あの頃から
会社の近くに母校の小学校がある。ただ、建て直し工事の真っ只中だ。
母校の小学校には電車で通っていた。
この街は本の街といわれる。幾重にも連なる古書店。秋には祭り。
母校の思い出の濃淡はさまざま。
マーチングバンドをしたこと。
ミニバスに励んだこと。
手打ち野球をしたこと。
近くの大学へ見学しに行ったこと。
ピロティーで告白されたこと。
原稿用紙に好きな物語の続きを書いていたこと。
日に日に、新しい校舎の形ができあがっていく。かつてとは雰囲気の異なる、大学の施設みたいなちゃんとした建物だ。
あそこで、どんな思い出が紡がれるだろう。
通っていた小学校の近くに勤め、期せずして、親と同じ仕事に就いている因縁は、なんとしたことだろう。
校庭から聞こえる運動に興じる声。下手っぴな吹奏楽の演奏。誰かを好きになる切ない入り口。
それらを待ちわびている。
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