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婚活七福神~40女幸せ婚の叶え方~第20話 なんで今さら②



「婚活七福神って、なんですか?」


七福神の信仰は、室町時代に生まれた民間信仰で、
仏教経典の「仁王経」の「七難即滅、七福即生」からきていると言われている。
七難は、太陽の異変、星の異変、風害、水害、火災、干害、盗難で、
七福は、寿命・裕福・人望・清廉・愛敬・威光・大量で、
七福神をお参りすると、この七難が無くなって、七福がやってくるよという
ことらしい。


七難は基本的に天災、七福は人にとっての幸福を言っているみたいだけど、

結婚に特化した七福神は聞いたことがない。


(七福神巡りをした勢いでつい、ネット検索してしまった知識がここで役に立つとは)


「なにって、そのまんまやん。
結婚にご利益のある七福神ってことやん」


えび天は何あほなこと言うてんねんと言わんばかりに、
蔑んだ目でわたしは見た。

「七福神にそんなご利益ありましたっけ?
神社とかならいろいろありますけど、
結婚にご利益のある七福神なんて聞いたこと……」


わたしがお参りした七福神は、婚活の「け」の字のご利益も
うたっていなかった。


「そう!!
恋愛成就!結婚祈願!!
なんで、それしか叶えられない神社ばっかりが
もてはやされるんや!
おかしないと思わんか?
七難掃って、七福授けようっていう
この太っ腹なわしたちを差し置いて、
なんで恋やら愛しかやらへん神さんばっかりモテるんや!」


どうやらわたしは、えび天の触れてはいけないスイッチを
押してしまったらしい。
えび天の口からこれでもかとやさぐれた発言が汚水のように溢れだした。


(ああ、なるほど……そういうこと。
自分の人気がないから、
人気のある神様のキャッチフレーズをパクったわけか)


神様というか、煩悩にまみれた人間にしか見えないえび天に呆れつつ
わたしは冷静に分析した。


「全知全能のわしらにかかれば婚活なんて
お茶の子さいさいで明言することも憚れると思って
敢えて言わんかったけど、
そっちがその気ならこっちも本気出してやろうやないか!」


いつの間にか七福神が最高神という設定になり、
見えない敵(恋愛の神様)に
ファイティングポーズを取るえび天にやれやれと思いながら、
わたしは手を挙げた。


「あの、婚活七福神の理由はなんとなくわかりましたけど、
その婚活がメインの神様がなんでうちに来たんでしょうか?」


「なんでって、結婚したくてわしらに参拝しに来たんやから、
当然やろ?
自分婚活してたやん」



何で知ってるんだよ。

それが分かるということは、やはりこいつは神なのか?
しかし、かなり間の抜けた神様なのは間違いない。
直近のわたしの婚活事情を把握していないとは。



「確かに去年まではしてましたけど、今はもうやめてますから。
神様ならそれくらい把握済みですよね?」



わたしはにっこり笑った。


「う……あ、当たり前や」


歯切れの悪くなったえび天に、わたしは更に笑顔で畳みかけた。


「だから、わかってると思いますが、わたしがお参りしたのは婚活の為ではなく、
……なんというか、婚活をやめた自分が改めて幸せに生きていくための願掛けとしてお参りしたんですよ。わかってると思いますが」



確かに結婚を諦めていなかった時は、
ご多分に漏れず、わたしも恋愛成就で名高い神社にお参りしたりもした。
(そこに並ぶ女性の大半が、わたしよりも若かったことを今更ながらに思いだして遠い目になる……)



でも、婚活をやめると決めて、心機一転
この身ひとつで幸せになろうと決めて、わたしは七福神めぐりをしたのだ。
それなのに、その七福神が婚活七福神に鞍替えしているとは、なんという皮肉。


「わ、わかっとる!わかっとるに決まっとるやろ!!」


あからさまに狼狽えるえび天がちょっとかわいいと思いながら、
これで解放してくれるだろうとほっとした。



「ですよね。良かった。
じゃあもうこれで用は……」


にっこり笑ってドアに誘導しようとしようとするわたしに、
えび天は叫んだ。



「だからこそ、わしが来たんや!!」






つづく



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