人がすき、だから楽しい
たぶん、看護師は人がすきじゃないと楽しめない仕事だと思う。
優しく穏やかなおじいちゃんと話すのが、楽しい。
リハビリで歩けるようになっているおばあちゃんを見て、感動。
患者さんやご家族に感謝の言葉を言われて、嬉しい。
看護師の仕事は、何も考えずただルーチンのケアをするだけなら、そんなに難しい仕事ではない。
慣れれば誰にでもできることはたくさんあるし、ロボットが代われることもきっとある。
ただし、医療的にも、看護の視点からも、何も考えなければ、だ。
例えばわたしたちは時に、患者さんのその後の生活や安全のために、落ち着かせる薬をつかったり、手足や体を縛る抑制帯を使わなくてはいけないことがある。
必要であれば、患者さんがどんなに嫌がろうとだ。
本当に危なかったり、わたしたちの目が離れる時間はやむを得ないことが多々ある。
危ないからと理由をつければ、そういった手段をとるのは簡単なことではあるのだ。
でも、そこにはたくさんの葛藤があって。
そわそわと落ち着かない方も、うまく言えないことをこちらが汲み取り、何か対処できたら安心してくれることもあるし、薬や病気の影響で次の日には昨夜の自分の言動を覚えていないこともある。
ただでさえ病気に対するショックの中、その上普段と異なる状況下で。
不安になったり、それをうまく伝えられなかったりすることを、理解して、共感して、想像していく。
その患者さんが必要としていることはなんだろう、伝えたいことはなんだろう。
その上で、その人の退院後の生活も見据えて今必要なことはなんだろう、と考えること。
そして、自分や家族がされたら嫌なことはできる限りしない、ということ。
基本の基本で当たり前のことだけれど、何かと理由をつけて、思考を止めてはいないだろうか。
ふと立ち止まって思い返す。
こうして患者さんが本当に求めていたり、必要とされるケアを考えて実行していくのは、ロボットには絶対にできないことで、わたしたち看護師一人一人の個性や腕前が発揮されるところでもある。
そしてやっぱり、その人自身に興味がないと、本当に意味をなす看護はできないと思うのだ。
病気と向き合う患者さんを一番側で支える仕事に就いたからには、医療者としての知識に基づくケアを行うだけでなく、誰でもないわたしにしかできない看護をしていきたい。
そこが、正解がないから難しく、でもやりがいに溢れるところだとわたしは思っている。
"その人のもつ病気"ではなく、"病気をもつその人"をきちんと見つめて。
わたしにしかできないことは、きっとある。
2018.11.28