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隣人を愛することを期待すること

映画感想文 『ローマ法王の休日』 監督: ナンニ・モレッティ
映画感想文 『2人のローマ教皇』 監督:フェルナンド・メイレレス

幼い頃をキリスト教盛んな国ですごしたからか。それとも、もっとも幼い頃の記憶がローマでの砂利拾いとサン・ピエトロ大聖堂の天井画だからか。キリスト教ではないのに、とても身近に感じる宗教で、宗教画や教会のビジュアルには惹かれるものがある。

一方で『スポットライト 世紀のスクープ』に描かれたように、カトリック教会で起きた聖職者による性的犯罪の問題が積算していることもあり、カトリック教会の組織に対するイメージはすこぶる良くないのが、正直なところ。

聖職者、という言葉が表すように、聖職者は聖人であることが求められるし、彼らもそこを目指しているのであろう。結局は人間なので、どの組織でも当然のように玉石混交なのだけれど、どうしたって聖職者には聖人を求めてしまう。では、そのトップである教皇は?というところに、一つ窓を開けてくれたのが『ローマ法王の休日』と『2人のローマ教皇』だ。

『ローマ法王の休日』はフランス・イタリア合作の映画で、コンクラーベによって選出され新教皇となったメルヴィルが、あまりのプレッシャーに耐えきれずローマの街に逃げ出してしまう、というストーリー。描かれる人物たちがチャーミングで、枢機卿たちがうつ病と診断されたり、セラピーを受けたりしてみる。一見、からかいに見えて、彼らを聖職者として見るのではなく、1人の人間として捉える姿勢に何とも言えない優しい雰囲気に眼差された映画だ。

『2人のローマ教皇』はNetflixで公開された、アンソニー・ホプキンスとジョナサン・プライスが主演の映画。実際に起きたベネディクト16世の引退にまつわる、ベネディクト16世と後の教皇フランシスコとなるホルヘ枢機卿の友情の物語だ。映画は完全な史実ではないにしろ、どことなくドキュメンタリー的なスタイルで描かれており、二人の名優が説得力を増させている。この映画からも、聖職者としての教皇ではなく、人間として惑う姿が丁寧に追おうとする姿勢を感じる。

どちらも、人間の責任と重圧、そして自分自身との向き合い方の物語だけれども、『ローマ法王の休日』にはそこに「許し」を加えている。「許し」こそがキリスト教では重要な要素で、他者はもちろん己を許すことを描いたのは、流石カトリックが強いフランス・イタリアで作っただけある。

聖職者に限らずだけれども、所属や立場を超えて、結局のところ人間なのだ、というのは当たり前だけれど、大きな発見でもあった。昨今は芸能人でも政治家でも、その能力ではなく人柄を重要視し、聖人であることを要求する機運がある。でも、彼らも人間で、重要なのは値する能力があるかではないか。そして、人間の側面でいえば、最終的には「許し」が大切ではないか、と思うのだ。

見やすくわかりやすく、そして安心感があるのは『2人のローマ教皇』なのだけれど、アマゾンプライムで観れるオススメの映画を職場の人に聞かれて、答えたのは『ローマ法王の休日』だった。

正直、『ローマ法王の休日』は人にすすめる映画ではないようにも思う。非常に淡々としているし、大盛りあがりするシーンもない。メルヴィルが選択もした最後にも賛否両論あって、好き嫌いが分かれる映画だ。ただ、私はこの映画から、侘び寂びを感じた。『プライドと偏見』の最後にキスシーンを無理やり入れてしまうようなハリウッドであれば、この終わりにはなるまい。

人間の弱さと愚かさを「許し」、その国の空気で包んでまるごと飲み込む、そんな素敵な映画だから、職場の人の感想が待ち遠しい。

旅かじりさんによる写真ACからの写真

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