ひぐらしのなく頃に-信じる心-
「人を救いたい」。それは医師の根源的使命。それを揺るぎなく抱懐し続ける入江の心を梨花は信じた。そして全てを委ねた。
全てを?それは自らの脳を切り開き、沙都子を救う為の治療に役立て欲しいというもの。梨花の切願。梨花の決意。そこに迷いなど微塵もなかった。怯懦など微塵もなかった。入江もまた、そんな梨花の断固たる意思を酌み、彼女の脳を切開することに同意する。
梨花は、私達二人の思いが結晶となる薬が沙都子に効かないはずがないと言う。これは梨花の強さそのもの。これは「信じる力は運命をも切り裂く」というもの。
逃れられない運命なんてない。一度、奈落の花であった彼女だからこそ、信じ、歩んでいく決心は、堅牢な精神となり、彷徨う迷い子から梨花を脱却させるものとなった。
入江の心。梨花の心。心は心を繋ぎ、一つの大きな力となる。その力は、心から信じるに足る、信じたいと願う人間に対し、自分自身がその心のままにいられるかにかかる。相互に信じ合った力の生成は、人の心が誠実に向き合い、そして己の心と向き合うところに発生される。
「心」の物語。ひぐらし。
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