見出し画像

熱く 甘く 溶ける想ひ出【短編小説 フィクション】


はじめに


こんにちは、お元気ですか?
私は仕事で人間関係に悩んだりといろいろありましたが無事3周年を迎えられたので、高校生の時メインに執筆しつつ途中で飽きて挫折してしまった【小説】を1ページの短編から挑戦してみることにしました。

それでは、短編小説【熱く 甘く 溶ける想ひ出】です。

私の目の前にいるのは『あなた』という劇作家


趣味の話、近況、他愛ない話をカフェであなたと会話しながら過ごす時間が現実の時間で特別だ。

友達や恋人、仕事仲間 などこの関係に名前は無い。必要無い

たまたま小劇場演劇が好きで、同じ作品を同じ日・時間、隣の席で観劇していたのがあなたを知った些細なきっかけ

いつも新幹線か夜行バスで来てひとりで観劇して、余韻に浸りながら数時間かけて帰るのに

「泣いてましたね。私もあのシーン思わず涙が溢れました。マスクをしていてよかった」

終演後 物語の世界からカーテンコールを終え客席に明かりがつくと隣から話しかけてくれた。


あなたはこの舞台に友人が出演するから、私は好きな劇作家の最新作だから

理由も小劇場演劇への知識も、もっと大きな範囲で言えば

都会で育ったあなた 田舎で育った私

それなのに時間と物語が私に暖かい幸せな出会いをくれた

それから観劇のため東京に来るたび終演後待ち合わせて、帰る時間までカフェで一緒に時間を過ごすことが楽しみになった。
けれど私には、あなたはいつも優しさを演技していることは知ってた。
それでも構わなかった。

仮初めの想ひ出(おもいで)


ある日 カフェを出て夜行バスの乗降口へ向かう時、大雨が降っていた。
雨予報なのは知っていたから
「じゃあ、雨に気をつけて」
私はカフェの入口で別れの言葉を言って傘を広げた時肩に手が触れた。

「バスの乗降口まで送る」

あなたは傘の取っ手を掴み 相合傘で歩き始めた。

実は…


「実は…傘を来る時乗った電車に置いてきて。この傘借りていいかな?」

あゝ、なんて甘い演出と台詞だろう。
あなたに戀する私にとって

相合傘で密着し触れている肩から伝わる体温

いつも鞄に折り畳み傘を入れていて今も鞄に入っているのに…

「また会った時に返す。だから元気になって戻ってきて」

身体と心が壊れた私にくれた体温と優しい言葉は

熱く 甘く 溶けるチョコレートのように身体も心も癒された

カフェから夜行バスの乗降口まで、10分の仮初めの想ひ出(おもいで)

あなたへの戀心は


きっと一生告げることはない。関係が壊れることが怖いのではない。
ただ私はあなたに出会えたこと、あなたが幸せでいてくれることがこの戀で一番たいせつだから。
何も望まない。だからどうか、雨が降るたび、あの想ひ出が、色褪せないように。・・・


カフェのなかで会話を脚本し優しさを演技し幸福を演出する、

本当はあの友人のように演劇の世界にいたかった。
でも諦めた。劇作家になることを。


雨降る街を相合傘で歩く中ひっそりと言った願いが私とのふたり芝居で叶うなら、


私は東京で、客席では観客Aを演じ、あなたの前ではあなたの望む役を演じよう。

ふたり芝居の幕が降りるその日まで。・・・

エピローグ


先月までの入院期間中に読んだ又吉直樹さんの【劇場】が私が好きな小劇場を題材にしていて、演劇が好き という少しだけ本当を混ぜて書いてみました。

次回以降はエッセイに戻りますがまた挑戦してみます。

いいなと思ったら応援しよう!