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『「試算表を分析してレポートを作って」と上司に言われました。どうすればいいでしょうか?』にお答えします(分析レポート例付き)
「ここに3期分の拠点別の試算表があるんだけど、これを分析して無駄な支出の特定や改善可能なポイントを示すレポートを書いてくれない?」
上司からこう言われて、「何から手を付ければいいんだ...」と途方に暮れた経験はありませんか?
拠点別の試算表を前に、頭を抱えながら考えたことでしょう。
「何を見ればいいんだろう」
「どんな切り口で分析すればいいんだろう」
「上司は具体的に何を知りたいんだろう」
私も働き始めた頃、同じように悩んだ経験があります。ある日、突然3つの拠点別の試算表を渡され、「来週の会議までに分析してほしい」と言われた時は、本当に途方に暮れました。
でも、その時の経験が、その後の分析業務の基礎となりました。今日は、そんな試算表分析の実践的なアプローチをお伝えしていきます。
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この記事では、分析のやり方と分析レポート例がセットになっております。
分析のやり方は完全無料でお読みいただけますので、ぜひ最後までご覧ください。
分析レポート例については、ある企業の3期分の拠点別試算表(数字はダミー化しており、どの会社か全く分からないようにしております)を分析し、具体的な提言までまとめたWordファイルを有料でご覧いただけます。「今、本当に上司から分析レポートを依頼されていて、レポートのフォーマットが欲しい」とか「分析レポート例を参考にしたい」と思われた方にうってつけのものとなっております。
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まずは深呼吸から:分析の前にすべきこと
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あなたの目の前には試算表があります。でも、すぐに試算表に飛びつくのは少し待ってください。その前に、もっと大切なことがあります。
それは「なぜ、この分析が必要なのか」を理解することです。上司は単に「無駄な支出の特定」と言いましたが、その背景には必ず何らかの経営課題が潜んでいます。
私の経験から、よくある背景としては以下のようなものがあります。
「今期の営業利益が予算を下回る見込みで、その原因を探りたい」
「来期の予算編成が始まるので、各部門の費用の使い方の実態を把握したい」
「新規事業部門の経費が増加傾向にあり、その妥当性を検証したい」
「グループ会社全体での経費の標準化を検討したい」
例えば、以前私が担当した案件では、単に「経費分析」と言われて始めた分析が、実は「事業撤退の判断材料を集めたい」という背景があったことがありました。この時は、経費の削減余地を探るだけでなく、事業の収益性や将来性まで含めた総合的な分析が必要でした。
だからこそ、まずは上司に対して「この分析の背景にある課題は何でしょうか?」と確認することが重要です。具体的には、以下のような質問をしてみましょう:
「特に注目すべき費目はありますか?」
「過去に同様の分析をしたことはありますか?その時の課題は何でしたか?」
「この分析結果は、どのような意思決定に使用される予定でしょうか?」
「分析の期限や、期待される分析の深度を教えていただけますか?」
このような質問をすることで、より的確な分析の方向性が見えてきます。
試算表との向き合い方:まずは売上高から
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さて、分析の目的が明確になりました。いよいよ試算表と向き合います。でも、まだ慌てて数字を追いかけるのは早いですよ。
最初に見るべきは、実は「売上高」なんです。
「え?無駄な支出を探すのに、なぜ売上から?」と思われるかもしれませんね。
ここで、一つの事例をご紹介しましょう。
あるソフトウェア会社の3つの事業部門(A部門:パッケージソフト、B部門:カスタマイズ開発、C部門:保守サービス)の分析を任された時のことです。
まず気になったのは、B部門の販促費が前年比で倍増していたことでした。一見すると「無駄な支出では?」と思えました。しかし、売上高を確認してみると、
A部門:前年比110%
B部門:前年比180%
C部門:前年比105%
B部門は大幅な売上増を達成していたのです。しかも、新規顧客からの受注が多く、それに向けた販促活動の結果だということが分かりました。この例のように、費用の増加は必ずしも「無駄」とは限らないのです。
利益率分析のコツ
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売上高の確認が終わったら、次は利益率を見ていきます。
ここでは、売上総利益率と営業利益率という2つの指標に注目します。
ある製造業での分析事例を見てみましょう。
3つの工場の利益率推移が以下のようになっていました。
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X工場:
売上総利益率:40%→38%→35%
営業利益率:15%→14%→12%
Y工場:
売上総利益率:42%→41%→40%
営業利益率:18%→12%→8%
Z工場:
売上総利益率:38%→37%→36%
営業利益率:13%→12%→11%
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一見すると、すべての工場で利益率が低下しているように見えます。しかし、その「下がり方」に注目すると、興味深い発見がありました。
X工場とZ工場は、売上総利益率の低下に比例して営業利益率も低下しています。これは主に原材料費の上昇が影響していると考えられました。
一方、Y工場は売上総利益率の低下が小さいにもかかわらず、営業利益率が大きく低下しています。これは販管費に何らかの問題があることを示唆しています。
実際に調査してみると、Y工場では新製品の立ち上げに伴う一時的な人件費増や、研究開発費の増加があったことが判明しました。このように、2つの利益率を比較することで、問題の所在を特定しやすくなるのです。
販管費の分析:細部に宿る真実
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ここまでくれば、いよいよ販管費の詳細分析です。実は、多くの「無駄な支出」はこの販管費の中に潜んでいます。ただし、ここで陥りやすい罠があります。
ある小売チェーンでの分析事例を見てみましょう。3つの地域(東日本・西日本・九州)の店舗運営部門を比較します。
最初に目についたのは、九州地域の人件費が売上高比で他地域より2%ほど高かったことでした。一見すると「人件費率が高すぎる」と判断しそうになります。
しかし、詳しく分析してみると、
九州地域は新規出店を進めており、新店の立ち上げ要員を多く抱えていた
教育研修費も他地域より高く、将来の出店に向けた人材育成を行っていた
新店の売上が軌道に乗るまでは一時的に人件費率が高くなる傾向にあった
このように、一見「高い」と思える数字でも、その背景には合理的な理由があることが多いのです。
では、本当の「無駄な支出」はどのように見つければよいのでしょうか?
以下のような視点で分析すると、より実態が見えてきます。
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トレンド分析: 突然の増加や、継続的な上昇傾向があれば要注意です。例えば、ある部門で消耗品費が3年間で徐々に倍増していたケースがありました。調査してみると、在庫管理が適切に行われておらず、必要以上の発注が行われていたことが判明しました。
部門間比較: 同じような事業規模や事業内容の部門間で、大きな差異があれば検証が必要です。ある会社では、同規模の営業所間で旅費交通費に2倍以上の開きがありました。分析の結果、経費精算のルールが統一されていないことが原因と判明しました。
費目間の相関分析: 本来連動するはずの費目間で不自然な動きがないかチェックします。例えば、ある部門で広告宣伝費は増加していたのに、販売促進費が減少していました。実は、同じような施策の計上科目が部門によってバラバラだったのです。
予算との比較: 予算超過の費目、特に期末に向けて急増する費目には要注意です。ある部門では、毎年第4四半期に研修費が急増していました。これは、予算消化のための不要な研修実施だったのです。
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分析レポートの作成:分析から提言へ
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さて、ここまでの分析結果をレポートにまとめる段階です。ここで重要なのは、「発見事項」と「提言」を明確に分けることです。
以前、私が経験した失敗例を紹介しますね。
ある部門の経費分析で、以下のような報告をしたことがありました。
「接待交際費が前年比50%増加しており、売上高比率も2%上昇しています。削減が必要と考えられます。」
この報告に対して、上司から「では、具体的にどうすれば良いのか?」と問われ、答えに窮してしまいました。
その後、同じような分析の機会があった時は、こう報告しました。
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「接待交際費が前年比50%増加(売上高比2%上昇)している件について、以下の対応を提案します。
まず、支出の内容を取引先別に分析し、売上貢献度との相関を確認します
特に高額な接待については、事前申請制度の導入を検討します
部門内で接待方針を統一し、一人当たりの基準額を設定します
これらの施策により、3ヶ月以内に売上高比1%の削減を目指します」
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具体的なアクションプランと数値目標を示すことで、より実践的な提言となったのです。
試算表分析は、一見すると無機質な数字の羅列に見えます。でも実は、そこには企業や部門の「物語」が隠されているのです。
売上の推移は「市場での戦い」を、利益率は「収益構造の変化」を、そして販管費は「日々の経営努力」を物語っています。私たちの仕事は、その物語を読み解き、より良い未来への提言をすることなのです。
分析レポート例(Word形式)をご提供いたします
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本記事の内容をより具体的に理解いただくため、実際の分析レポート例を有料でご提供します。このレポートでは、ある企業の3期分の拠点別試算表を実際に分析し、具体的な提言までまとめた事例をご覧いただけます。
分析対象の試算表数値はこちらです。
特に、数字の分析から具体的な提言に至るまでの思考プロセスを詳しく解説しており、実務での参考としてお役立ていただけるはずです。ぜひ、あなたの分析の指針としてご活用ください。
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