詩のホテルと京都旅の話。
2019年年末、友人のTwitterで”勢い余ってホテルを予約した”というツイートを見た。相方を探す、という文言にちょっと行きたいなぁと思いながらいいね!をしたら、その数分後にLINEが飛んで来た。そんなわけで年が明けた1月の半ば、数年ぶりに京都旅に行くことになった。
旅行に誘われた日、実のところ別の友人Aと銀座シックスのアフタヌーンティーの予約を入れたばかりだった。予約したよ!というLINEを友人Aに飛ばしたばかりで、しかもこの子は返信が来るのが遅いときは本当に遅くて、数分iPhoneの画面を見つめたままどうしたものか悩んだ。今までのわたしだったら旅行の方を断っていたと思う。けれど休みだったし(誘ってくれた友人はわたしの休みが平日だと失念していたらしく、そう言えばそうだね!と言われた)、とりあえずアフタヌーンティーの予約をキャンセルして予定をずらしてくれるようにAにLINEを飛ばした。ここでわたしは初めて、予定を調整する、という技を習得した。打ち合わせ業務という仕事柄、最初に入っていた予定が絶対で、調整しようとすると営業に嫌な顔をされることが多かったので、断ってしまう方が楽だ、という考えが刷り込まれていた。
それで、京都に行くことになった。2泊3日。友人の都合でまさかの現地集合現地解散。相談しなきゃねぇと言いながらどんどん当日が近付いてきて、まぁでもなんとかなるかと思っていたら偶然ショッピングモールの無印良品でばったり鉢合わせた。それでまぁ、現地集合現地解散でいっか!となった。旅をしながら行く場所を決める行き当たりばったり旅。控え目に言ってとても楽しかった。今まではがちがちに予定を決めて、ホテルと新幹線を取って、という旅のスタイルだったが、フリースタイルとてもよかった。予定に追われないって素晴らしい。
詩のホテルの予約は1泊しか取れていなかったので、1日目は駅前のシティホテルに宿を取り、荷物を預けるためにそのホテルで待ち合わせた。友人は前日から京都入りしており、更に1泊別のホテルに宿泊している。個人的に気になっていたカプセルホテルを勧めたら泊ってくれて、とてもよかったよとの感想をくれた。
合流してとりあえず駅ナカにある甘味処で玉手箱スイーツを食べた。Twitterでバズっていたので気になっていた。今回の旅は行きたいところにとりあえず行こう!というざっくりとしたコンセプトがあったので、行きたいところを挙げて当日予定を組んだ。初日は伏見稲荷大社と恵文社さんにお邪魔した。事故物件住みます芸人の松原タニシさんが配信などで伏見稲荷大社の成功の鍵を振りかざしていて、とても欲しいと思っていた(結局ネックレスタイプの小さなものを購入した。とてもかわいい)。伏見稲荷大社は前回同行した友人Aの意向により夜に行ったため御朱印を頂けなかったので、今回は絶対に頂こうと!と心に決めていた。混んでいたので後に回し、とりあえず登れるところまで上ろうと階段を上る。鳥居が所狭しと上へ続いているところをどんどんと上りながら、どこまで行こうかという話になった。途中の案内板で絶景ポイントと書かれていたので、とりあえずそこまで上って戻って来ようと決めて、ひたすらに上る。運動不足だったわたしは友人の体力について行けず、真冬なのに汗だくで熱中症一歩手前、ガチで肺が痛かった。とにかく体力のないわたしは前回の京都旅で初日から両脚が筋肉痛になり、結果足裏の筋膜炎を発症したのだが、なんとか今回は大丈夫そうだった。自動販売機でポカリを法外な値段で買ったが、これは山の上であるほどに高かった。実際下がって行くほどに価格は安くなっていったが、背に腹は代えられない。大量のドリンクを背負って自販機に補充してくださる方々へのお布施である。いつもご苦労様です!という気持ちである。
わりと時間を要したあとで恵文社一乗寺店へと向かい、その後地元で人気の洋食レストランで夕飯を食べた。恵文社はなんとも堪らない品揃えの「本にまつわるあれこれのお店」だ。本屋がとにかくだいすきなわたしにはたまらない。正直住みたい。こんなお店で働きたい。とずっと思っている。そして京都まで来て本を買った。わたしは外国の本がすきだ。特にその国で人気の童話作家が書いたファンタジー小説がすきで、外国作家の翻訳本のコーナーが充実しているととてもうれしい。恵文社さんは流石といった品揃えで、本当にわくわくする。本を買う基準は1ページ目を開いて、書き出しの文章がすきかどうか。これは日本文学でも変わらない。
美味しい夕食を食べたあとでホテルに戻って1日目が終了した。夕食を食べた洋食レストランの名前をわたしは3日目にたまたま昼食で利用した喫茶店でも耳にしていて、本当に美味しかったし、土壇場で調べて入ったお店としては最高だった。あまり関東では見ない店の作りで、厨房の周りにカウンター席があった。そこがお客さんでいっぱいで、メニューはどれも美味しそうだったし、古き良き洋食屋さんという温かな雰囲気だった。駅からはちょっと歩いたし、住宅街の一角だったので知る人ぞ知る名店だったのかもしれない。
2日目は駅ナカにあるおばんざいバイキングの朝ご飯からスタートした。1日フルで使えるので、バスの1日乗車券をゲットして色々な寺院を回った。お礼参りをするというのが前提だったので、八坂神社からスタート。初めてぜんざいを食べた。わたしにとってぜんざいと言うのは、おばあちゃんが作ったお汁粉に餅が入っているもので、正直うちのお汁粉は美味しくない。そのイメージがあるのでお店で食べたこともない。けれど初めてのぜんざいはびっくりするくらい美味しかった。おまけにご利益ありそうである。数年使った財布を買い替えたかったので、近くにあるお店で財布とカードケースを買った。長らく手帳型のケースを使っていたiPhoneを買い替えた関係で、Suicaを入れておく場所に苦戦していたのだ。このカードケース滅茶苦茶便利である。そして手帳型ケースを卒業したiPhone11は、画面シールが数日でバキバキになった。
そのあと向かった下賀茂神社で、入り口が見つからずにぐるぐると回った。グーグルマップが示していた場所が明らかに入り口ではなかったためだ。どうにかこうにか辿りついて参拝したあと、今年のお守りを買おう!と見ていたら、Twitterで見た総レースのお守りを見つけてテンションが上がり即座にそれに決定した。そのあと蛸薬師堂へ向かい、アーケード内に突如現れる如来堂にびっくり。お守りと御朱印を頂く。そうして2日目が終了した。遂にこの旅最大の目的地、詩のホテルへと向かう。
こういうホテルなんだけど、というのは事前に教えてもらってwebサイトを見てはいたけれど、なんかすごいお洒落なホテル・・・!と思っていただけで、最果タヒ(敬称略)とコラボした詩のホテルと言うものを申し訳ないけれど存じ上げなかった。ホテルは京都駅から歩いて15分くらいの場所にあって、地下鉄の駅からは徒歩5分くらい。ちょっと裏路地にあるところもなんだかよかった。旅行で泊るホテル、というとザ・シティホテルか旅館のどちらかで、よい意味でカジュアルなホテルに泊まったのは初めてだった。近年若者向けというか女性向けというか、カジュアルな内装の素朴でお洒落なホテルが増えていて、そのホテルに泊まることを目的に旅に出る、というのもいいものだと思う。ホテルでゆっくりするよりはたくさん観光したい、と言う友人もいたが、個人的にはホテルをゆっくり楽しみたかった。だからホテル選びは重要だ。泊れればいい、と言うものでもない。個人的には。
外観はホテルと言うよりはお洒落なカフェといった印象だった。フロントの奥には共有スペースが広がっていて、そこで朝食を取ったり、併設されているジェラートスタンドのジェラートを食べたり、仕事をしたり本を読んだりできる。照明はいい感じの照度で、暗すぎず明るすぎず、お洒落な雰囲気を醸し出せる絶妙なバランスだった。幾らお洒落な内装であっても、照明の明るさですべてが台無しになる。その向こうにある扉から各部屋へと繋がる廊下へと出ると、真正面にネオンの看板があった。部屋のドアを開けると青い壁で統一された室内のそこここに、タヒさんの言葉が刻まれている。すべてのお部屋にレコードプレーヤーが設置されているところも素敵だった。友人は恵文社さんでタヒさんのレコードを買っていたが、コラボルームにはしっかりそのレコードが置かれていた。普段レコードは従業員の方がおススメを置いてくれているそうだが、フロント横のボックスから自由に選んで部屋で聴きこともできる。友人は翌朝、2枚レコードを購入していた。
折角なので近くにある銭湯にお邪魔した。生まれて初めての銭湯。ホテルに併設されている温泉や大浴場に慣れていたわたしは、正直シャンプーくらいはあるだろうと高を括っていた。けれどよくよく考えてみれば、銭湯と言うのは洗面器にせっけんやタオルを入れて持って行くイメージがある。洗面器はあったけれど、それ以外は本当になにもなかった。へぇ!と思った。タイル張りで、テレビでよく見る古き良き銭湯だった。電気風呂に触ったらピリピリした。サウナも併設されていた。レトロな雰囲気がこれまた最高にお洒落だった。
HOTEL SHE,KYOTOさんにはジェラートスタンドが併設されているので、風呂上がりにジェラートを頂いた。これがまたとても美味しい。夜のアイスは背徳の味がしたが、これぞ旅行の醍醐味だった。生まれて初めてチョコミントを食べたが、衝撃的な美味さだった(後日コンビニでチョコミント的なアイスを食べたらそうでもなかったので、おそらくそのジェラートが滅茶苦茶美味しかったのだ)。アイスを食べてカフェスペースでまったりしながら、来る東京事変再生ライブのファンクラブ先行に申し込んだ(わたしはどんだけ足掻いても全く当たらなかった)。部屋に戻ると、タヒさんのレコードで詩を聴きながらまったりした。旅行先なのになにもしない、とても贅沢な時間だ。部屋には詩集も置かれていたのでじっくり読ませていただいた。あ、この人の文章知ってる!と思った。Twitterで流れてきた詩の文言をわたしはかつて読んでいて、とてもすきだなと思っていたのだった。
最終日の朝、カフェスペースでワッフルの朝食を頂いた。とても美味しかったし、明るい中で見るカフェスペースもとんでもなくお洒落だった。美味しい朝食を堪能したあと、ホテルで販売されていたタヒさんの詩集を2冊購入した。とんでもなくお洒落なルームキーは残念ながら売り切れていて(その後の再販ネット販売にも敗れた)、いつかまたどこかで手に入れられたらいいなと思っている。元来のホテルのルームキーも滅茶苦茶にかわいくて、販売されているらしいという情報だけ手に入れているので、またお世話になる際には訊いてみようと思っている。
研修があって帰らなければならない友人を京都駅で見送り、一人旅がスタートした。前日に下賀茂神社に行っていたので、これは上賀茂神社に行かなくては、と上賀茂神社からスタート。今年のお守りは下賀茂神社で頂いたので、厄除けは上賀茂神社の御札にした。そのあとは行き当たりばったり、行きたい場所を回った感じだ。今宮神社に行ったあと、バスがとんでもなく混んでいたので途中の駅で降りた。それからストレスにご利益があるという御霊神社に向かい、そのあと祇園を散策した。どうしてもマリベルの秘密のカフェを利用したくて、フォンダンショコラを頂いた。マリベルのショコラは世界でいちばんおいしいと称されているだけあって、これまた衝撃的に美味しい。ただチョコレートを買っても食べないので、今回はカフェ利用だけで満足した。今度は本店のカフェスペースも利用してみたい。
そんなわけで、わたしの京都旅は終わった。とても充実していたので、帰ってきた瞬間から再び京都へ行きたい欲がふつふつとしていた。ひとり旅ができると知ってしまったわたしは、色々なところへ行く計画を立てては、まだ実行に移せていない。今回お世話になったHOTEL SHE,KYOTOさん系列の旅館が湯河原にあって、原稿執筆パックというとても魅力的なものをやっている。京都へ行ってしまったがために春コミの原稿が詰んでいたわたしは籠りに行くしかねぇ!と毎日のようにプランを検索していた。結果として、まだ行けていない。いつか必ず、近いうちに利用させていただきたいと思っている。