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課題を乗り越えた先の『顕著な課題』

J2リーグ第12節 東京ヴェルディvsV・ファーレン長崎 @味の素スタジアム 15:00KO
前半1-0/後半1-1  合計2-1
両チームスターティングメンバーと基本フォーメーションはこちら↓


やっと手にした勝利

ヴェルディは3試合連続での1-1での引き分けが続き、内容が伴いかけているだけに、そろそろ勝利が求められる試合となった。スターティングメンバーの変更としては近藤が2試合ぶりの復帰。他は特に変更なし。気温が高いコンディションだったため中盤3枚がどのくらいの運動量を持って90分戦えるか、また課題であった交代枠の使い方、ゲームクローズのプランニングも注目していた。
対するV・ファーレン長崎は4戦無敗でホームにやってきた。前節の鹿児島戦ではゴールはなかったものの、その前の試合では複数得点を記録しており、元W杯戦士の玉田擁する攻撃陣は脅威である。またここ最近好調の香川がいるのも脅威だし、久々に見れるのはとても楽しみにしていた。

それでは攻撃と守備の2局面に加えて、ゲームクローズのプランニングの項目を追加して書きたいと思う。

攻撃

今節のビルドアップは下図のような形。

長崎は前線2トップからのプレッシングはなく、ある程度の前進は幾度となく許していた。その影響は大きく、その後にディフェンスする長崎SH、CH、SBにかなりツケが回ってきていた。それは前線からのパスコース制限がないため、どこで奪うのか、どの選手にどの選手が守備に出ていくのかなどがはっきりしなかった。またこの試合でヴェルディが見せたビルドアップは少し新しいものになっていた。前節岡山戦は、優平がSHの近くに位置してSBに出ていきづらくし相手の守備の動きを制限するものだった。
しかし今節は中盤の3枚があえて中盤から外れ潮音がCB間、優平がチャンネル落ち、コウタが右ハーフスペースを取っていた。一度6-4の2ラインに分かれてから前線4枚のうち、左ハーフスペースの純輝、センターレーンの端戸、右ハーフスペースの皓太が相手中盤の前(ヴェルディのゴール側)に降りてきて相手に常に後手の守備を強制し、また相手の守備の基準点を高確率で乱せるので長崎に対してはかなり効果的なビルドアップの方法だったのではないかなと思った。

また先制点はボールを持った皓太が右アウトサイドレーン、右ハーフスペースに端戸、センターレーンに藤本、左ハーフスペースに小池が配置できており、選手が入れ替わりながらもしっかり各レーンに選手がいる状況が実現できておりPA内にも人数がかかっていたため、より攻撃時のポジショニングが整理されてきたんだなと実感したシーンでもあった。

守備

今節の守備は特に変わったところはなかったが、相手の2CF+2SHの動きがもっとあった時のことを考えると、勝ててなかったんじゃないかなと思った。そんな守備陣形の図が下図である。

ヴェルディの守備陣形は4-5-1。長崎の攻撃陣形は両SHがインサイドに入り、両SBが少し高い位置を取る2-4-4の形。前半の運動量のある時間帯は多少長崎SBにワイドの位置で持たれてもヴェルディのSHがプレスに行き、クロスを上げさせる場面はそこまで作らせなかった。ただそれが実現できたのは、長崎の最前線4枚がヴェルディの中盤5枚の幅を中央に圧縮するような動きを誘導してこなかったおかげでもある。
たとえば、澤田や大竹がヴェルディのSH-IH間に落ちてきてくさびを警戒させて少しヴェルディのSHを内側に動かすだけでも良かったと思う。それをされたヴェルディはおそらく早めの時間帯から5バックのような陣形を敷き、押し込まれ勝てたかは割と微妙なところだったのではないかなと試合を見ながら筆者は思っていた。

また敵陣内でのプレッシングにも触れておこう。それが下図である。

基本的にはヴェルディIHの2人のボールサイドの選手がボールを持つ相手CHにプレス。CBに下げたところをそのままジャンププレス(IHの選手がCBまでプレスに行くこと)でIHの選手が最初にプレスに行った選手をカバーシャドウ(背中でパスコースを消すこと)しながら追い、ほかの選手は順次マンツーマンの守備をし、相手に蹴らせるものだった。ただこの守備、割とピーキーな面がある。それは特に優平がボールを追いすぎてしまい、あまり追い込めてないシーンなのに自分のいたスペースを空けてしまい、疑似カウンターのような攻撃を食らう可能性があることだ。実際前半の35分過ぎから、プレスがかみ合わずカウンターを食らう場面が増えてしまった。これに関してはしっかりと後ろの選手が声をかけるなりコミュニケーションを取らないと減らない事象でもあるので、チームの中で改善してほしいところでもある。この現象が多く起きてしまったことで、前半ボールを持っていたはずなのに、シュート数が3-8のような支配率と逆の数字が出てしまった。

追加でカウンターの種になったのは、中盤3枚が同一サイドに寄りそのシーンでボールロスト。そこから中盤のいないスペースを使われたカウンターも多く、相変わらずネガティブトランジションには多くの課題を抱えている。

クローズプラン

ここ最近の試合ではどうも試合終盤に必要以上に押し込まれることが多かったと思う。今節も顕著だった。今節の後半26分からのフォーメーションの変遷を見よう。
・まずレアンドロ投入の後半26分

・そして失点直後の後半34分

・そして永田投入後の後半44分

こんな風に変わっていったので、一つずつ見ていく。
まず最初の5-3-2。これの狙いとして考えられるのが
1. 5バックで5レーンを埋め守り切ること
2. 2トップにしておくことで前線のカウンターの起点を複数つくり自分たちの攻める手立ての確保

である。ただこのフォーメーションは中盤の負荷が高い。一番最初のところで「暑さによる中盤の運動量」について触れたが、選手たちは後半10分で全体的にスローダウンし、トランジションもあまり付いていけなくなっていた。そんな中で中盤3枚で横68mを試合の終盤からスライドするのは酷な話なのである。ここで分かるのは多少我慢してでも、中盤を5レーン埋めてスライドの動きを減らし、なるべく縦の動きだけにするほうが理にかなってるんじゃないかということだ。

そして失点後の4-1-4-1。これは現地で見た感じだと、優平が指示を出してこのフォーメーションに変えていた。このフォーメーションは中盤5枚で全レーンを埋め、先ほど主張した形になっていた。ただワントップレアンドロは攻撃時収まるのはいいものの、守備時に常に制限をかけてくれる存在ではないのだ。これがネックになったのも事実で、ここに関してはやはり交代枠で誰を切るべきなのかという問題に直結するだろう。個人的にはコイッチでもよかったのかなと思っている。
また前から行けないので、角田がドライブし、ヴェルディSHとCHに対していくつかの選択肢を突きつけるような形をいくつも作っており、この形では簡単にライン間に侵入されてしまっていた。

そして最後の5-4-1。まあこれはとにかくゴール前にバスを止めるパターンの守備だったと思う。これに関しては後半44分からだったこともあり、特にいうことはない。

自分は最後の5-4-1の前までのプロセスが大事だと考えている。タイトルの『顕著な課題』とはゲームクローズの部分だが、もっと交代カードの選択肢が中盤を補助するような切り方だったり、せめて後半40分過ぎくらいまで4-5-1のセットディフェンスを敷いて攻撃にもある程度転じられるようにしてみてもいいのではないかと思う。

そもそも今節の中盤の運動量の感じだと、攻撃と守備のタスクが多すぎ(特にIH)て、ガス欠を早めに起こしてるような感じも受けるので、夏場に向けてセットディフェンスもできるようにならないと、前半0-0で折り返した試合は大体後半押し込まれて負けなんてことも起こりうるんじゃないかと筆者は考えている。

まとめ

今回は3場面に分けて振り返り、今後への懸念に関しても言及してみた。長崎に勝った喜びと同時に、これから暑くなる時期に向けて大きな不安要素も出てきてしまい、筆者としては何とも言えぬ試合になった。(もちろん勝ったのは嬉しいですが)
このゲームクローズの部分に関してはこれからも注目してみていきたいと思う。
また追加点という課題を超えたのは素晴らしかった。まだ試合のクローズが上手くない分のリスク管理として複数得点は重要なファクトなのである。これからも得点をどんどん重ねてほしい。
今回のレビューは約3500文字となかなかのボリュームでしたがいかがでしたでしょうか。楽しく読んでいただけていれば幸いです。もし何かわからない表現、単語等ありましたらTwitterで気軽に聞いてください。お答えします。

最後までお読みいただきありがとうございました!
また次のレビューでお会いしましょう。

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