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伝統の一戦〈早慶クラシコ〉レビュー~トランジション対決~

試合情報

第70回早慶サッカー定期戦 早稲田大学vs慶応大学 @等々力陸上競技場 18:30KO
前半0-0/後半1-0 合計1-0
〈得点者〉
【早稲田】91分:加藤(10番)
【慶応】なし
〈交代〉
【早稲田】37分:中園(18番)→加藤(10番)
61分:栗島(8番)→西堂(9番)
     73分:神山(11番)→藤沢(14番)
85分:阿部(6番)→山下(17番)
【慶応】 55分:松岡(18番)→ピーターゼン(10番)
70分:山田(9番)→杉本(36番)
     77分:福本(19番)→江本(34番)
79分:野村(4番)→井上(28番)

スターティングメンバーと基本フォーメーションはこちら↓

初めての早慶戦

この日初めて早慶戦を訪れた。普段の大学リーグの感覚に慣れ切った僕は、どのくらい盛り上がっているのか、観客はどのくらいいるのか全く見当がつかなかった。しかし実際に目の当たりにしたのは両大学の応援が鳴り響き、スタンドにはいっぱいの観客がいた。これが70回目の歴史を物語っていると感じた。
まあ、そんな話はさておき、試合について話していこう。
早稲田は筆者の中ではトランジションのチーム。トランジションの際のパワーは中央大学戦を見に行った際にも感じ、チームが低調な時期にもここだけは輝いていた。
慶応は正直見当がつかなかった。もちろん慶応の試合は見たことがないので当たり前だが。ただ一つ分かっていたのはしっかりとブロックは組んでくるだろうなと、関東リーグ2部の試合記録からは読み取れていた。
それでは、振り返っていきたいと思う。

早稲田の攻撃&慶応の守備

早稲田のメインの攻撃は下図である。

攻撃パターンは前半は裏に蹴ることに終始してしまった。まず問題点としては、ビルドアップのために人数的コストがかかりすぎてしまうことだ。慶応の守備時は5-2-3。CFの松岡がサイドに誘導するようにプレスをするため、CBは基本的な選択肢として近くのSB・鍬先(直接or相手2CH前の2人に出してレイオフ)・SHへの縦パス・中園へのロングボール(裏or直接人へ)・逆サイドのSB(直接orGK経由)といったあたりだろうか。
しかしインテンシティの高さや慶応の寄せの早さのせいか、裏に蹴るプレーが増えてしまい最終ラインを引っ張ってもビルドアップ参加の人数の多さが響き、ライン間に誰もいなかったり、栗島がいても横並びで結果一緒になってしまったりと、慶応の戦術のドツボにハマってしまった前半となった。
後半もそこまでは変わらなかったものの、全体的な強度の低下でトランジションの勝負になり、慶応のWBの外側を使うシーンも増えてPAに近づくシーンも増えていた。
そして91分にトランジションで勝負を決める。相手を押し込みクリアボールを拾い、左ハーフスペースから山下のアーリークロスで先制し勝利を収めた。これはトランジションでパワーがかかるチームだからできたことなのかなと思っている。

この試合で攻撃が手詰まりしてしまったのはSHが幅を取る役割だったからかなと思っている。相手は5バックを敷いてくる中で、SHとWBの1vs1、1CF+1OHvs3CBである。なかなか前線につけられない状態が続いた。上手く対応され、やはりライン間の攻防にすらならなかったのが痛かったところなのかなと思う。

そんな中で個人的にピックアップしたいプレーとしては25分辺り、大桃からおそらく杉田に出した縦パスである。通らなかったものの、この縦パスを通しにいこうという気持ちがもっと見たかったなと思う。やはり中央大学戦で抱いたボールポゼッションの構造のイマイチな感じがあまり修正されていないなという感じを受けた。中央大学との試合では相手が4バックだったこともあり、サイドチェンジで少しはマシな感じではあったものの、この試合ではごまかせなくなったのかなとも思わされた。これからは対早稲田大学の対策としてボールを持たせてブロック形成してくるチームも出てくるのかもしれないなと感じた(カウンターができる前提にはなってしまうが)。

慶応の攻撃&早稲田の守備

慶応のボール長期保持からの攻撃の図は下図だ。

順番としては5-4-1→4-4-2→3-2-5の順番で変形していく形。
まず4-4-2への変形では右サイドのWBとSHが1列ずつ上げて変わっていく。この時慶応の9番山田は阿部が見ればいいが、WBはSHの杉田がついていかなければならず、かなり左SHが押し込まれる展開となり、慶応は狙い通りだったのかなと思った。その後WBが上がって3-2-5になる形だ。
しかし、早稲田のサイドの選手の守備がかなり粘り強く、慶応は両サイドでPA脇まではある程度再現性を持って侵入できるものの、なかなか自由にクロスを上げさせてもらえず、ゴール前でボールを触る機会は少なかった。シュートは多かったものの、遠目からやブロックの外側からが多く脅威にはならなかっただろう。決定機に関してはこの次の画像に絡めて説明していきたい。
慶応もサイドまでは運べてもその先は個人の質に頼ることになってしまい、そこではさすがに早稲田には劣る結果になったので、ポケットに侵入する工夫をチームとして考えていけるともっと格上にも勝負できるのかなと考えている。

そんな中でもワンシーンだけは早稲田ディフェンスを完全に崩し切ったシーンがある。87分、14番橋本がワンツーで早稲田のSBを引き出してディフェンスラインを攻略しポケットへ侵入。シュートはセーブされ枠右へ飛んでしまうもこの攻撃は素晴らしいものがあったと感じた。

ただ慶応のメインパターンはボール長期保持ではない。実際上図の形も数多くは引き出せなかったのが現状だ。早稲田の4-4-2の横圧縮には耐えれなかったシーンも多かった。

そしてもう一つの慶応の攻撃パターンとしては、前プレからのショートカウンターである。それが下図だ。

先ほど、早稲田の攻撃の場面の慶応の守備と繋がることになるが、うまくサイドに誘導して早稲田SB周辺で奪い切ったときには、ハーフスペース間に早稲田DFラインを寄せて、逆サイドのWBが出ていくシーンがあった。これは、3トップで守備をすることによりネガトラも考えてボールサイドに寄ったり、そもそもSBがあまり上がらない攻撃陣形のため余計逆サイドが空くことになってしまった。
この攻撃ではこの試合でも最大の決定機を演出し効果的な攻撃としてかなり機能していた。慶応のWBを中心にトランジションでしっかりと勝負できていたのは早稲田との熱戦を演じた一つの要因なのかなと思う。

しかし慶応のはゴールに近づく設計は良かったものの、肝心のフィニッシュワークが上手くいかず、得点には至らなかった。それでもわくわくさせてくれる攻撃を繰り出したのは慶応だったなと思う。

まとめ

総括してみると、内容は慶応。結果は早稲田。そんな試合であった。早稲田の選手たちもそう感じていたようなので、事実なのだとも思う。早稲田は1発を決めれる精度があったし、0-0で粘ってトランジションの多い時間帯まで引っ張れたのは大きいのではないかなと思う。
そしてMVPは早稲田のSB・SHでプレーした選手達としておきたい。これは、慶応の最後の仕上げの部分で簡単に仕事をさせなかったことは、終盤まで0-0で持ちこたえられた大きな要因だと思うし、勝利に大きく貢献した選手だと思う。
各チームの印象は早稲田は特に変わらず、今まで通りかなと。慶応はかなり守備の仕方が上手いなと感じた。DFラインに余裕を与えない守備はとても良かったと思う。引いている時間も跳ね返していたし、早稲田の裏へのボールも難なく対処していたので、とても守備には好印象を抱いた。
今回のレビューはれうすさんのリクエストに応えた形で書いたが内容はどうだっただろうか。3000文字程度のレビューにはなったが、内容はとても充実した試合だった。
初めての早慶クラシコは思い出深いものとなった。学生スポーツの概念というか、固定観念が覆されるような気分になったし、やはりこれからも大学リーグを応援していきたいなと感じた。
またここ2週間で明治vs川崎、法政vs東京V、早稲田vs慶応の学生の試合を3試合連続で現地観戦してみて、やはり学生サッカーならではの楽しさや良さを感じることもできたので、是非みなさまにも各地域大学リーグや総理大臣杯、インカレに足を運んでいただきたいなと思う。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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