『密やかな結晶』(小川洋子)
この本は、ある島で「消滅」が起きると、人々はそのモノの存在を忘れてしまうお話。
もしも現実世界で「消滅」が起きたら、人はどう振る舞うのか。
例えば、ある日、スマホが消滅したら、数日間は大きな混乱が起こるだろう。
でも、ある程度の期間が経てば、人はスマホの存在を忘れて、スマホ以前の方法で人と連絡を取り合うようになるのではないか。
そういう意味で、意外と人は「消滅」に対応できるのではないかと思う。
一方、「消滅」しても過去の記憶を保持している人が、「消滅」する世界で生きていたら、相手にいくら説明しても理解してもらえず、もどかしい思いをするのではないか。
タイトルについて
『密やかな結晶』というタイトルに惹かれて購入。おしゃれな響き。
「結晶」には、触ったらすぐに壊れてしまうからこそ、大切に扱わなければいけないイメージがする。儚さ、脆さ、消えやすい存在。
そこに「密やか」が付くことで、主人公たちが共有している「秘密」を表現しているのではないかと思った。