
白か黒か二者択一。仲良しの友達も一つの出来事で殺したいほど憎くなる!
付き合い始めの頃、彼女(BPDの妻)は専門学校に通っていました。
どういう経緯で通うことになったのか分かりませんが、就職難でどこにも採用されず、専門知識を付ければ採用に有利では、ということで大学卒業後も専門学校に通い始めたらしいです。
後になって分かることですが、この頃既に過食嘔吐、リストカットなどは常習的にしていたようです。しかし、まだ精神疾患やBPDなどとは認知されず、病院には通ってないし薬も飲んでなかった頃です。初めの頃、学校はそこそこ楽しそうに行っていて、そこで知り合った友達とも時々遊びに行ったりしているようでした。
BPDの妻>Aちゃんは面白いんだよ、こんなこと言うんだよ。でもBちゃんは天然で更におかしいことを言うの。面白かった(^_^)
こんな風に楽しそうに話す様子は全く普通の女の子で、付き合い立ての私は微笑ましく聞いていました。
しかし、それがある日…授業か何かで別の同級生Xと険悪になったようで、様相が一変します。
BPDの妻>あいつ許せない…こんなこと言われた。絶対許さない。殺してやる。
『殺してやる』という発言に、私は何も言えずにいると…
BPDの妻>味方になってくれないんだね。もういい!
と怒鳴って出て行ってしまいました。
敵とか味方とか以前に『殺してやる』という表現をするのをはじめて聞いた私は、驚いてしまって反応できませんでした。それからはもう、毎日のようにXの話ばかりするようになります。
『家が分かったから火を付けに行く』とか『殺さないと気が済まない。一緒にナイフを買いに行って!』とか、挙げ句の果てには『あいつ殺して!殺しに行ってきて、行かないなら味方じゃ無い!』などと、私まで非難するようになっていきました。
そんなに気が合わない嫌なヤツならそのことは考えるのをやめて、もっと仲の良いAちゃんBちゃんのこと、他のもっと楽しいことに頭を切り替えて生活した方が良いのでは?私ならそう思います。でもそれを直接彼女に言っても、黙ったまま空を見つめるだけで、頭の中は常にその嫌なヤツのことを考えているようでした。
もちろん殺すとか、家に火を付けるとか、実行するわけではないのですが、その後もことあるごとにXに対する非難の発言が目立ちました。ある日もまた、Xともめ事があったようで、仕事中の私にメールがありました。
BPDの妻>もう無理!許せない!死んでやる!
相手が憎くて、相手が悪いと思っているのにどうして自分が死ななければならないのか?私には全く理解出来ませんでした。それをメールで伝えると
BPDの妻>あいつが悪いのに、誰も罰しない。**(私)も殺しに行ってくれない。だから自分が死ぬしか無い。
というのが理由だそうで、もう理屈がめちゃくちゃです。その時彼女は私の部屋からメールしてきているようで、私はとにかく慌てて帰宅しました。しかしそこでは、明かりも付けずに薄暗い私の部屋でリストカットする彼女がいたのです。
私はその時初めてリストカットを認識し、目撃したのだと思います。それまでの私は、リストカットと言えばテレビドラマで見るように深い傷でドバドバ血が出て死に至る…漠然とそんなイメージしか持っていませんでした。
しかし彼女のリストカットは、手首から肘にかけて何カ所も、血がうっすらにじむくらいの薄い傷を無数に入れるものでした。そしてそのうちの何カ所かはポタポタと血が垂れるくらいの傷になっていて、私の部屋の机の上に血だまりが広がっていました。
幸い病院や救急車のお世話になるほど深い傷では無かったし、何より彼女がとても抵抗したので、家に有ったガーゼと包帯でなんとか手当しました。私はとても気が動転して何をどうしたのか?はっきり覚えていないのですが、彼女にとっては珍しいことではなかったようで、平然としていました。そして不思議なことに、その後は少し機嫌が戻って、ぱったりとXの話はしなくなったのです。
しかし、それからまた一ヶ月ほど経ったある日、仕事中の私に再びメールが入りました。
BPDの妻>裏切られた。許せない。
私>裏切られた?誰に?
BPDの妻>Bちゃん
私>どうして?何かの間違いじゃない?あんなに仲良かったのに。
BPDの妻>もう辞める。ここには居られない。何もかもおしまい。
帰宅してから話を聞くと、仲良しだったBちゃんが犬猿の仲のXと話しているのを目撃したのだそうです。逆に言えばただそれだけ。
BPDの妻「きっと私の悪口言ってたんだ」
私「どうしてそう思うの?」
BPDの妻「楽しそうだった」
私「楽しそうだからって、そうと決まったわけではないでしょう?」
BPDの妻「決まってる。違いない。もう無理。」
私「無理って…。」
BPDの妻「Aちゃんもそうに違いない。みんな裏切った!殺してやる!」
私「何かの誤解じゃ無いの?」
BPDの妻「違うに決まってる!無理!もう学校辞める。やめてやる!」
そしてそのまま、彼女は本当に学校をやめてしまったのです。どんなに好意を持って仲の良かった友達(Bちゃん)でも、少しのことで殺したいくらい憎くなるようです。
また全く関係無くても、彼女の仲で同一に評価されているもの(Aちゃん)も同時に評価を下げるようで、これも同様に殺したいくらい憎くなるようでした。
BPDの彼女のその価値判断は全くもって自分本位で、相手の事情などは全く思いやれません。その後は抑えられない憎しみが渦巻いて、全ての情報は相手が悪い、相手を含む周りの環境全てが敵になります。こんな時はもう、何を言っても無駄で、まったく人の話を聞こうとしません。また何を見せても、誰に話を聞いても、全く受け入れられなくなります。
この対人関係の不安定さがBPDの特徴で、その相手からすると『めんどうで、訳が分からないやつ』と言われる所以でしょう。
昨日まで仲の良かった友達も『仲の悪い友達と会話していた』というだけで完全に敵視されてしまいます。人にはいろいろな側面があって、好きな面も嫌いな面もあるものだ、という事が理解出来ないようなのです。だから、悪い面、嫌いな面を見つけると、それまでの良かった評価は一変し、180度逆の評価で嫌いになってしまうのです。
また、彼女の思考を客観的によく観察していると、そこには強い認知のゆがみが発生していることも容易に分かります。(今は分かりますが、当時は分かりませんでした)
つまり彼女は、自分の価値観と照らし合わせて発言しているわけではなく、感情が事実をねじ曲げて認識させて『悪いのは相手』『周りは全て敵』というような思考回路に陥っているのです。
だから、こういう時にはこちらから何を言っても無駄です。全て彼女に対する反論と取られるので会話になりません。これらの二面性の理解が困難なこと、感情によって認知が大きくゆがむこと、この二点こそがBPDの人の対人関係の安定を妨げていると思います。
嫌いな面が一つも無い人間なんて一人も居ませんからね。どんなに仲良しだと思っても、自分にとって嫌いな部分が見えてしまうと、それ以降は完全に敵になります。これでは対人関係を築いて継続することは出来ないでしょう。
彼女から見れば、相手が自分の気に食わないことをした、だから嫌いになった。それのどこが悪いの?ということになるでしょう。うちのBPDの妻にも実際によくそう言われます。
しかし、よく考えてみて欲しいのです。そのように判断して生きてきた今、BPDの妻に腹を割って話せる友人がいるでしょうか?腹を割るほど気の置けない関係でなくても、継続的に人間関係を続けている人間がいるでしょうか?サークルやバイト、幼なじみ、そんな様々な人間関係の仲で継続的に続いている関係があるでしょうか?
答えはNO!
うちの妻には一人の友人もいないし、一つとして継続的に所属している組織もありません。こうなってしまった理由を彼女に言わせれば『世間は全て敵で自分を陥れようとしている。だから心の許し合える人なんて一人もいない』…となります。
では、妻のまわりの人だけが必ず、妻を陥れようとしている人ばかりで、妻のことを心配してくれる人は本当にいないのでしょうか?そんなはずは無いですよね。
そうではなくて、妻のBPDという病気が二面性の理解を妨げ、感情が認知をゆがめるので、そういう人を見つけられないのです。本当は妻のために、妻を思いやって行動してくれた人がいても、感情が邪魔をしてその好意を敵意としか受け取れなくなっていたのです。そしてどんどんと味方も友達も失い、社会での所属組織を失い、どんな人間関係も破壊されてきたのではないでしょうか。
全てはBPDという病気のせい。『この病気のせいで大切な人間関係を全部壊されてきたんだよ』現在私は妻にこのように説明しています。
だから一日も早くBPDを克服して、損してきた分を取り返さなくちゃ、と。なかなか受け入れてくれませんが、ぶれずに何度も何度も繰り返しこのことを訴えてきたせいで、うちのBPDの妻は少しだけ改善傾向にあります。かといって一筋縄ではいきませんが。
※2024.3.16更新
※この記事は別のブログ「はる書店」で公開していたものを再編集したものです。
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