出版業界激震!出版流通の闇に光明が!
出版流通の新会社設立
先月5月に、出版業界に激震が走るほどの大きなニュースが飛び込んできた!と言っても、出版に関わらない大多数の人にとっては良くわからないどうでもいいニュースだったと思うが、「講談社、集英社、小学館がAI活用した出版流通の新会社設立へ 丸紅と協議開始」というニュース。このニュースの何がすごいのか??
今までの出版流通の構造=最悪の構造
これまでの出版業界の流通システムを簡単に説明すると、出版社が作った本や雑誌が本屋に納品される為には、日販とトーハンという2大大手取次会社を経由して本屋に納品される。この日販とトーハンというのは要するに卸問屋。しかし、この2社が作り上げてきた流通構造というのが出版業界の闇とも悪しき風習ともいわれる構造。出版社が作った雑誌が本屋さんに何冊納品されるかは、この取次会社が決めている。本来であれば、もしAという本屋でBという雑誌が毎月平均5冊売れているなら、5冊もしくは6冊納品すればちょうどいいはず。しかし、今の流通システムだとなぜか10冊納品されてしまう。取次ぎ会社は多く納品すればその分売り上げが立つ。しかしその本が売れずに返ってきてしまっても、返本分のリスクを負うのは出版社。つまり取次会社は売り上げを立てるために多くの本を納品し、その納品した雑誌を特に売る努力をすることもなく、返ってきたら「出版社さん、あとよろしく」という感じ。つまり出版社は売れないとわかっていながら、本来売れる部数の約2倍の数の雑誌を印刷させられているのが実情。しかも、取次会社というのが出版社に対してかなり強気。自分たちを経由しないと本屋に本は納品されないので。出版社の取次ぎ営業さんは、かなりヘコヘコしている。それも相まってどんどん強気になっていく取次会社。これぞ本当に悪しき風習。最近よく耳にする出版社倒産のニュース。正直、この悪しき風習がなければ過去に倒産した出版社の半数ぐらいは救われたのではないだろうか。実はこの辺の闇の部分に、最近公開された大泉洋主演の映画「騙し絵の牙」でも少し触れられていたのだが、出版業界の人以外にはスルーされてしまっていたと思われる。そこに今回のこのニュースが飛び込んできたのだ。
新会社が提案する新システム
今回の出版大手3社と丸紅が組んで立ち上げようとしている新会社のシステムというのが、AIを活用してどこの本屋で何の雑誌が何冊売れたかをすべてデータ管理し、全国の本屋に対して必要最適な部数の本や雑誌を納品し、出版社に対しても返本を最大限まで減らし、出版社の過剰印刷コストや返本のリスクを最大限まで減らそうという取り組み。正直、雑誌を作るうえで一番といっていいほどコストがかかるのが印刷代。近年、紙代もインク代も値上がり傾向にあるため印刷コストも上昇傾向。その印刷コストが少なくとも40%カットできて返本もかなり減ると考えると、出版社の経営状況はドラスティックに改善されていくはずである。そもそも出版社がつぶれてしまっては取次会社の利益も減っていってしまうはずなのに、その仕組みにテコ入れをしてこなかったと言う事実に疑問を感じざるを得ない。それだけ胡坐をかいていたというか殿様商売をしていたということなのだろう。
出版不況からの脱出のカギ
活字離れなどと言われ、出版不況が多分に叫ばれている昨今。筆者が勤めている出版社も例にもれず5年前・10年前と比べ、さらにこのコロナ禍での広告の減少なども相まって厳しい実情が続いている。しかし、今回のこのニュースは大げさではなく出版社の経営を大きく助けるシステムであることは間違いない。むしろ必要な人にだけでもちゃんと本が届き、出版社はその必要な分だけ本や雑誌を作る仕組みができるのであれば、そもそも何の問題もなかったのだ。いつの時代も、何かを腐らせるのは内側から。取次ぎありきの出版業界を腐らせていたのは出版業界の中心にいた取次ぎ会社自身だったということを是非みんなに知っていただきたい。
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