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【小説】高嶺ときみ【2】

体育館がわいわいと賑わっている
今日は、新1年生の歓迎祭だ。
歓迎祭といっても、
何か特別なことをする訳ではない

毎度お馴染みの校長先生の
なが〜い良いお話を聞いてから
部活の紹介がある。

でも、その部活紹介がまた斬新で
体育館だけではなく、
サッカー部は校庭、美術部は美術室など
その部活特有の場所で活動の様子を
見ることができるのだ。
この日の為に、特別な演出をするところも
あれば簡単に説明だけで終わらせる部もある。

私の高校は、サッカー部が強くて
ビジュアルも良い(?)と有名なので
入部を希望する子も多いが、
マネージャー希望が無限に出てくる。
部員数が多い分、
それなりの人数はいても良いと思うが、
いつも部員数よりも
マネージャーが多くなってしまうのが
毎年問題になっている。
でも、サッカーは本当に強いようなので
よく学校にのぼりが飾られているのを見かける

その中でも特に有名なのは、
サッカー部の中山兼輔だ。
同学年の若きエースで
お父さんは元メジャーリーガー
お母さんは華道の先生らしい

目がぱっちり二重で顔は小さく、
子犬のような甘い顔立ちをしている。
笑うと【くしゃっ】となるところが
可愛いな〜と私思ってしまう程だ

一度、地元の新聞に取り上げられてから
ファンがドンッと増え
休みの日の練習には沢山の人が
一度でもみたい!と
学校へやってくる事がある。

そんなこともあり、
この歓迎祭は地元ではかなり有名なので、
新一年生は楽しみにしている
イベントの1つだ。


広い体育館にキーーンというマイクの音と
テステス・・と小さな校長先生の声が入る

「え〜・・皆様、
ご入学おめでとうございます。
この学校には〜・・」

1年生の頃はどこに入ろうか、
友達はできるか、とか
沢山いろいろ考えたなあ。
私は、結局何も部活には入らずに
バイトをしたりして過ごすことに決めた。

春妃はファッション研究部に入ったが
活動という活動は特になく
気の向いた時に集まって皆んなで
お喋りする部活にいつのまにか変わっていた。

今回もサッカー部すごいんだろうな
そんなことを思っていると
校長先生の話はあっという間だった。

「次は生徒代表の言葉です、代表は・・」

体育館がざわついた。
代表の言葉を述べる為に壇上へ上がったのは
【楠見都】だ。

「あんな綺麗な人がいたの?」
「うっそ!めちゃくちゃ美人じゃん!」
「彼氏いるのかな?やばいね」
「後で話しかけてみようぜ!」
そんな声が体育館に広がる。

「みなさん、ご入学おめでとうございます。」

声は少し低めだが聞きやすい声が響く
容姿端麗プラス声も良いなんて
本当にこの人は同じ人間(ヒト)なのかと
疑ってしまう。
スピーチは慣れたものでスラスラと
原稿も見ずに話していく。

凄いなあ、なんでもできちゃうんだ・・
そりゃあモテるよね、
男子は全員好きになっちゃうよ。
春妃がさっき言っていた言葉の意味が
よく分かる。さっきはごめんね、春妃。

体育館にいる生徒は今ほぼ
楠見さんのことを考えていると思う
それ程までに人を惹きつけられるのは
才能なんだと思う。
いいな、わたしにもそんな才能欲しかったな

あっという間に楠見都のスピーチは終わり
体育館に拍手が響く。

楠見都の後ろを目で追いかけている人もいれば
周りで静かに盛り上がっている人達もいる。

同じクラスだなんて・・思えないな。
楠見都の存在は大きい
存在しているだけで凄いというのは
このことなんだと思う。

そういえば、楠見さんって
部活なんかしてたっけ・・?

そう考えていると
いつのまにか生徒の列が崩れ始め
各々が好きな場所へと動き出した。
これから部活紹介がはじまる

上級生は、紹介する人達以外は
もう自由なので
私はそのまま教室へと戻った。

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