデッキの絶対条件は再現性の高さです。自分は特にここを意識しています。
何回戦っても、大体いつも同じような展開でしっかりとデッキが回って勝てるデッキは再現性が高いです。
逆に、10試合に3回は凄い打点が出て相手に何もさせずに勝てるが、7試合は動きが弱くて負けてしまう。といったデッキは再現性が低いです。
FaBは青いカードをピッチして赤いカードをプレイするのがベストな選択肢であることが殆どなため、手札に赤や青のカードが程良いバランスで来ると強い動きに繋がります。
今まで見てきたデッキで再現性が高く強いと感じたデッキは、「赤いカードのピッチを許容するため、青いカードを引く必要の無いDromai」「デッキに9枚の超越カードが好きなComboに変換できるZen」「攻撃の中心が武器のため、特定のカードに依存しづらいハチェット型のDorinthea」辺りです。
※再現性はプレイヤーのスキルでも一部補える要素です。アーセナルに置くカードを「どんな手札が来ても満足に動けるようなもの」にしておくなど。(アーセナルのEnlightened Strikeはどんな手札でもある程度強い動きが可能になるので好きです)
デッキ単体の強さまとめ
デッキ単体の強さは打点効率と再現性の2要素が大部分を占めているかと思います。
普段の調整やArmoryでの対戦で、カード何枚使ってどれだけの打点が出たかを考える癖を付けるのは効果的です。
再現性に関しては、1人回しで手札4枚引いてプレイする⇒また4枚引くというのを繰り返すだけでも確認できます。
これらの考え方も別の環境、別のTCGでも活用できます。
どうして使用デッキをギリギリまで決めないか
ここまで、使用デッキを決める要素として下記の2点を挙げました。
①環境の立ち位置
➁デッキ単体の強さ
自分が何故ギリギリまで使用デッキを決めないかというと、FaBというゲームは世界各地で多くの大会が開催されており、「①環境の立ち位置」が数日単位で変わるから、というのが主な理由です。
数週間前は立ち位置良かったけど、直前になってメタが変わった!みたいなことは他ゲームでもよくある話ですが、FaBではそれがより顕著に思えます。
また、使用デッキを先に決めてしまうと視野が狭まって、より強いデッキに気づけなかったりすることが多々あります。
実際に別のゲームでは、最初に使うと決めたデッキを強いと正当化し続け、痛い目を見た経験もあります。
本当に強いデッキを選択するために、使用デッキはギリギリまで悩み続けます。
使用デッキをギリギリに決めるリスクも勿論あります。
最後に、自分が考えているリスクとそれらの対処法について書きます。
・プレイのレベルが落ちる
使用デッキを決めるのが遅いということは、大会で使用するデッキの練習時間が短くなるということで、プレイのレベルが落ちやすいです。
少し話がそれますが、FaBのプレイはマクロとミクロの2パターンに分けて考えています。
マクロ:このヒーローに対してはこういう展開で勝つといった大局観。どのようにゲームを動かしていくかの意識で、マクロがミクロに繋がる。
ミクロ:手札で最も効率よく出せる打点を見つけたり、相手の攻撃を予測して防御に差し出すカードとタイミングを決めたりするスキル。
マクロは事前に蓄えておく知識で、ミクロはその場で考える技術といったイメージをしています。
マクロのスキル低下の対策としては、ヒーロー同士の相性差やどういうゲーム展開になるかを全て検証していると時間が足りないので、有識者に聞くことで自分の中に落とし込んでいます。
幸い今回のNationalsは調整チームに所属していたこともあり、メンバーが優しく教えてくれました。
ミクロに関しては、全てのヒーローを日頃から触るようにしています。相手の動きやテンプレ構築を知っていれば、その場で考える事で事前練習が少なくても最適なプレイを導きやすいです。
・サイドボーディングの質が落ちる。
サイドボーディングは各ヒーローとの調整を続けて練度を上げていくものなので、数日で完璧に仕上げるのは難しいです。
こちらの対策もマクロの話と同様に調整チームのメンバーにヒアリングをしたり、海外で結果を残したレシピを参考にして作り上げました。
今回Nationalsで使用したZenはメインプランが強すぎて、比較的サイドボーディングが作りやすいデッキだったのも大きいです。
サイドボーディングが難しいヒーロー(50枚固定でサイドボーディング20枚弱から対面に合わせてピックアップするなど)は構築を直前に決めるリスクが大きくなると考えます。
実際今まで使用したヒーローはサイドボーディングがシンプルなものが多かった気がします。
さいごに
今回はデッキ選択というテーマで普段よりも真面目な記事を書いてみました。
これから日本でどんどん大きな大会が開催されるので、考え方をアップデートしつつ臨んで行きたいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。