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婚活七福神~40女幸せ婚の叶え方~第21話 婚活で作家になる?①



「作家。なりたいんやろ?」


「……」


なりたい。

結婚か作家か選べと言われたら、
迷わず作家を選ぶ。


婚活はもうやり切った。
そういえるほど行動した。

でも、執筆は全然やり切れてない。

なりたいとか言いながら、
そもそも全然書いていないのだから。

仕事が忙しい。
時間がない。
技術がない。
何を書きたいのか決まらない。
想いが足りない。
やる気が足りない。


失敗するのが恐ろしい。

拒絶されるのが耐えられない。


なんで婚活はあんなに頑張れたのに、
書くことには頑張れないんだろう。



「婚活には賞味期限があって、作家になるのに期限はない」


えび天の言葉にぎくりとした。


「リミットのあるモンを優先するんはまあ、当たり前やな」


一人ウンウンと頷いてから、ぴたりと動きを止めた。


「でもな」


えび天がまっすぐにわたしを見た。


「作家になるんも期限あるで」


「……期限って、いつですか?」


文学賞の応募期限のことを言っているのだろうか?
でも、文学賞の応募は毎年やってくる。


「いつでもなれる。

そうやて自分に無期限を許してるうちは、
作家になるタイミングは一生こおへんで」



ぐ……

胸を貫かれたようだった。
わたしは一瞬息ができなくなって、ぐっと、つばを飲み込んだ。


「それは……」


随分と、神様らしいことを言う。
正論すぎて吐き気がする。
何か言い返したかった。
でも……



「そうかもしれませんね」



悔しくても、
肯定することしかできなかった。



それは、もう何度となく考えたことだったから。



作家になりたいと言いながら、
書きたいことがまとまらなくて


たまに無理やり書き上げた小説を応募しても、
もちろん入選することなんてなくて、
落ち込んで再びチャレンジするだけの気概もない。


こんなわたしが作家になんてなれるわけがない。
諦めてしまったほうがいっそスッキリするんじゃないか。
そう思ったことは何度もある。



でも。



仕事に打ち込むことも、
結婚をして家庭を持つことも、
趣味に打ち込むこともできず、
ただ悶々と生きていたわたしにとって、
作家になることは、
唯一抱けた夢だった。



33歳の頃、
何気なく応募した短編小説の文学賞で入賞した。


原稿用紙たった5枚だけの短い小説だった。
技術もなくて、拙い内容だったと思う。
それでもこめた想いは本物だった。


入賞はずっと認められなかったわたしを、
初めて、わたしのままでいいと言ってもらえたようだった。

小さな成功は、からからに乾いていたわたしの心を希望で埋め尽くした。

明るくて、温かくて、わたしを優しく包んでくれた希望に、
わたしは浸った。すがった。
甘えて、そこから頑張ることをしなかった。

希望はどんどんしぼんでいった。

結局はそんな人間なんだと、わたしは自分を責めた。
そして今度は、結婚して経済力を安定させれば
書くことに意欲的になれるんじゃないかと、
これまた根拠のない理由を作り出して、遅すぎる婚活をした。

けれど、
わたしの望む形の結婚を見つけることはできなかった。


つまりこういうこと。
わたしは、
結婚する資格も作家になる資格もないということ。


わたしはからからのわたしに戻るだけ。



「……でも」


わたしは泣きそうになる自分を必死でこらえた。



結婚もせず、
やりたいこともなく、
お金持ちでもなく、
かといって、食べることに困ることもなく、、
一時的な楽しみを時々楽しみ、
なんとなく生きるを決めてしまうことに
わたしははたして耐えられるのだろうか。


生きていることこそが最大の幸せだと、
希望は必要ないと、
この先、一生言い切れるだろうか。



「……できないです。
諦めるなんて、できないです」


堪えきれなかった涙が、目からぽろりと落ちた。


つづく



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