守備ブロック破壊の解は来季に期待~多くの別れとともに~〈岐阜戦レビュー〉
生放送やります!
今週の金曜日、11/29の夜8:00より「2019シーズン忘年会生放送」と題しまして、Periscopeにて生放送を行います!下のツイートに詳細はすべて載っておりますので、ご視聴いただけると幸いです!Twitterから筆者のツイートより視聴することもできますので、まだフォローしてないよという方はぜひフォローしてください!
試合情報
J2リーグ第42節 東京ヴェルディvsFC岐阜 @味の素スタジアム 14:00KO
前半3-0/後半2-1 合計5-1
〈得点者〉
【東京V】
(38分、44分、74分)小池、(45+1分)レアンドロ、(86分)パライバ
【FC岐阜】
(88分)塚川
〈交代〉
【東京V】
(62分)クレビーニョ→佐藤
(75分)梶川→井上
(84分)レアンドロ→石浦
【FC岐阜】
(52分)川西→前田
(52分)柳澤→塚川
(73分)藤谷→中島
スターティングメンバーと基本フォーメーションはこちら↓
迎えた最終節
なんだかんだで最終節を迎えたJ2リーグ。何があってもこの試合で、2019シーズンのこのチームは最後。結果は伴わなかったが、ヴェルディの選手として戦ってくれた選手との一旦のお別れはやはりさみしいものがある。タムさんに関しては本当に最後。エンブレムとも。前半戦のイメージからすると岐阜戦は難しい試合になるかと思ったが5-1で完勝。来季につなげると話しているので、内容はしっかりと見ていきたい。勝てばいいだけではない。ただの消化試合としないためにも。
それでは攻撃、守備、Haru+、被カウンター&ボールロスト分析の4部構成で振り返りたい。
攻撃
まずはヴェルディの基本的な攻撃から。1つ目はサイドチェンジ。
岐阜は守備時4-4-2。後方の4-4ブロックと前方2トップの前後分断とインテンシティの低さから、簡単に1列目を越され、プレッシャーがあまりない中ボールを持つことができた。それでもコンパクトな陣形を維持した岐阜は、5トップのヴェルディに対応しきれない。サイドチェンジをされてクロスなどを上げられてしまっていた。またサイドチェンジののちに、岐阜SBが引き出されIHがチャンネルラン。PA横までは侵入することができた。しかし問題はそこから。PA横までは侵入できるが、相手ディフェンダーに対応されその先に進めない。個人的には同じ視野内で全てが行われてしまい、守る側としては情報の入手と処理から行動へのサイクルが簡単にできてしまう。ちなみにカジは試合後のコメントで以下のように話した。
Q.今日はフロントボランチの選手がいつも以上に周囲に選択肢を与えるプレーができていた印象ですが。
カジ)特にフロントボランチのところは相手がウチのワイドに入った時にポケットを狙って動き出すなど、そういった動きによってスペースができますし、ボール保持者に対しても選択肢を増やすことになるので、ボールが出てこなくてもそういう動きを頻繁に繰り返したり、奈良輪さんのサイドから逆のフロントボランチが裏を取る場面もありましたし、そういう動きがないと、逆に上手く足元で繋ぐことは難しいので、相手を押し込むというか、相手を自陣に押し込むという意味でああいう裏への動きはいつも言われている部分でもありますが、今日はうまく出せたと思います。
チームとしては選択肢を増やすためということで、かなりオートマチックに行われていた。ただ有効にポケットに侵入したシーンやWGの選手から良い攻撃にいけたのは右サイドではそんなに見られなかった。なので、相手に合わせてポケットへの侵入のタイミングを変えてみたり、左サイドのようにインナーラップを積極的に採用してもいいのかなと感じる(今節は田村が右SBだったので難しい状況もあったが)。
そんな中、打開策になりうる形がこの試合の69:45にあった。それが下のGIF。
少しボール保持からではないシーンなのだが形としては理想的だった。大外の選手がボールを持つとハーフレーンを裏へランニングする形なのだが、一度WGからセンターレーンの選手にパスして、そこからポケットは侵入するものだ。これを同一視野内で全て見て、ハーフレーンをランニングする選手に対応するにはラインを下げるなど、少し現実的ではない手を打たざるを得なくなる。
もう一度この形をシンプルに説明すると、アウトサイドレーン→センターレーン→ハーフレーンの相手の裏という順序での攻略である。今のところアウトサイドレーンからセンターレーンにパスを積極的に出せているのはパライバなので、彼の存在は来季重要になるかもしれない。今のヴェルディの動きはPA横に侵入するオートマチックな形になってしまい、相手のスライドだけで対応できてしまう。相手のブロックを攻略するという意味で、この試合では全くもってできていない。この現代サッカーにおいてネガトラが岐阜ほど整理されてないチームが多いとは思えない。ブロックを攻略する手立てを持たなければ、来季はまた難しいものとなるだろう。
今節最も攻撃のシチュエーションとして多かったのは岐阜のネガティブトランジションを狙ったカウンター。それが下の図。
岐阜は2-2-5-1での攻撃。2-2の脇はほぼノーカバー。ヴェルディは前プレを敢行していたため、SHの槍の役割の選手がすぐに刺しにいける状態。岐阜は自陣敵陣関係なくイージーミスが目立つ。ボールロストを繰り返し、すぐにヴェルディに2-2の脇からカウンターを受けてしまう。そこから得点を幾度も決められたのは良かっただろう。岐阜を研究した結果として反映された部分である。
後半からは岐阜が前プレを開始。しかし、下のGIFのように交わすことができた。
SBに岐阜のSHが出てサイドに誘導していく守備。ヴェルディはIHを岐阜CHの脇に下ろしてボールを受けて前進。4得点目の小池のゴールは岐阜のプレスを上のGIFの示唆した2CHの脇のスペースを利用し得点することができた。もちろん、誘導された先で引っかかる場面もあるのが事実で前半ほどボールを支配することはできなかった。後半に自陣側でのボールロストが増えたのはのちに述べるボールロストマップにてはっきりしてくるのでご覧いただきたい。
守備
まず守備ではネガティブトランジションについて触れたい。それが下のGIF。
このようにアンカーがファーストディフェンダーになるパターンである。これは正直いい状態ではない。それは岐阜が2トップを攻撃に向けて残しているシーンもあり、アンカーがファーストディフェンダーになった途端カバーにはCBが出ていけない。つまり3v3を作られてしまうということである。また攻撃時にSB-IH-WGのトライアングルで1人が後ろを取れず、ネガトラへの対策はそこまで進んでいないなと。このリスク管理を怠ると余計な運動量を消費し、試合運びやシーズン全体に影響を与える可能性もあるので、ここも来季に期待といったところだろう。
岐阜がこの試合で執拗に狙っていたのはヴェルディのSB裏。バックラインと岐阜前線4枚が噛み合うので藤谷のオーバーラップや馬場のサイド流れでマークを外しPA横に侵入。シンプルなクロスという流れを何度も繰り返していた。最終的には森田とミスマッチ気味になった塚川に馬場のクロスから決められてしまった。
この森田のSB起用に関して。これはSBのタスクに対応できるディフェンダーがいないのではないかと考える。クレビーニョを交代させることが多いが、その代わりに置ける選手がいない。そこで中盤のタスクをできるプレーヤーとして森田が選ばれたのだと考える。このポジションは補強のポイントになるだろう。
Haru+
レビュー対象試合のデータやワンシーンを切り取って紹介するこのコーナー。今回はクロスの成功率について。
ヴェルディは今節サイドチェンジからクロスの流れを多用していた。チームとしてはハイボールを競れる選手がいないので、理想のシーンはグラウンダークロスとなる。また今節に関しては、相手の4バックに対して5トップで、逆サイドのWGが余るにもかかわらず、ファーサイドへのクロスは少なかった。それが下の画像のクロス成功率の低さを物語っている。
このようにクロスに狙いを持たなかったがために、30本のクロスがかなり不意になったといっても過言ではないだろう。個人的にこれが非常に気になったポイントである。クロスの有効性で言えば、岐阜はたった7本で得点に結びつけている。もちろん森田のSB起用も響いたものの、狙いをもっと持てたのではないかなと感じた。成功が3本という現実は意外と重いのではないのだろうか。
被カウンター&ボールロスト分析
今節、対象になるカウンターは1つあった。そしてカウンターの定義に関しては以下の通り。ネガティブトランジションに関して検証するためのものである。
1.敵陣でのヴェルディボール保持からのボールロスト
2.ボール奪取後15秒以内にPA付近に侵入しシュートまたはクロスをすること
先程、守備のトピックでネガトラ時にアンカーなファーストディフェンダーになることのリスクに関して述べた。実際このシーンはアンカーをパスで超えられてしまい、2トップvs2CBの数的同数のシチュエーションになってしまった。そのあと速攻で縦に前進されシュートまで持ち込まれてしまった。このように、相手の最終ライン攻略の際に、リスク管理を頭に入れたサポートをしてみる必要があるかもしれない。
今節対象になったのが1つのみだったが、相手のカウンターの質に助けられた部分が多かった。さらに質の高いチームになれば何度も破られていた可能性が高い。ただ1つ触れなければならないのは、藤田の危機管理能力。セカンドボールやファーストディフェンダーとしてカウンターの芽を摘むこともあり、非常に良さを感じた。ここに組織としてのトランジション対策が入ってくればチームとして失点を減らす事に直接結びついてくるだろう。
そして次はボールロストマップ。ボールロスト定義に関しては以下の通り。
チームのプレーから相手に奪われ、相手チームが2タッチ以上のキープまたはパスを1本以上つないだシーンに関してをボールロスト(またGKのキャッチもトランジションが発生するのでカウントする)
まずはヴェルディのボールロストマップから。
前半は岐阜のファーストディフェンスの強度から、ゾーン2までのラストは3つのみ。ただゾーン3でのクロスや中央突破のミスが目立った。オートマチックに押し込めた分、その先のアイデアや攻略の部分でなかなか上手くいかなかった証拠でもあるだろう。この部分は来シーズンへ持ち越し。オフでしっかりと攻撃の精度と目指すエリアにしっかり侵入できるようにして欲しい。
後半に関しては岐阜が前線からの強度を高めたこともあり、少しずつロストが自陣寄りに。その分裏返せるのこともあったので悪くはないだろう。岐阜の強度の関係上そこまで参考にはならないかもしれないが、ブロックを攻略するところの課題は見えるものであった。
そしてFC岐阜のボールロストマップ。
全体としてイージーミスが多かった印象の岐阜。ビルドアップに関してもヴェルディの1列目2列目を超えるのが難しく、ゾーン2でのロストがかさんだ。そこから直接失点したりとビルドアップの部分の改善は大事になるだろう。後半は前線からのプレスでボールを握る時間が少し増え、敵陣深くまで運ぶことができた。今シーズンは終わってしまい、来季からはJ3ではあるが、昇格のためには攻撃の発展は必須。ビルドアップでの立ち位置の改善からどうしていくかは、来季注目であるだろう。
まとめ
今シーズン最終節は5-1で快勝。しかし課題も多いことがハッキリしてきた。来季に向かってやる事は多い。まず移籍市場で選手を揃えて、万全の状態でチーム作りをしていってほしい。
そして田村選手の闘志を見られた試合だった。相変わらずのスライディングタックル、試合後のコメントも彼らしかった。個人的には中央大学出身選手として応援してた節もあったので、ヴェルディで長い期間見られた事は非常に嬉しかった。本当にお疲れ様でした。またヴェルディに関わってくれたらなと。
そしてエンブレム。筆者が応援しはじめたころ(2008年)にはこの形のエンブレム。このエンブレムを胸に応援し続けてきたので、少し寂しい気持ちもあるが、このエンブレムの誇りを胸に新しいエンブレムでも応援していきたいなと。
ヴェルディのレビューという意味では次の記事は来年になると思うが、また読んでいただけるとありがたいと思う。それではまた次の記事でお会いしましょう。(まだ少し続きます)
読者様への感謝と筆者より今シーズンを終えての感想
まず今シーズン、ヴェルディのレビュー・プレビューを読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。今年から始めた初心者のレビューを最終的にはPVが最高1500近くまでいくくらい読んでいただけたのは、始めた当初から読んでくれた方々のおかげだと思います。とてもモチベーションになっています。最終的にはヴェルディのサポーティングパートナーになる企画を始めることができ、再来年の達成をめどに頑張りたいと思うので、これからも興味ある方は読んでいただけると嬉しいです。
このヴェルディというチームがいろいろな課題にぶつかり、それをレビューという形でパブリックなものにしながら考えることができたのは良いシーズンだったなと。もちろん良い結果の出たシーズンではありませんでしたが、指導者もしている筆者としてはたくさんのことを学べたシーズンだったなと思います。(ヴェルディには昇格してほしいですが笑)
正直、三日坊主の筆者がこれほどまで継続するのは想像できなかったです。楽しいものでも継続させるのは難しい性分なので、ヴェルディというコンテンツのパワーを改めて感じた次第です。来季もなるべく記事を出していけるように頑張っていきます。楽しんで書きながらも、皆さんの考えの一助になればと思いつつ書いていきますので、これからもよろしくお願いします。これからオフシーズンに関してはレアルソシエダのレビューを書いていけたらと思いますので、興味ある方は読んでみてください。
また下の記事のような取り組みをしております。もし記事が面白かったと思った方がいらっしゃれば投げ銭の方お願いいたします。
今シーズンの最後までお読みいただきありがとうございました!
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