レビューサムネイル4

大勝だけど…果たしてこれでいいのか。〈山口戦レビュー〉

試合情報

J2リーグ第31節 東京ヴェルディvsレノファ山口FC
@味の素フィールド西が丘 16:00 KICK OFF

〈得点者〉
【東京V】
ジャイルトン・パライバ(10分、55分)、井上(19分)、レアンドロ(50分・PK)
【山口】
なし
〈交代〉
【東京V】
46分:森田→小池
72分:クレビーニョ→河野
84分:山本→新井
【山口】
46分:吉濱→池上
53分:工藤→宮代
62分:高井→岸田

スターティングメンバーと基本フォーメーションはこちら↓

画像1

久しぶりの快勝

ヴェルディはジャイルトン・パライバをデビュー戦初先発。フッキのような活躍を見せてくれるのではないかと加入後から期待されていた。永井監督の熱望した選手はしっかりとフィットしているため、パライバも活躍が見込まれていた。そして潮音が先発。左WGで、これまでもWG起用されていたため何か意図がありそれを汲むことができるかもと筆者は考えていた。 
レノファは高のU-22日本代表への選出を踏まえて、三幸がアンカー起用、IHは2人とも変更され山下と高井、左SHには吉濱が先発。他は特に変更はなし。
両チームともに守備に不安を抱える状態での試合となったため、いかに得点を決めるか、攻撃の質が勝負を決めることになるだろうとも予想された。そんな中で4得点とクリーンシート。良かったようにも思う。
それではいつも通り攻撃と守備の2局面に分けて振り返りたいと思う。

攻撃

まずはビルドアップの場面。

画像2

基本的には4-1-4-1をキープしてのビルドアップ。クレビーニョがハーフスペースの少し高めをとることが多かった。そこで空いたアウトサイドレーンにパライバ、もしくは梶川が下りてくる形が工夫として見られたものの、試合全体としてビルドアップが完ぺきだったシーンは少なかった。それは山口の前線からの人に来るプレッシングや、中盤の選手がターンして前を向くことができなかったのも原因だろう。
またヴェルディのIHの対して山口がCBを押し出すことで中盤の数的劣位を解消し、ビルドアップを封じていたのも原因の一つだろう。プレビューでは中盤の選手が1人は空くのかもと考えていたが、そのあたりは山口がしっかり対応してきたと考えられる。
そしてこの形にはリスクも含まれている。この形の場合クレビーニョのいる位置まで下りていく選手はいないためネガトラの場面でかなり危険な区域になるということだ。今節ではこのスペースを使われてからピンチになるシーンはほとんどなかったと思うが、これからは狙われることもあるだろう。

上図からも分かるように山口はワンサイドに寄っての守備をするため、サイドチェンジで簡単に敵陣の中ほどまでは前進できてしまうため、かなりスピーディーな展開となった。ヴェルディとしてはもう少しボールを持つ時間を増やして押し込んでいくフェーズは必要ではないかと考えられる。それは自らペースコントロールができないと体力的消耗やネガトラの状態を整えるためにもこれからできるようになってほしいところである。

山口はレアンドロに対しては特定のマークをつけなかったため、下図のような形もあった。

画像3

レアンドロが山口中盤ラインの前まで下り、そこからサイドへ展開するものだ。その際、右WGのプレーヤーはインサイドに絞り相手を引き付けてクレビーニョにアウトサイドレーンを明け渡すというものを意識的にやっていたように感じる。これはパライバでも潮音でも見られた動きで、再現性を持って前進できていた。山口は前から来るため、裏のスペースを存分に生かせたのは良かっただろう。

そして一番前進で多かったのはポジティブトランジションからのサイドへの展開だろう。山口の攻撃の構造的に上がったSB裏のエリアが空いてくる。

画像4

山口の攻撃をヴェルディのブロックの外側でボールを回収できることも多くなり、そこから直接サイドのエリアに運べることが多かった。ここに関しては守備の部分で触れることにはなるが、オープンかつ早い展開になった原因といえるだろう。これは山口の攻撃の構造上の穴なので突けたこと自体は評価していくべきと考える。

もう1つ。前半で良い展開ができたシーンがあった。それが下の画像である。

画像5

画像では右SBからCFへパスしているが正しくは右CBからのパスであるので少し間違っているがご了承いただきたい。近藤→レアンドロ→レイオフで梶川→サイドチェンジで潮音へと展開したシーンである。前節のレビューでレアンドロのレイオフに関して触れていたがしっかりこのシーンでは逆サイドへの展開をレアンドロに代わってできていた。この点は非常に評価できるだろう。

後半はレノファが3-1-4-2に変更するものの、攻撃に変化はなくポジティブトランジションでの前進から早いタイミングでのラストパスでかなり早い展開には特に変わりはなかった。そのあたりは守備の方で触れようと思う。

そしてちょっとだけ潮音のWG起用に関して。少し前からWG起用が続いていたので個人的にも何か光るものがあるのかなと考えていた。もちろんサイドのプレイヤーではないので突破とかではないと思うのだが、今節思ったのはサイドから中に入る動きに関しては上手く相手の視野外から入ってこれているなと感じた。WGはサイドに張っているだけでなくフィニッシュワークも当然大切だ。つまり潮音のサイドで前進して逆サイド展開からクロス。そこから潮音のフィニッシュも考えられるので、いいサンプルの試合になったのではと思う。そんな中で潮音の動きには光るものを感じた。もしかしたら他に計算できることがあっての起用かもしれないので今後も考えていきたい。

守備

今節は前線からの守備も少し敢行していた。それが下図である。

画像6

この守備の局面はそこまで多くはなかったものの、正確な前プレとして機能していったように感じた。山口のアンカーにCHを押し出して4-3-1-2に可変するものだ。サイドに圧縮してボール奪取、もしくは今節の場合はアンカーにマークがいることとボールホルダーにプレスがかかっていることでヴェルディのブロック外から時間をかけてサイドチェンジを強制できていたのでスライドも間に合い前進を阻害できていた。

次はセットディフェンスの場合だ。

画像7

レノファの基本的な攻撃は左サイドでのボール保持から、逆サイドでアイソレーションの田中にサイドチェンジ。そこから奈良輪のプレスで空いたチャンネルに前がチャンネルラン。このパターンを基本としていた。ヴェルディは奈良輪が出ていくのが基本としながら、しっかり井上が前についていくことで対応できていた。また奈良輪が距離を詰め切らないことで相手の攻撃を遅らせカットインのカバーを待ち田中から自由を奪っていた。もちろん縦方向のドリブルもあるのだが、前のインナーラップがアイソレーションの前提にあるのでそのスペースは前が使ってしまい縦方向の仕掛けがなかったのは必然といえるだろう。それを見ての奈良輪の対応は素晴らしかっただろう。

またサイドチェンジする前に山口は同サイドで崩すための人数もかけているのだが、致命的だったのが中盤ラインにズレを作り出すことができなかったことである。これだけライン間に選手がいながらも直接の楔を打てたシーンは少なかったと感じる。もちろんヴェルディの中盤の選手のディアゴナーレ(※1)が素晴らしかったとも言えるが、その中でも裏の動き以外にあまり工夫が見られなかったのが印象的である。そういう意味でもその場でボールを奪えれば攻撃の方で触れた3枚目の画像のようにカウンターに移行できるし、またサイドチェンジが予測しやすく攻撃をある程度は妨げられたともいえるだろう。

※1:ディアゴナーレについてはこちら↓

そして後半は山口のが3-1-4-2へ変更。それが下図である。

画像8

山口は3-1-4-2変更後は両HVの攻撃参加もありほぼ1バックのようなシーンも見受けられた。しかし崩していくというよりは幅を使ってからのクロスが多く見受けられた。もちろんは4バックなため相手の前線の枚数に耐えきれずフリーにしてしまうシーンもあったが上福元を中心によく守ったと思う。戦術的によかったとかではないが、結果が重要であることもまた事実。今節の4-0であったという事実からも途中から3バックへの変更もあってよかったのかなと個人的には感じる。

また攻撃の最後で少し触れたが、この山口の攻撃パターンの弱点はサイドにスペースが生まれることである。ヴェルディはここを中心に前進を続けて後半は攻めることができていた。しかし相変わらず時間の使い方が上手くないと感じるシーンもあったため、得点差に対してどのように試合をコントロールするのかは今後に向けても課題だろう。なぜここに対して強く言うかというと、ヴェルディはネガティブトランジションの整備ができていないからというのが一番大きい。カウンターでフィニッシュを急ぐということは後ろを待たないということや、後ろの陣形を崩した状態を許容することでもある。そのなかでラストパスがずれた場合にはカウンター返しで簡単に自陣深くまで侵入されてしまう。これではまるで意味がない。ましてや今節のように大量リードならなおさらである。ここに関しても永井監督がどう思っているかは分からないが、個人的には修正して然るべきポイントかなと感じる。

また試合を通してシンプルな裏抜けに対応できなかったり、失点ぎりぎりのシーンも多くあった。これは事実なので重く受け止めないといけない。少しづつでも守備の変化が必要だし、筆者も注意深く見ていきたいと思う。

まとめ

今節のレビューいかがだっただろうか。少し試合の解像度的には筆者の満足いくレビューではないが、実力不足だと思うので精進したいと思う。
また試合の内容的にはパライバの実力を確認できたうえで大量得点&クリーンシート。クリーンシートに関しては上福元中心にハードワークして何とか手に入れたので今後増えてほしいなと感じる。攻撃の部分では前進からフィニッシュまでの時間が短すぎる課題はもう少し改善されないと、相手を圧倒することはできないだろうなと思うので期待しておきたい。タイトルに関しては本文の中でも修正ポイントに関して多く触れたがそういういみでは満足できるものではなかったのも事実。現実を見つつ先に進みたいと思うので。
山口はアイソレーションの他にある程度同サイドの攻略もできないと厳しいのではないかと感じる。アイソレーションだけになるとそこで奪われ即被カウンターのリスクも抱える陣形で攻撃しているからである。もちろんSBのインナーラップがセットになっていることも含めて。ネガトラの感じはどことなくヴェルディの香りもしたが。笑
それでは次の記事でお会いしましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?