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寒波のライフジャケット
テレビで数年に一度の寒波がやってくると、何度も流れている。
朝起きたときに見た公園には、いつもの平日の朝や昼間に見かける大人たちの数は少なくなっていた。でも夕方になると増えてくる子どもたちの声は相も変わらない様子だ。
少しでも冷気を防ぐためにしめてあったレースのカーテンをめくる。いつもの休憩時間。手に持つマグカップからはいつもより濃い湯気が目の前をとおる。
幼稚園ぐらいの子どもたちではなく小学生ぐらいの子どもたちが遊ぶ時間。
公園の入り口の方にあるブランコに2人の子が見えた。
ピンク色のダウンジャケットを着た子と、白いダウンジャケットを着た子。
2人はブランコをこいで遊んでいるというより、ブランコに腰を掛けてつま先を地面につけているようだ。少し揺らしながら顔を横に向けたり、うつむいたりしながら何か真剣にしゃべっているようだった。
恋愛話ができる年ごろだろうか。動作に大人っぽさが見え隠れする。
とうとう最強寒波、という日。私はサンタを待つように経験のない数字の世界にわくわくと不安で浅い眠りを繰り返しながらその日を迎えた。
カーテンを開けると、窓ガラスの結露で外が見えなかった。指先でぬぐい外をうかがう。いつも通りの色の公園が見える。
夕方になっても、窓ガラスの結露はなくならなかった。
ダウンを着こみマフラーを巻く。
窓を細く開けると体を滑り込ませながら、最強寒波を体験しようとベランダにでた。
はーといわなくてもふーでも白い息が出る。
ほーと私は感心した。
さすがに幼稚園ぐらいの子どもたちは母親にひっぱられ今日は通り過ぎるだけで遊ぶ子はいないようだった。その代わり、ブランコの前にいつもはみかけない自転車が並んでとまっている。
その近くに集まっている子どもたちの輪の中にこの前見かけたピンク色のダウンの子がいた。赤、青、緑、黄、その子たちの服の色はレンジャーのようにそれぞれの色があるようだった。
しばらく見ていると、入り口の方からこの前の白いダウンの子が入ってきた。ピンクの子がちらっと見たように見えたがその子のほうとは逆に体を向けた。
白の子がその輪に近くなればなるほど、輪の動きにぎこちなさと微妙な空気感がはなたれる。
その時、輪の真ん中に白いコートを着た子が見えた。白いダウンの子より背が低い。
その子を援護するように他の色の子が周りを固めているように見えた。
ダウンの子は何も言わず、うつむきかげんでその輪の横を足早に通りすぎる。
寒さに限界で私は部屋に逃げ込んだ。
好きなものの解釈の違いで同じものが好きでも一緒にいられないことがある。私も小さいころから好きなものは姉や1軍と被らない答えをいつも用意していた。そうするうちに自分の好きなものが分からなくなった。彼女はそうならないでほしいなと私は願った。