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人間味ってなんだろね~文系のためのAIコミュニティ②

先月からスタートした「文系のためのAIコミュニティ」、第2回目のミーティングを6月21日にFukuoka Growth Next内で開催しました。
(小学校の旧校舎を使っているコワーキングスペースです)

初回はAIについて概略や様々な分野における応用を知ったうえで、参加メンバーがそれぞれ興味・関心のある分野でどうAIが使われているか、テーマ決めを行いました。

1ヵ月後の今回は、メンバーがテーマに沿ってリサーチした内容を発表しました。ひとことでいうと「めちゃくちゃおもしろくて、やってよかったな」と思いました。メンバーは僕以外みんな大学生で、AIについてどう感じているかを通じて、意外な発見や考えさせられる問いに行きついたことで、非常に有意義な時間になったと思います。

では、発表してくれた内容を一部抜粋しつつ、簡単に中身に触れます。

人が創造する新しい価値とは?

2年生のFさんは堀江貴文さんと落合陽一さんの本『10年後の仕事図鑑』を読んで、まとめてくれました。

ということだったのですが、僕が思ったのは
「じゃあ人が生むべき価値ってなに?」
ということでした。

みんなの話を聴くと
メンバー)「生産性の向上」はひとつの価値かもしれない

僕)経営者の観点からするとそうだよね。人件費を減らして利益が増えるのは会社にとっていいことなんだろうか。働く側の人からすると、早く帰れると自分の好きなことできていいのかも。でも仕事量とか、残業代も減るかもね。

メ)対面サービスにおけるホスピタリティの質も上がるのでは?

僕)え、あの買い物中に「何かお探しですか?」って聞いてくるのって、正直、どう?

メ)要らないっていう人多いですね・・・

僕)集中できる時間が増える代わりに、サービスのプロセスで価値が上がる所とそうでない所があるってことかもね。業種にもよるか。でも、なんで機械ができることを人間がやってたら、それは価値として認められないんだろうね?

など、ひとえに価値と言っても色々な感じ方があるなと。

また、発表したFさんは「AI導入ってそう簡単に利用できなさそうだし、思いつくこととか、不安とかで難しいんじゃないか」と言ってました。

実際はすでに様々な所で導入は進んでいるわけですが、大学生がそう感じているのも面白いなと思います。ちなみに、Fさんは「保守派」で、他の人の発表でも色々と「そんな未来は有り得ない」的な感じの、保守派を代表した(笑)主張をしてくれたのですが、話していると僕よりだいぶ若いのに、オジサン世代にいそうなカタブツと話している不思議な気分になってきました。でも、そういう立場も踏まえないといけないですよね。

人が描いた絵と、AIが描いた絵に、価値の相違はあるのか?

続いて、Hさんは「アート」「育児」「宗教」それぞれについてリサーチ内容を発表してくれました。

まずアート。
これはご存知オランダの巨匠・光と影の魔術師といわれる「レンブラント」の作品・・・を学習してAIがそれっぽく再現したものだそうです。

ふーんと聞きつつ、内心「これはやべぇ」と思っていました。自分には絶対に描けない(笑)

こちらは、最初見た時「プレステ1のバイオハザード1ぽいな(つまり、ポリゴンが粗い)」と思いましたが、こちらはGAN(敵対的生成ネットワーク)と呼ばれる技術を応用して描かれた「立派な抽象画」だそうです。つまり、ガチ。
こうなると、人間の創造性はどこで発揮されるようになるんでしょうか?

さて、このテーマで投げかけられた重要な問いは
「AIが描いた絵画にどのような価値があるのか?」ということでした。
どちらの絵だったか忘れてしまいましたが、実際に43万㌦で売れたそうです。

保守派のFさんは「ちょっと違うかもしれないけど、芸能人が描いた絵が売れるのってよくわかんない」という発言をしていて、なぜかというと、「プロ性」「職人性」がないから、という考えに行きついていました。

芸能人の方にアートのプロ性・職人性が本当にないかは置いといて、「プロの人間の手が介在しない、AIが描いた絵画に価値はないんじゃないか」と感じることは、ほかのメンバーも反対していない様子でした。

これは「作品や行為に人間味が感じられるかどうかが、人間の感じ方に大きな影響を与える可能性が高い」という非常に面白い事実に目を向けさせられます。AIが描いた絵は、普通の人よりもはるかにプロ的であり、職人的でありさえするのですが、「これはAIが描きました」と言われた瞬間に価値を下げてしまうわけですね(いわゆる「AI効果」に近い)。そうなると、人間が描いたかAIが描いたかの差でしかなく、多くの人が共通に感じる「人間味」とは何だろうか、とつくづく考えさせられました。

Hさんは「元々、絵画は宗教性と関係していて、作品を通じて心の中や精神性を見ることに意義がある」と言っていました。何を作品に見出すか、それを通じて人の価値観や感情が理解できそうな気がしました。

Hさんは宗教をテーマに調べてくれましたが、元Google社員で、元Uber社員の人が作った”Way Of The Future”という宗教団体について教えてくれました。2017年に記事になっていたので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

「AIは神になれるのか?」は、つまり、「AIの作った教義や価値観は、人間の信仰対象となるのか?」でしょうか。もちろん、まだまだそのレベル(=AIがマジな宗教をつくる)ではないのですが、おもしろいテーマだと思います。

ちなみに、様々な宗教の経典や教義、宗教学の論文を学習したAIを、人間が使って、新しい宗教を作る未来は有り得るかもしれないと話をしました。既存の宗教が心の拠り所となりえないとするならば、そういう人が雨後のタケノコのように出て来る可能性はありますし、「メール登録と質問に答えるだけで自分の宗教が作れちゃう!」みたいな「個人宗教」の勃興みたいなのも想像できます。

いずれにしても、引き続き深めて行くと面白いテーマだと感じました。

スポーツとAI~AI監督はイヤ?

Wさんの発表。スポーツ分野でAIがどのように使われているかを調べてくれました。

ダイナミックプライシングや、AI野球解説者「頭野(ZUNO)さん」の話は特に面白いと感じました。頭野さんの、次にピッチャーが投げる球の球種予測、コース予測はそれぞれ視聴者予測を上回っていたそうです。

Wさんによると、スポーツでのAIの応用はまだ限定的で、チーム戦略やトレーニング、エンターテインメント性といった部分で発展しているとのことでした。

メンバーの一人が、将来的に「AI監督(采配をふるう)はイヤな気がするけど、スタメン配置は効率的にできそう」と言っていました。

今回、色々な話を通じて「イヤ」とか「微妙」とか「認めたくない」といった感情の動き(情動)が僕は気になって、質問していました。

AI監督は果たして微妙なのか、AIが決めたスタメンに外れた人はどう思うのか。スカウトや採用なんかも「AIが決めたから」という理由は受け入れられるのか? それとも、ダメだと言われた人は一念発起して努力するかもしれない。

馬に詳しいHさんによると、「騎手になりたい人は中学生くらいの骨密度で将来の身長がわかるから、〇×が早く、しかも受け入れざるを得ない」と教えてくれました。

競技の特殊性はあるので、スポーツの分野でどこまでAIが介在することが、一般的な感じ方として許されるのか、とても興味のあるところです。

これってAIなの?

最後に、Yさんの発表。Yさんは「ゲームとAI」について調べてくれました。僕は前の記事に書いたとおり、AIに興味をもったきっかけがゲームでしたので、とても楽しく聴けました。

Yさんはyoutube動画を使ってゲームAIと考えられるものを紹介してくれました。Yさんが言っていた「これってAIなのか? でも、ゲームAIについて語ってる人もよくわかってないし、だったら私もよくわかんない」という言葉が印象的でした。この観点、とても大事だなと。Yさんは引き続き歴史なども調べてみられるそうです。個人的には要チェック!

ちなみにYさんは就職活動を通じて知ったAIも紹介してくれました。
ここでは、イチローさんの引退記者会見の字幕問題について「説明を受けた別の会社のAIではちゃんと字幕を生成できていて、同じようにAIって言っても技術の差があるんだな」というコメントがとても印象的でした。

Yさんは「AIがもう日常に溶け込んでるのだ」とも言っていて、保守派のFさんに聞かせたかったのですが用事があって先に帰ってしまっていました(笑)

AIを通じて人間を知る

様々な発表を聞き、何気なく使っている言葉や、感情の動きについて対話することで、AIについて理解するというよりも、「人間」や「価値」ついて哲学的に問い、考える機会になったと思います。

日本人は昔からアニミズム信仰があったし、八百万の神々も信じられる。でも、機械やAIには神が宿らないのでしょうか。自然ではないからか、何か違和感があるからなのか、人の感性はどこに敏感なのか。

人類の歴史における最後の砦は「人間性への信仰」かもしれません。そこを超える価値観を持った世代がやがて生まれて来るとしたら、どんな世界なんでしょうか?

引き続き、コミュニティの活動を続けたいと思います。
お読みいただきありがとうございました。

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