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愛の夢
人を傷つけるという事。
言葉だろうが暴力だろうが迫害だろうが、どのような形だろうが、傷を付けるというのは人の心に刃こぼれしたナイフで切り付けるような行為だと思う。
私の愛する優しかった人は、社会の重圧の中で傷付けられ、心の余裕を摩耗していった。
さらに圧迫された時間に囚われ長針と短針にズタズタにされ、それきり、会うことも無くひとつの恋が終わってしまったのだ。
「ドアノブにベルトを掛けて首を吊ろうとしたんだ、けれど…気付いたら病院だったの。」
そう言う私の首にはベルト幅の分だけ肌の色を変色させていた。
「怒りの根底は寂しさなんだよ、気付かない人はこれ幸い。だって気付かずにいる人は結構怒り散らしているんだよ。寂しさに気付かずに。それちょっと羨ましいよね。
あなたは、気づいちゃった人。」
病室で仲良くなった甲本ヒロトのような見た目の男性が言ったから間違いない、と私は思った。
窓から見える景色ははらりはらりと雪が降っている。
窓が額縁ならば、キャンパスは白い雪として情緒ある絵画になるのだろう。
「こんなに寒い日に抱き合わない方がどうかしてる、人は暖かいのにね?」
「私は優しかったあの人と抱き合って眠りたかったよ。」
遠くで、誰かがピアノを弾き始めた。別の病棟で、ミニコンサートがある、とヒロト似が言った。
「私、早く退院して、彼のこと夢だと思いたい。もう馬鹿げた事しないよ…。」
「いいね、愛の夢だ。」