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結局基礎基本が無いと勝てないのがサッカー〈岡山戦レビュー〉

試合情報

J2リーグ第35節 東京ヴェルディvsファジアーノ岡山 @駒沢オリンピック公園陸上競技場 14:00 KICKOFF 前半1-0/後半0-2 合計1-2
〈得点者〉
【東京V】
(4分)李栄直
【岡山】
(50分)仲間、(84分)上田
〈交代〉
【東京V】
(59分)内田→新井
(87分)森田→澤井
(91分)李→カン
【岡山】
(78分)中野→福元
(85分)関戸→武田
(90分)増谷→椋原

スターティングメンバーと基本フォーメーションはこちら↓

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屈辱の3連敗

今節はファジアーノ岡山との対戦。2連敗の中で勝利を目指し戦うも敗戦し3連敗を喫する。変化は感じるが、浸透するまで時間がかかるものばかり。しかもセカンドボール回収や基本的な1v1のデュエルで勝てない。こうなれば、土俵は岡山のもの。この試合を深く掘り下げていきたいと思う。
ヴェルディはメンバー変更あり。CBに若狭が復帰、CFなら怪我人が多発しているため李が先発。
ファジアーノは特にメンバー変わらず。速攻が得意なチームであり、狙うエリアを明確にし素晴らしいチームであり、球際の強さも随一だった。
それでは「攻撃」・「守備」・新企画の「Haru+」・「被カウンター&ボールロスト分析」の4部構成で振り返っていきたいと思う。

攻撃

まずヴェルディはビルドアップからいきなり変化をつけてくる。それが下図だ。

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今までは4-1-5のビルドアップを採用した方が、今節は左SBに内田を起用することにより、クレビーニョを片上げし3-1-4-2の位置取りへと変化。ここからのビルドアップを狙った。まず基本的な前進方法は2つ。それをこれから紹介したい。

その1つ目がクレビーニョを使った前進パターンである。

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狙いたい事としては相手のプレスがズレることを狙いたい。仲間が内側に位置取り、若狭へのプレスを狙った瞬間に、その奥にできたスペースでクレビーニョが受けるパターンだ。ここで受けることにより岡山CHを引き出し、その次のスペースを生み出すものだ。これに関しては内田からだけではなく理仁や若狭からも配球され、再現性を持って前から来る岡山のハイプレスを剥がすシーンも多かった。裏に抜けるところまで行ったシーンもあり、上手くいったビルドアップの1つだろう。

そして下図が2つ目の前進方法。その前に若狭のコメントを紹介しておきたい。

自分がボールを持った際にはクレビと数的優位を作れるということ。また、カジのポジションが空くということは分かっていたので、そこに通すパスは積極的に狙っていました。(東京V-若狭)

つまり先ほどのビルドアップに関してチームの狙い通り。次のパターンに関しても狙いを実現させた。

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これは先ほどとは違い梶川が5トップのハーフスペースの位置にいるときに限るが、若狭からダイレクトに梶川へのパスでの前進だ。仲間がクレビーニョも見なければならないこと、岡山CHはスライド中で少し縦パスを切りきれないことで、縦のラインが空き梶川に入れて前進するシーンだ。これは完全に狙い通りだし、若狭パスの上手さを引き出した良い形だっただろう。何度か再現性を持ってできていた。

とここで前節もこのようなシーンがあった。それが下図だ。

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これが前節のパターンだ。サイドチェンジからスライドが間に合う前にIHへの縦パスのシーンだ。レビューでもこのパターンはこれからも見られるだろうと書いていたが、今節は狙いとして出すことができた。チームとしての形になりつつあるのではないかと感じる。

しかし問題は右サイドからの前進に偏ってしまうことだ。ここでまたコメントを引用してみよう。

若狭選手は非常にクサビのパスに関して精度の高いボールを入れられるようになってきているので、そこはプランのひとつでした。(東京V-永井監督)

これ、プランの1つとは言っていたものの、依存度が高くなりすぎてしまったが故に右サイドの攻撃が多くなってしまった。これは狙いが実現している意味ではいいので引き出しの1つを得た喜びと、これしかできなかった悲しみを同時に持つべきだろう。これから増えていくことを願う。また最後のボールロストマップで明らかにはなるが、前半のボールロストが右サイドに偏っていることからもその依存度の高さを感じることができるだろう。

そして今節は岡山のプレスの早さにより、いつもとは変えなければならないプレーがあった。それがIHのチャンネルランだ。いつもであればWGがボールを持った際にはポケットもしくはPA脇を狙うような原則がある。しかし、それはボールホルダーの状況がパスを前に出せる時だけに限る。しかし今節は岡山のプレスが早く前に出せない状況が多い中で下図のようなシーンが幾度も出てきた。

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まずWGにボールが入る。しかしその後いつものようにIHが抜けていくものの、そこにはWGが出せない状況。つまり実質チャンネルランの動きが選択肢から消えてしまう動きになっていた。もちろん抜けて空いたスペースに誰かが後ろから入ってくるのであれば良いのだが、そんな選手はおらず。WGと平行の高さのサポートがいなくなってしまい、下げるしかなくなってしまった。これは柏戦では起き得なかった。理由は明確で、プレッシャースピードとカバーする選手の距離が近いことだ。ここに順応できなかったヴェルディは両サイドで行き詰まりなかなか有効なチャンスを作り出せなかった。
しかし、それができるようになったのが新井の投入後だ。新井はカットインが得意な選手。アイソレーションからすぐカットインしクロスを供給しチャンスを創出。こう言った意味ではスタメンで見たかったなと思わされた。

そして岡山の守備方法に関して。割と多くビルドアップが妨害され、前進が上手くいかないシーンも多く見られた。それについて分解していきたい。

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岡山は4-4-2のコンパクトディフェンス。SHは少し内側に絞り縦パスを切ってからスタート。そして1枚のCFがアンカーをカバーシャドウしながらプレス、もう1枚は少しアンカーに寄ってマーク。サイドに誘導してSHの選手がプレス。アンカーがカバーシャドウの範囲から外れるとCHが出ることで対応。CH裏のライン間の選手はサイド誘導でマークが特定されるため、基本は大丈夫だったが、ヴェルディも1度だけ使えたシーンもあるがそれだけに抑えた岡山は上手く守れていただろう。

そして最後は後半開始直後〜15分くらいまでのシステム変更に関して。それが下図だ。

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このように後半開始からは3-4-2-1でのビルドアップに変更。しかしこれが失点を生むミスチョイスとなる。2CHにすることで今までアンカーへの守備へも気を配っていた岡山2CHの守備基準点がハッキリしてしまい、前への圧力が高まってしまった。内田のコメントをここで引用したい。

Q.「中盤に移ってから圧力を強めた相手に対して少し難しそうにプレーしていた印象ですが。」

あのポジションでは前から来ている相手に対して窮屈になるのは当然だと思っています。その中でもっと簡単に相手を裏返すようなやり方も必要だったかなと思います。失点も相手のショートカウンターの形で、あの位置でボールを奪われてという流れでした。(東京V-内田)

これ、おそらく3-1-4-2でのアンカータスクならそこまでプレッシャーは受けなかったとは思うのだが、3-4-2-1にしたことで前述の守備基準点の問題により、さらに相手のプレスの圧力を強くする原因を作ってしまった。
そして内田が言及している失点のことに関して。それも上の図で説明している。岡山2CHの守備基準点がハッキリすることで、バックラインの選手も守備基準点がハッキリする。ヨンジがビルドアップの補助に2CH間に下りると後ろから強度の高いプレスを受けることになり、そこで奪われて失点。完全に采配ミスで自爆したと言ってもいいだろう。こんな結果は当たり前なのだ。なぜ守備基準点をはっきりさせたのか、この決断がどのようなプロセスで行われたのかは個人的にものすごく気になる点である。

守備

そして守備だが、先に岡山の可変フォーメーションに触れておきたい。それが下図だ。

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基本的に、CHの1枚がCB間落ちもしくはチャンネル落ちを実行。SHがハーフスペースにレーンチェンジ。SBが高い位置を取っての3-1-6に可変する形だ。ヴェルディの守備の泣き所である2トップの脇かつSHの前のエリアにCBやCHが来てしまい簡単に前進させてしまった。ヴェルディに上手くハマる可変だったと言える。

そしてヴェルディはいつも通りの守備の4-4-2。少し高めからの守備も多少あったが、やはり泣き所から運ばれたり、前に蹴られてセカンドボールを拾われたりして前進を許してしまった。

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まずは右サイドから。一番狙いたいのはPA脇(SB裏のエリア。まず内田のマークである関戸が下りて、奈良輪を引きつける。そこで空いた増谷を使ってそのままでもSB裏にパス、もしくは内田に増谷へ気を向けさせたらCBの選手やCHの選手からSB裏もしくは裏へと配球した。実際逆転ゴールはこのSB裏の狙いが実った。ここを執拗に狙うことが上手く作用。また好きなようにここに配球させてしまった原因としては、やはりファーストディフェンスの不在だ。この問題は常につきまとう。早く解決しなければならない課題だろう。
また逆サイドの2人の関係性に関しては次から2枚の図で説明するが、少し攻撃パターンの決定にも関わってくるので重要なファクトである。

そして岡山左サイドからの攻撃のパターン。

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まず左サイドの関係性1つ目。廣木が低め、仲間がワイドのパターン。仲間がワイドの際は廣木がインナーラップして内側の選択肢をつくる。そしてCFが1枚SB裏を狙う。この形は逆サイドの増谷までクロスに入ってくるとディフェンスラインの枚数が足りなかったり、仲間の仕掛けも有効なためかなり厄介な形だった。

そして次は廣木高め、仲間がインサイドの場合。

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この場合は単純にディフェンスラインの枚数不足からマークにつききれず、仲間がSB裏に抜け出していったり、その抜けたスペースにCFがサポートしたり上手く攻撃に繋げていた。

このように岡山は攻撃を使い分けながらも、狙うエリアを統一し、どの選手も手段を豊富に持ちながら裏やPA脇を狙い、セカンドボール回収を続けて押し込みながら試合運びをできていた。またこのあと載せるボールロストマップにもどれだけ奥にボールを運んでいたか分かると思う。

Haru+

このコーナーでは取り上げた試合の中から気になったプレーや、データなどを筆者が1つ取り上げ、少しタメになればいいなというコーナー。初回は両チームのアタッキングサードでのプレー率・プレー数、敵陣30m以内のプレー数である。

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(データはSPAIAより引用)
まず岡山が7%近くアタッキングサードプレー率が高く、そこに多くボール運んだ証拠でもある。さらにアタッキングサードプレー数が多いということは、意図的にプレーした回数が多いのでかなり押し込んだということだろう。
ヴェルディはアタッキングサードプレー率は低いものの、プレー数は岡山と20回ほどしか変わらず。つまりそれだけ後ろでのプレータイムが長かったということの証明でもある。
そして、アタッキングサードプレー数と敵陣30m以内プレー数の差を調べたい。ヴェルディは54回減少、ファジアーノは38回減少。これはつまりアタッキングサードの中でも奥の方でヴェルディはプレーできておらず、そこまで侵入することができなかったという証明でもある。それは後ほど載せるボールロストマップからも分かる。ファジアーノのアタッキングサード奥への侵入はシンプルなロングボールを多用していることに起因する。
ここまでから試合の内容として分かるのは、前進の術は用意したものの(つまり噛み合わせ上フリーになるところは見つけていた)、その先のプランはファジアーノの早いプレスを剥がす技術やアイデアに乏しく敗戦したということだ。時間とスペースの貯金は相手のプレッシャーで減るスピードが変わる。岡山のプレスのスピードに対して、ヴェルディがいつもと同じスピードでやってしまうと、時間とスペースの貯金は減るのが早いことになる。これらで負けたといっても過言ではないだろう。ファジアーノは球際で勝ち、進みたいエリアは明確化しており、素早くアタッキングサードに侵入しチャンスを作り出した。
以上より、プレススピードやデュエル、パスの緩急などのサッカーにおける基礎基本が明暗を分けた、そんな試合でもあったと言えるだろう。

被カウンター&ボールロスト分析

そして今回もこの「被カウンター&ボールロスト分析をしていきたいと思う。被カウンターの定義に関しては下のものを定義とする。

1.敵陣でのヴェルディボール保持からのボールロスト
2.ボール奪取後15秒以内にPA付近に侵入しシュートまたはクロスをすること

今回は以下の被カウンターが発生した。

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前節は8シーンあったにも関わらず、1シーンに減った。もちろんネガティブトランジションにおいて、岡山の守備時の密集度が高くなると自ずとヴェルディも距離が選手間の距離が近くなるので、即時奪回の回数が多かったことが1つ目の原因。2つ目の原因としてはボールロストマップを見ていただければ分かるが、ピッチの中央、つまりゾーン2でのボールロストが多いことに起因する。それは岡山がボール奪取しても、まだヴェルディのディフェンス陣や中盤の選手が残っており、カウンターを選択する可能性が低いからである。
以上の理由より被カウンターは1つになったと考える。
被カウンターが少ないのは良いが、それは自分たちの攻撃時の陣形が良くなったからではないということは覚えておいてほしい。まだまだバランスの悪いシーンは散見されるので改善は必要だろう。

そしてボールロストマップだ。レビューの文中に何度も出していたほど、今回は重要なものとなっている。ボールロストの定義は以下のものとする。

チームのプレーから相手に奪われ、相手チームが2タッチ以上のキープまたはパスを1本以上つないだシーンに関してをボールロスト(またGKのキャッチもトランジションが発生するのでカウントする)

ではヴェルディのボールロストマップから見ていこう。

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左下がボールロスト地点の詳細である。
今回の特徴は全体として右サイドのボールロストが多いこと(特に前半)。それは攻撃の部分で説明した、若狭の縦パスのプランに依存し、そちらからのビルドアップに頼ってしまったからである。もちろんこの試合は何度も言うように前進までしかできなかったゲーム。ピッチの一番奥まで行けず手前で取られていることが多いし、サイドチェンジすらも仕掛けられなかったことが丸わかりである。今回、どれだけ岡山にプレーする時間を奪われ、自由にさせてもらえなかったのがよく分かるだろう。それはゾーン2のボールロストの割合の高さからも伺えるだろう。

そしてファジアーノのボールロストマップ。こちらはかなり興味深いものとなった。

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PA脇を狙ったり裏に抜けるロングボールが多いため、ピッチの一番奥のロストがとても多い。なんとゾーン3のボールロストが全体の8割以上を占めると言う具合だ。さらに狙うポイントがハッキリしていることと、ヴェルディのファーストディフェンスがないためゾーン2からほぼ確実に狙うエリアにボールを蹴ることができ、ゾーン2でのボールロストが後半だけの5回に抑えられている。つまり前半はゼロ。これは驚異的だし、ヴェルディは何かを感じとらなければならない重要な事実だろう。相手のボールの出し手の選手がフリーだとこうなってしまうのだ。やはり守備の構築は少しでも早く行わなければ、今後に関して相手チームのゲームメーカーのプレイヤーに好き勝手暴れられることになるだろう。

まとめ

今回のレビューいかがだっただろうか。かなりボリュームのあるレビューにさせていただいた。これを読んでいただいて、さらに読者の方の中で試合のことを噛み砕いて考えてもらえればなと思う。
筆者としては、データを用いてみると負けたのがいかに順当な結果だったのかを痛感する結果になった。このチームはあまりにも足りないものが多すぎる。理論的にはそこまで間違ってはいないと思うが。この理論的な部分を選手達が少しずつでも体現していってくれることを願うしかない。
ではまた次の記事でお会いしましょう。

また以下のような取り組みを始めたので、記事が面白かったと思った方は是非投げ銭の方よろしくお願い致します。

最後までお読みいただきありがとうございました😊

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