婚活七福神~40女幸せ婚の叶え方~第23話 婚活で作家になる?③
えび天がいなくなった後、
わたしは崩れるように床に倒れ込んだ。
電気も消さず、化粧も落とさず、
押し付けられた紙束はテーブルに投げ出した。
あ、クーラーボックス……
余計なモンを。
冷蔵庫に入れなきゃ……
そこまで考えて、記憶が消えた。
(鯛は残念ながら成仏した)
翌日は丸一日死んだように眠り、
えび天からもらった(押し付けられた)紙束に目を通せたのは、
それから翌々日の昼だった。
ドロドロに溶けた化粧を落とし、
寝すぎてむくんだ身体を熱い湯船で温め、
(40過ぎの寝落ちほど恐ろしいものはないと、
鏡を見てしみじみ実感)
残り物をかき集めて作ったお昼ごはんを食べて
ようやく人心地ついた。
熱いコーヒーを淹れて、ほっと椅子に腰を下ろし、
投げ出した紙束が目に入った瞬間、
おとといの出来事が鮮明に蘇る。
(あれは、一体何だったんだろう)
幻ではないのは確かだったけど、
だからと言って、
神様が現存するとはどうしても信じられなかった。
信じた途端、ウン十万もする壺か数珠を売りつけられるんじゃないだろうか。
(でもな……)
あのおじさんが神様だとは思えなかったけど、
あやしいどこぞの教祖にも人を手練れの詐欺師にも思えなかった。
言ってることは勢いだけでハチャメチャだったけど、
そこに込められた熱意は本物のような気がして。
流行に乗っかろうとする尻軽さはあったけど。
(一応、読んでみるか)
やるかやらないかはともかく、
読んでおかないと、
また乗り込まれたときに、言い返せないしな。
心の中で言い訳してから、
わたしは紙束に手を伸ばした。
つづく
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?