お酒と父
現実から逃げるように酒を呑んだ父の話。
日本酒は水のようなもの
父はそう言いながら、毎日お酒を呑んでいた。
まだ三歳だった私は、酒を呑む父の姿を見て、不信感を抱いていた。
毎朝出社前、吐血から始まる父。
『お父さん、そんなに血を吐いて大丈夫?』と、よく聞いた記憶がある。
この頃は、飲酒が原因で吐血をしているなんて思いもしなかったから、父が重篤な病気にかかっていると信じて疑わなかった。
私は晩酌をしている父と一緒に、つまみの冷ややっこを食べたり、刺身を食べるのが好きだった。
親が食べているものは、どことなく特別な感じがしていたからだ。
ある日、父が入院をした。
父の入院は珍しいものではなかったが、とても心細く『いつ帰ってくるの?』と、病院へ行くバスを待ちながら何度も聞いた。
障がいのある妹を抱っこしている母と、父から離れたくない私とで、入院が決まるたびにいつも同じバス停でバスを待っていた。
父は退院をして帰宅すると、又酒を呑む。
浴びるほどに呑む。
さっきまで入院していた人が呑む量ではない。
父は病院から薬を処方されていたが、その薬を日本酒で飲んでしまうのだ。
妹が薬を飲んでいることもあり、酒と薬の組み合わせが、どこかいけないものだというのは、三歳の私にでも理解はできた。
『お父さん、お水で飲みなよ・・・』
すると、父の口から出た言葉は『お酒はお水と一緒なんだよ』と・・・
この時私は確信した。
父は何があっても、私にどんな被害があっても、お酒をやめることはないだろうと。
まだ三歳程度の私。
この時の予感は、見事的中するのであった。
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